ふたり

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テンプレート:Portalふたり』は、赤川次郎の小説。1989年1月新潮社刊。事故死してしまったしっかり者の姉と、姉に頼ってばかりいた妹との、奇妙な共同生活を温かくつづる。大島弓子がカバーイラストを手がけた。

現在までの発行部数は、240万部を越えている。

あらすじ

北尾実加が中学2年の時、高校2年の姉・千津子は、成績優秀でピアノが上手くスポーツも得意で、高校の演劇でヒロインを務め、教師や同級生からも慕われていて、実加も憧れていた。しかし、ある日の登校中に交通事故に巻き込まれ、突然この世を去ってしまう。ところがその後、死んだはずの姉の声が実加の頭の中に聞こえてくるようになった。姉の声は自分にしか聞こえないけれど、自分を確実に見守ってくれていた。

千津子の死で精神的に不安定になった母、突然単身赴任する父、親友の父の死や心中騒動など、実加の周りでは様々な事件が起こる。姉が得意だったピアノやマラソン、演劇での活躍、そして、恋と友情。姉のアドバイスもあり実加はそれらの困難を乗り越えて次第に精神的にも成長していく。様々な経験を通じていつしか実加が姉の年齢に近づいたとき、父の浮気が発覚。激高した母、家庭崩壊の時、実加が感情的に発してしまった一言で姉の声が聞こえなくなってしまう。

映画

テンプレート:Infobox Film 1991年に映画化された。「新・尾道三部作」の第1作。NHKのテレビドラマとして製作され、テレビ放映後再編集して劇場公開された[1]。当初から劇場公開を想定しており、外部演出家である大林の起用や35ミリフィルムでの撮影などNHK作品としては異例の要素が多い[1]

原作者の赤川次郎は本作を映画化して欲しくない作品としていたが、大林がそれを承知で交渉に来たと知るとこれを承諾した[1]。映画は原作にほぼ忠実で、赤川自身でさえ限りなく近いので驚いたという。原作では千津子は声のみの出演で姿は現さない設定であるが、それでは映画にならないために、千津子が幽霊として姿を現すという設定(ただし実加にしか見えない)になっている。

ハイビジョンの合成による映像も用いて撮影された。駅伝のシーンではフィルムとビデオでの1秒間のコマ数の差を利用した実験的な映像が使われている[1]

撮影の逸話

  • 福本渡船浄土寺千光寺尾道駅など、尾道の印象的な風景が映画の随所に使用されている。北尾家は実在する家が撮影に使用されたが、屋内の撮影についてはロケセットが使用された。
  • 北尾千津子が事故にあうシーンは尾道市の海徳寺下の小さな路地で撮影された。事故を起こすトラックは、あまりに狭い路地のために、トラックの右側半分だけを切断して用いた。落下する木材は発泡スチロールで、千津子はスタントの女性が演じた。本撮影場所は映画公開後も長年花束を備えるファンが絶えなかった。
  • 駅伝マラソンの撮影場所としては、岩子島のトンネルや橋、向島の海岸路などが使用された。当時は『しまなみ』という概念は無かったが、これらの風景も好んで使用された。
  • 北尾千津子の死を神永智也に伝えるシーンでは、マリンパーク境ガ浜の海上水族館が選ばれ、生演奏のベートーヴェン交響曲9番のコンサートが開催され、その風景と花火大会の映像がデジタル合成された。
  • 主題歌を歌うのは「大林宣彦&FRIENDS」となっているが、これは大林と音楽の久石譲とのデュエット。作詞は大林が、作曲・編曲は久石が担当している。元々は主演の石田ひかりに歌わせる予定であったが、石田の演技を見た大林が石田を女優として最後まで通させようと考え、自身がピンチヒッターとなった[1]。この曲は劇中でも北尾姉妹たちも歌われており、編曲は異なるが中嶋朋子によるシングルカット版もパイオニアLDCから発売された。
  • 廉価版VHSのイラストは野口久光。DVDには公開時にはカットされた未公開シーンが9分ほど収録されている(ただしこの未公開シーンには音声はない)。

スタッフ

キャスト

メイキングDVD

  • 題名『千津子とその妹の物語-《ふたり》メイキング-』
  • 2001大林宣彦監督作品
  • 発売元 パイオニアLDC株式会社
スタッフ
プロデューサー: 大林恭子、小穴勝幸
監督・脚本: 大林宣彦
編集: 大林宣彦、内田純子
音楽: 久石譲(オリジナルサウンドトラックより)
ビデオ取材: 原田宗一郎
ビデオ編集: 金沢直樹
提供: ピーエスシー、NHKエンタープライズ21

テレビドラマ

NHK総合版

  • 1990年11月9日と16日の2回、NHK総合でNHK子どもパビリオンとして放送。
  • 映画と同時撮影のためキャストは同じだが、実加が千津子を回想する場面から始まるなど、オンエア時間にあわせるためのカット・編集が大林監督自身により行なわれている。竹中直人演じる医師も、NHK版ではまったく登場しない。

テレビ朝日版

1997年4月14日 - 6月23日まで全11回でテレビ朝日系列月曜ドラマ・インとして製作、放送された。キャストなどは全く異なる。

スタッフ

  • 脚本:吉田紀子
  • 音楽:REMEDIOS
  • 主題歌:「夢じゃない」 歌/演奏:スピッツ
  • 挿入歌:「君だけを」(夢じゃないc/w)歌/演奏:スピッツ
  • プロデューサー:佐藤凉一(テレビ朝日)、志村彰(MMJ)
  • 監督:新城毅彦、五木田亮一(5年D組)、志村彰(MMJ)
  • 製作:テレビ朝日・MMJ

キャスト

サブタイトル

各話 放送日 サブタイトル 演出 視聴率
第1話 1997/4/14 お姉ちゃんの死 新城毅彦 14.0%
第2話 1997/4/21 私が死ねばよかった 9.4%
第3話 1997/4/28 ひどい仕打ち 五木田亮一 9.5%
第4話 1997/5/5 突然のさよなら… 10.3%
第5話 1997/5/12 切り裂かれた思い出 新城毅彦 9.3%
第6話 1997/5/19 バラバラになった家族‼ 9.2%
第7話 1997/5/26 もう誰も信じない‼ 五木田亮一 8.5%
第8話 1997/6/2 ずっとお前が好きだった 10.2%
第9話 1997/6/9 あばかれた嘘と秘密‼ 志村彰 10.8%
第10話 1997/6/16 サヨナラ実加もう会えない‼ 新城毅彦 10.4%
最終話 1997/6/23 運命の事故と永遠の別れ 9.9%
平均視聴率10.1%(視聴率は関東地区ビデオリサーチ社調べ)

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

外部リンク

テンプレート:月曜ドラマ・イン

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 テンプレート:Cite book