カロテン

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β-カロテンの3次元モデル
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カロテンはニンジンを始めとした野菜・果物の橙色成分である。

カロテンカロチンテンプレート:Lang-en-shortテンプレート:Lang-de-short)は、カロテノイドのうち炭素水素とから成る化合物の総称である。植物によって生合成されるが、動物は生合成することができない。カロテンは光合成において重要な橙色光合成色素の一つである。ニンジン(carrot)の橙色の元であり、このことがカロテンの語源となっているが、ニンジンだけでなく多くの果物野菜(例えばサツマイモマスクメロン)に含まれている。また、枯れ葉の橙色や乳脂肪、バター、卵黄の黄色もカロテンによる着色である。ヒトやニワトリの典型的な黄色脂肪はそれら食物由来のカロテンの脂肪貯蔵の結果である。

カロテンは自ら吸収した光エネルギークロロフィルへ伝送することで光合成に寄与している。また、カロテンは光合成中に形成する酸素分子の活性型である一重項酸素のエネルギーを吸収するため、植物組織の保護に役立っている。

化学的にはカロテンはテルペンの一つであり、8個のイソプレン単位から生合成される。カロテンは主にα-カロテンとβ-カロテンの2種からなるが、これらの他にγ-, δ-, ε-およびζ-カロテンも存在する。酸素原子を含まない炭化水素分子であるためカロテンは脂溶性であり水には溶けない。

β-カロテンは2つのレチニル基から構成され、小腸の粘膜中でβ-カロテン-15,15'-モノオキシゲナーゼ(EC 1.14.99.36)によってレチナールに分解された後、ビタミンA(レチノール)となる。 カロテンは体内では肝臓体脂肪に蓄えられ必要に応じてレチナールに変換され、ヒトや数種の哺乳類ではビタミンAの形にする。

動物の種類によってカロテンをレチナールにする能力には差があり、肉食動物では一般に摂取したカロテノイドを変換する能力は低く、特にネコフェレットなど純粋な肉食動物ではβ-カロテン-15,15'-モノオキシゲナーゼを欠いているためレチナールへは全く変換されない。結果的にそれらの動物ではカロテンからはビタミンAは形成されない。

異性体

主なカロテンであるα-カロテンとβ-カロテンでは、その末端の環の二重結合の位置が異なる。

β-カロテンの方がより一般的であり、黄色、橙色および緑葉の果物と野菜で見られる。経験的に橙色がより鮮やかな果物および野菜ほど、より多くのβ-カロテンが含まれている傾向にある。

命名法

カロテンは炭素と水素のみで構成されたカロテノイドであり、それ以外の元素を含むものはキサントフィルと呼ぶ。

β-カロテンの両末端は同一の環構造であり、これをβ環(β-rings)と呼んでいる。一方、α-カロテンは片末端にβ環を持ち、もう片末端にはε環(ε-ring)と呼ばれる構造を持つ(α環というものは存在しない)。これらとカロテノイド分子の末端の構造によって基準となる組織名をつける。

尚、『五訂日本食品標準成分表』(2000年11月改訂)より、「カロチン」 ではなく 「カロテン」 と表記が統一された。

関連項目

外部リンク

テンプレート:カロテノイド