アイアイ

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アイアイDaubentonia madagascariensis)は、哺乳綱サル目(霊長目)アイアイ科アイアイ属に分類される霊長類。現生種では本種のみでアイアイ科アイアイ属を構成する。

分布

マダガスカル北部および北西部、東部[1][2][3][4]固有種

種小名madagascariensisは「マダガスカル産の」の意。

形態

体長36-44センチメートル[3]。尾長44-53センチメートル[3]体重2-3キログラム[3][4]。全身は粗く長い体毛で被われる[2][4]。全身の毛衣は黒い[3]

耳介は大型で三角形[4]。歯列は門歯が上下2本、犬歯がなく、小臼歯が上顎のみ2本、大臼歯が上下6本の計18本[1][2]。門歯は伸び続ける[1][3]。指は細長く、特に第3指(中指)で顕著[2][4]。第3指が長いことが独名Fingertierや中国語名の指猴、旧和名ユビザルの由来になっている[2]。第1指(親指)は平爪だが、第2-5指は鉤爪[1][2]

出産直後の幼獣は体重0.1キログラム[3]

分類

属名DaubentoniaLouis-Jean-Marie Daubentonへの献名[2]

元々リス属として記載されたり[2]、19世紀には形態や門歯が伸び続けることからネズミ目の構成種と考えられていた[3][4]

アイアイ科の現生種は本種のみだが、絶滅種として2,000年前にマダガスカル南部に分布していたジャイアントアイアイがいる[2][3]

テンプレート:出典の明記 アイアイは18世紀末、フランスのピエール・ソヌラらによるマダガスカル島探検行にて発見された。発見後、アイアイの分類上の位置づけについて論争が引き起こされた。発見者のピエール・ソヌラや博物学者ジョルジュ・キュビエらは門歯の特徴からげっ歯類であるとしたが、樹上生の有袋類や独立したアイアイ目などに分類する説などが現れた。19世紀の半ばになって、生け捕りになったアイアイがロンドン動物園に着いたほか、多数の標本がヨーロッパに届けられた。イギリスの古生物学者リチャード・オーウェンは、アイアイの乳歯の特徴がキツネザルのものと類似していることを指摘し、ようやくアイアイが霊長類に属していることが明らかになった。その後、アイアイは発見されることが無かったため一時は絶滅したと考えられていたが、1957年に再発見された。

生態

湿潤林竹林マングローブ林などに生息する[4]夜行性[1][2][3]。オスは他の個体と重複する広い行動圏内で生活するが、メスは他の個体と重複しない35ヘクタールの行動圏内で生活する[3]。オスは同性間で優劣の関係があると考えられ、オスがある別のオスを避ける行動が観察された例がある[3]。メス同士では激しく争う[3]

食性は雑食で、昆虫果実カンラン科)の胚乳、花の蜜(タビビトノキ)、樹皮キノコなどを食べる[3][4]。木の中にいる昆虫や果肉は歯で木の幹や果実の殻に穴をあけて、細長い中指でほじくりだして食べる[1][3]

繁殖形態は胎生。妊娠期間は158日もしくは170-172日という説がある[3]。10-11月に1回に1頭の幼獣を2-3年に1回だけ産む[4]。授乳期間は7か月[3]。オスは生後1年、メスは生後2年で性成熟する[4]。最高寿命は23年[4]

人間との関係

名前は現地での呼称hay-hay、ahay、aiayに由来する[2]

多くの生息地では死や不幸の前兆や悪魔の使いと信じられ、畏怖や恐怖の対象とされている[3][4]

ココヤシ、サトウキビ、マンゴー、ライチなどを食害する害獣とみなされることもある[3][4]

開発による生息地の破壊、不吉の象徴や害獣としての駆除などにより生息数は減少している[3][4]1967年にノシ・マンガベ島に9頭が人為的に移入され、保護区に指定されている[2][4]

テンプレート:出典の明記 アイアイの生態は長らくほとんど明らかにされていなかったが、TBS系列で放送された「わくわく動物ランド」の取材班が世界で初めて野生下の(人為移入された)個体の撮影に成功したことにより、解明が進められた。日本では相田裕美作詞・宇野誠一郎作曲の童謡アイアイ』で親しまれている。

画像

参考文献

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

  • 親指はなぜ太いのか―直立二足歩行の起原に迫る, 島 泰三, 2003
  • どくとるアイアイと謎の島マダガスカル, 島 泰三, 1997

関連項目

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外部リンク

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  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 伊谷純一郎監修 D.W.マクドナルド編 『動物大百科3 霊長類』、平凡社1986年、27、31頁。
  2. 2.00 2.01 2.02 2.03 2.04 2.05 2.06 2.07 2.08 2.09 2.10 2.11 岩本光雄 「サルの分類名 (その8:原猿)」『霊長類研究』Vol.5、日本霊長類学会、1989年、136-137頁。
  3. 3.00 3.01 3.02 3.03 3.04 3.05 3.06 3.07 3.08 3.09 3.10 3.11 3.12 3.13 3.14 3.15 3.16 3.17 3.18 3.19 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ8 太平洋、インド洋』、講談社2001年、45、159頁。
  4. 4.00 4.01 4.02 4.03 4.04 4.05 4.06 4.07 4.08 4.09 4.10 4.11 4.12 4.13 4.14 『絶滅危惧動物百科2 アイアイ―ウサギ(アラゲウサギ)』 財団法人自然環境研究センター監訳、朝倉書店2008年、6-7頁。