アフリカツメガエル

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アフリカツメガエルは、ピパ科クセノプス属のカエルの一種 Xenopus laevis の和名であり、また、クセノプス属Xenopusカエルの総称として用いられることもある。近年は実験動物としてよく使われるようになり、分類学者以外でも学名で呼ぶ機会が増えたため、本来のラテン語化したギリシア語発音のクセノプスではなく、英語式のゼノパスの発音で呼ばれる機会が多くなっている。

特徴

南アフリカ原産で、頭が小さく、やや扁平な体格で、四肢は体の側面から真横に出る。これは遊泳に向いた位置で、特に後肢の水かきが大きく発達しており、遊泳は得意。5本ある後肢の指のうち内側の3本(人間なら親指〜中指)に爪が生えている。これが爪蛙の名の由来である。ほぼ完全な水中生活で、息継ぎに水面に出る以外には水中から出ない。餌は他のカエルのように舌を伸ばすのではなく、口を開けて吸い込み、両手で押し込むように食べる。

幼生は植物質のものを食べるが、多くのカエルの幼生のように水底に生えた藻類などをキチン質の歯で削り取って食べるのではなく、水中に漂う植物プランクトンを吸い込み、ろ過して食べる。そのため水底ではなく水の中層に頭を少し斜め下にして定位し、透明の魚のような姿をしている。また、口元に一対の長い髭を持ち、ややナマズに似る。また、鰓穴が両側に一対あるのも他のオタマジャクシと異なる。

Xenopus は「風変わりな足」を意味 X. borealis, X. muelleri, X. tropicalis(正式の分類名は Silurana tropicalis)などの近縁種が用いられる場合もある。

モデル生物としての利用

カエルのは他の脊椎動物卵と比べてサイズが大きく顕微操作等が容易であることや、発生の進行が早く同調性が良いことなど、実験発生学や変態動物の材料として優れており、よく用いられてきた。しかし、産卵時期が年1回に決まっていたり、成体の飼育が難しいという難点もあった。その点、アフリカツメガエルはホルモン注射によって、真夏を除いて年中採卵することができる。

また、成体も水中で生活し、何より他の多くのカエルと異なり生き餌を必要としないため、飼育が大変容易である。一般のカエルは半陸生であるため、飼育装置内に環境の多様性を設ける必要があり、環境の維持管理が難しい。また、生きた餌を視覚によって捕食するため、動く生き餌を用意する必要がある。その点、アフリカツメガエルは水質さえ維持できれば高密度で飼育できる。餌も嗅覚で様々な動物質の飼料を生死に拘らず摂食するため、人工飼料などが利用出来る。

卵の直径は1-2mm。初期胚発生、体軸形成、四肢形成、変態などの発生研究の他、未受精卵を用いた細胞周期(減数分裂周期)研究、薬理学的研究も行われる。染色体は36本。Xenopus laevis は、疑似4倍体と言われている。このため、遺伝学的研究には向かないと考える研究者も多く、近年では2倍体の Xenopus tropicalis がよく用いられるようになった。

Xenopus laevis は、国内の飼育・販売業者から、成体1匹1,000円-2,000円程度の価格で、注文から数日で年中入手できるようになり、一層利用しやすくなっている。

飼育

飼育には23℃程度の淡水を用いる。

受精卵は4日程度で孵化し幼生になる。幼生は飼育下ではグリーンピースやほうれん草を裏ごしした人間用離乳食や金魚の餌などを水で薄めて与える。他のピパ科のカエル同様、成体はをもたず、食物は口腔内に陰圧を生じて水とともに吸い込みつつ、前足で口の中へ掻き込む。自然界では小魚や水生昆虫エビなどを捕食するが、飼育下ではレバーイトミミズ・固形人工飼料を与えるとよく食べる。

研究用として流通している個体から高確率(約98%)でカエルツボカビが検出されているため、飼育水は消毒処理を経た上で排水する必要がある。アフリカツメガエル自体はカエルツボカビに感染しても発症はしない(→カエルツボカビ症)。

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関連項目

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外部リンク