エネルギー等配分の法則

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テンプレート:出典の明記 エネルギー等配分の法則テンプレート:Lang-en、エネルギー等配分則、エネルギー等分配則などとも言う)は、系の持つ自由度ごとに一定量のエネルギーが配分されるという統計力学の法則。

古典力学、古典統計が成り立つ理想的な系を考える。この系全体のエネルギーの式(ハミルトニアン)を H とする。相空間の座標のある1つの成分(一般化座標または一般化運動量) ξj について、H の項のうち ξj が関係する部分 εj が次のように表せるとする。

<math> \epsilon_j = \alpha_j \xi_j^2 </math>

ここで、αj は適当な正の定数である。熱平衡状態において、このエネルギー εj の統計的平均は、

<math> \left\langle \epsilon_j \right\rangle = \frac{1}{2} k_B T </math>

となる。kBボルツマン定数T絶対温度である。

つまり、理想的な系の熱平衡状態において、 1自由度あたりに平均で kBT /2 の運動エネルギーが割り振られ、 さらに調和振動子と見なせる自由度については 1自由度あたり平均 kBT /2 のポテンシャルエネルギーが割り振られる。 これをエネルギー等配分の法則と言う。

エネルギー等配分の法則は、エネルギーが上の式で示されるように二次形式で表現できる時に成り立つ(調和近似が成り立つ場合も含まれる)。系において、量子力学的な効果が顕著となる場合や、非調和項が無視できない場合は、この法則は成立しなくなる。

なお、自由度の数え方には、一般化座標と一般化運動量の対を1と数える流儀と、kBT /2 のエネルギーが分配されるものを1と数える流儀がある。

単原子分子理想気体

単原子分子理想気体の個々の分子のエネルギーは、m を当該分子の質量として、

<math> \epsilon = \frac{1}{2m} (p_x^2 + p_y^2 + p_z^2) </math>

であり、これより、

<math> \langle \epsilon \rangle = \frac{3}{2} k_B T </math>

となる。x , y , z 各座標(=自由度)の運動量であるpx , py , pz に対応する自由度にエネルギーkBT /2 が配分されるため。

二原子分子理想気体

この場合、二原子分子の持つエネルギーは、

<math> \epsilon = {1 \over {2m}} (p_x^2 + p_y^2 + p_z^2) + \frac{1}{2I} \left(p_{\theta}^2 + \frac{1}{\sin^2 \theta } p_{\phi}^2 \right) </math>

となる。上式の最初の括弧部分は、単原子分子の場合と同じ自由度によるエネルギーで、二番目の括弧が、二原子分子の回転に関しての自由度(θとφの2つ存在)からのエネルギーである。θとφは、二原子分子を一つの軸(剛体の棒)とみなした時の回転に関しての角度成分(自由度)である。m は二原子分子の質量、I は二原子分子の重心を通り、二原子分子の軸に対して垂直な軸の周りの回転に関しての慣性モーメントである。

この場合、自由度は合計五つとなるので、

<math> \langle \epsilon \rangle = \frac{5}{2} k_B T </math>

となる。

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