アナンタサマーコム宮殿
アナンタサマーコム宮殿(พระที่นั่งอนันตสมาคม、アーナンダ・サマコム宮殿とも)はタイにある宮殿。
大理石を用いた作りが特徴的であり、一時国会議事堂として利用されていた他、映画『グッド・モーニング・ベトナム』のエンディング・シーンなど映画のロケで採用されたり、迎賓館として利用されたりしている。
歴史
1907年にラーマ5世(チュラーロンコーン)によって迎賓館として、宮殿建設の勅令が出された事に歴史が始まる。建築家としてイタリア人のM. Tamangoと助手のA. Rigotti、技術者としてC. Allegriと助手のE.G. Gallo、現場監督としてはチャオプラヤー・ヨマラート(パン・スクム)と助手のプラヤー・プラチャーコーン(オー・アマタヤクン)が入り建設が行われた。王宮の完成はラーマ5世の存命中に完成せず、ラーマ6世(ワチラーウット)の時代、総計約1500万バーツ(2005年現在のレートで約4500万円)が費やされ1915年に完成した。
ラーマ5世が当時としては国力を無視した1500万バーツもの資金をつぎ込んでこの宮殿を建設しようとした理由として、西洋にタイを国力のある国家であることを見せつけようとした、壮大な宮殿を造り国王の権限を高めようとしたなどの意図があると言われる。このため、アナンタサマーコム宮殿はラーマ5世に代表されるような絶対王政のシンボルとして見られていた。実際はこの建設費が政府財政を悪化させ、世界大恐慌と重なって、結果的にラーマ7世時代の官僚の大幅リストラを招いた。
この時に現れた官僚らの不信感は1932年6月24日の立憲革命官僚らによる立憲革命を導き、最終的にアナンタサマーコム宮殿は、国会議事堂として利用されることになった。絶対王政のシンボルと見られていたアナンタサマーコム宮殿は、民主主義のシンボルへとその地位を大きく変えた。後に憲法改正によって国会議員の定員が多くなったため、隣りに近代的な国会議事堂を新たに建設し、アナンタサマーコム宮殿は再び接客用に利用される事となる。2003年にはAPECバンコク首脳会議で利用されている。
建築
設計はサン・ピエトロ大聖堂(ローマ)、セント・ポール大聖堂(ロンドン)などを元に行われたと言われる。建築様式はおおむねルネサンス様式を採用しているが、非常に後期のものであるがために、外部の彫刻にはバロック様式の影響、内部の一部にはロココ様式なども見て取ることが出来る。
バンコクが地盤の悪い湿地帯であったために、大理石で出来た巨大で重量のあるこの宮殿の建設のためには地盤固めが不可欠であった。まず、鉄の棒を高いところから垂直に落下させ10m程度の穴を開けそこへコンクリートを流し込み地中にコンクリート柱を形成せる、という当時最新の技術の技術が導入されている。さらに、コンクリート柱および建設予定地の地面にコンクリートが水平に広げられた。この上には鉄筋でまず骨組みづくりが行われ、イタリアのカッラーラから運んできた大理石が使われて外部が整えられた。こうして完成したものは2階建てで、ドームは7つ、大きさは奥行き49.5m、幅112.5m、高さ49.50m、のものになった。
内部の壁面にはバロック様式、ロココ様式が採用されている。天井部の壁面にはラーマ1世から、5世に関連する出来事が描かれている。これらはイタリア人画家のRiguliによって、当時の文化人ナリッサラーヌワッティウォン王子がタイに関するタイ文化に関するコンセプトの提供を行い、スケッチ画を作成、その後描かれたものである。
関連項目