カール・リヒター

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テンプレート:Portal クラシック音楽 カール・リヒターKarl Richter, 1926年10月15日 - 1981年2月15日)は、ドイツ指揮者オルガンチェンバロ奏者。

略歴

音楽之友社が数年置きに評論家アンケートを実施して発行している「名曲名盤300」2011年版では「マタイ受難曲」「ヨハネ受難曲」をはじめ、単独楽器の協奏曲と独奏曲を除く全バッハ作品でリヒターの盤が1位を占め、多くの曲では他を圧した得票を得ている。

代表的な録音

同曲異演も含めるとリヒターは生涯にCDにして100枚以上になる音源を残した。</br>

レパートリーの大半を占めたバッハやヘンデル以外にも、モーツァルトハイドンベートーヴェングルックブルックナーブラームスヴェルディなどの録音が、それぞれわずかであるが残されている。</br>

レーベルとしてはアルヒーフドイツ・グラモフォンの古楽専門レーベル)が中心で、他にもテレフンケン(現テルデック)や英デッカ=ロンドンなどにもある程度の録音を残しており、特に活動の最初期はテレフンケンでの録音が多い。テレフンケンにしか残されていないレパートリーの中には、バッハの「パルティータ(BWV825~830)」、モーツァルトの「レクイエム」などがある。</br>

以下に、彼の残した録音から代表的なものを記す(カッコ内は録音年)。

アルヒーフ

英デッカ=ロンドン

  • オルガン曲集(J.S.バッハ作品8曲、リスト作品1曲)(1954年10月、彼初のステレオ録音)

テレフンケン(現テルデック)

など

リヒターへの言及

「(79年の来日時の)取材で彼に会った。厳粛な学究的雰囲気を感じさせる生真面目な人物で、寡黙だった。思索的な性格なのだろうか、ゆっくり言葉を選んで静かに話す。『バッハの魅力はカンタータに尽きる。言葉によって精神を表しているカンタータの世界は比類ない。私の考える本当のバッハはカンタータだ』と繰り返し語っていた」。
「バッハを本当に歌いたいと思うのはリヒターだけです」。(LP「ミサ曲 ロ短調」(MAF 8077/9)解説書)
オーレル・ニコレによる追悼スピーチの抜粋(1981年2月20日・ミュンヘン、聖マルコ教会)
「生前のカール・リヒターは絶えず働き通しでした。かのマルティン・ルターは、1546年2月16日にアイスレーベンで最後の文章を書き上げましたが、それが発見されたのは、彼の死[同年2月18日]の2日後のことでした。10日ほど前、リヒターは彼がいつも持ち歩いている紙片を私に見せてくれました。それは、ルターが書いた(前述の)ラテン語の文章で、ドイツ語に訳すとこんな具合になります。『ヴェルギリウスの牧歌を理解しようと思うなら、5年間は羊飼いをしなくてはならない。農作をうたったヴェルギリウスの詩を理解しようと思うなら、やはり5年間は農夫を体験しなくてはならない。キケロの書簡を完全に理解しようとするなら、20年間は国の政治に携わらなくてはならない。聖書を十分に理解しようとするなら、100年間は、預言者、バプテスマのヨハネキリスト、そして使徒たちとともに、教会を指導していかなくてはならない。それでもあなたは、自分を神の代理だなどと思ってはならない。そうではなく、額(ぬか)づいて祈るべきだ。私たちは、言ってみれば物乞いなのだから。』カール・リヒターは、このルターの文章についてこう言いました。『生きている限り、私は音楽を学び、音楽を自分に叩き込まなくてはならない。ただ単に暗譜するとか、芸術的に演奏できるようになればいいというのではなく、文字通り完全に。』カール・リヒターは、そんな生き方をした人でした。これほどの精神をもった人がかつて存在し、これからも良き模範であり続けるのは、私たちにとってこの上ない励みになります」。(CD「モーツァルト:フルート協奏曲第1番、第2番 他(WPCS-22034/5)」ブックレット)

関連人物

書籍

  • 『Karl Richter-Musik mit dem Herzen : 1926 - 1981 ; eine Dokumentation aus Anlass seines 75. Geburtstages 』zusammengestelt und eingeleitet von Roland Wörner.Panisken Verlag. 2001. (sold out)
  • 『Karl Richter in München : 1951 - 1981 ; Zeitzeugen erinnern sich ; eine Dokumentation 』 Johannes Martin, Conventus Musicus Dettelbach. 2005.
  • 『Karl Richter Trilogy on DVD I. Soloists - Concerts - Tours, II. Bach-Choir und Bach-Orchestra, III. Fascination and Interpretation http://karlrichtermunich.blogspot.com/2008/10/karl-richter-in-munich-1951-1981-book.html』 (English/German) Johannes Martin, Conventus Musicus Dettelbach. 2007/2008.
  • 野中裕『カール・リヒター論』(2010年、春秋社 ISBN:978-4-393-93786-0

外部リンク