お天気カメラ

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ファイル:東京駅(東京国際フォーラム).JPG
東京国際フォーラムの屋上に設置されているテレビ各局のお天気カメラ

お天気カメラ(おてんきカメラ)とは、テレビ放送局や、最近はインターネットの(主としてマスコミ系)サイトでも公開されている定点観測用のカメラ装置の総称である。放送業界では、「天カメ」と省略して言うことがある。また、NHKではロボットカメラ。民放では「情報カメラ」や「パノラマカメラ」など、独自の名称を付ける放送局もある。

お天気カメラの発祥

TBSの朝の帯番組『モーニングジャンボ』(1971年4月スタート)の天気コーナーの中で、生の朝の風景をリレー中継で結んだのが始まり。最初は札幌(HBC 北海道放送)、東京(TBS 東京放送)、名古屋(CBC 中部日本放送)、大阪(ABC 朝日放送)、福岡(RKB毎日放送)、後に広島(RCC 中国放送)、仙台(TBC 東北放送)など基幹局を中心として順次拡大(リレー中継用の番組オリジナル曲も制作されていた)。後に『モーニングジャンボおはよう地球さん』『おはよう720』『おはよう700』『8時の空』といった早朝の情報番組内で積極的に活用されたことから、JNN系列局にお天気カメラが順次拡大されていった。また時期を同じくして、屋外に遠隔操作で動く現在に近い無人のカメラの開発が始まった。この後、TBSは独自の早朝お天気番組をスタートさせ『ウェザーショー・空飛ぶお天気スタジオ』で宇江佐りえをキャスターにクロマキー合成で各地と中継でお天気カメラと結び、JNN系列においてはこの番組の開始を契機として、ほぼ全局で最低1か所以上にお天気カメラの設置が完了した。

TBSは『モーニングジャンボ』スタートと同時に、全天候型屋外用電動旋回台(所謂「リモコン雲台」)を使用し遠隔操作が可能となったことから「お天気カメラ」と命名。以後、他社・他局の同様のカメラも同じ名前で呼ばれるようになる。ちなみに、初期のお天気カメラはスタジオで使用されている大型カメラを一部改造して使用しており、カメラハウジングも当然大型な物であったため、設置には大変な苦労が伴っただけではなく、現在のような所謂「リモコン雲台」が開発されていなかったことから、カメラ映像は上下左右の移動もできず、ズームも出来なかった。ただそれでも、当時としては「屋外の現在の様子を知る」ためのものとして画期的なものであった。

お天気カメラの使用・運用形態

テレビ番組では主として報道・情報番組のタイトルコールや提供クレジットCM前のキューカット映像などに使用されているが、主としてその地域の主要交通ターミナル所在地や放送局舎の屋上から撮影した映像が中心とされている。また昭和天皇の病状報道(1988年9月)を境として、テレビ局が災害や重大事件が発生した場合に備えてテストパターン映像代わりのフィラーとして放送している局も多い。さらにカメラで撮影できる範囲内で火災が発生すると、発生現場方向を撮影し、ニュース映像として使う場合もある。

また、リポーターやディレクターだけを中継先に派遣し、中継車を使わずにお天気カメラの映像を通して中継を行う番組もある(日本テレビの「ラジかる!!」→「ラジかるッ」→「おもいッきりDON!」→「PON!」が有名)。この場合は、音声を取るために携帯電話を主に使用している[1]

屋外運用なので、カメラにワイパーが取り付けられるものが多い。レンズに雨粒や異物が付着した時は運用時間外に操作するが、極稀に本番中に操作を行うことがある。

設置場所

ファイル:Okayama-airport weather camera.JPG
岡山空港旅客ターミナルビルに設置されているテレビ各局のお天気カメラ

お天気カメラは周辺の様子が捉えやすい場所、目的を持って、その目的被写体に近い場所などを選ぶケースが多いが、一般的には各社の社屋屋上や隣接地のビル屋上などに設置するケースが多い。

さらには公共機関が建設した公共施設に取り付けられるケースも最近は少なくない。この場合のメリットとしては場所使用料が無料もしくは格段に安く配慮されているという点があげられる。

主に、こういった場所に設置されることが多いようである。

  • 各放送局の屋上[2]・鉄塔(風景撮影、NTTの鉄塔に設置する放送局もある)
  • 東京スカイツリー(地上375mの位置にNHKキー局が2012年3月8日から運用開始[3]
  • 鉄道ターミナル駅至近(交通情報向け)
  • 高速道路の本線料金所もしくは主要インターチェンジ至近(交通情報向け)
  • 繁華街の大通りやスクランブル交差点など人通りが多い場所(風景撮影)
  • 旅客空港のターミナルビル屋上など(交通情報や万一の航空機事故への初動対応)
  • 港や川の河口など(風景撮影、台風接近時の高潮・高波関連、地震時の津波関連)[4]

変わった場所としてはこういった場所への設置例も存在する。

  • 高層ビルの屋上に設置され、広大な視界を有する(日本テレビTBSフジテレビテレビ東京)
  • ホテル屋上に寒暖・風速計と共に設置される(TBS)
  • 公共水道の貯水タンクの上に設置される(静岡第一テレビ
  • 地下鉄の出入り口の屋根部分の低い視点への設置(渋谷スクランブル交差点)(NHK、日本テレビ、テレビ朝日
  • 低い視点という意味では最近増加傾向にあり、例えば新宿駅南口周辺に設置している局(NHK、TBS)は、いずれも建物の3〜4階レベル[5]の位置に設置されている。

さらに、期間限定で特定の場所に設置されるケースもある(この項の内容は一部後述されているものもある)。

日本放送協会(NHK)でのお天気カメラ対応

景観地などに期間限定で仮設されるカメラは、特にNHKが大きな足場を組んで占拠するケースも少なくなく、観光客から顰蹙を買う例も見受けられる。

NHKでは、大規模災害が発生された場合、深夜の時間帯の番組を特別編成にする関係から、フィラーとしてお天気カメラを放送する場合がある。

日本放送協会の定点カメラネットワークシステム[8]

NHKは、富士通製のリアルタイム伝送装置と、NTTコミュニケーションズの常時接続IP網フレッツ(ADSL/光)を利用してロボットカメラの集中管理システムを構築し、347台(2013年4月現在)[9]を設置・運用している。

各情報カメラからの映像はHD/SD両対応のリアルタイム伝送装置により、H.264形式でMPEGデータに圧縮され、IP網を利用し、NHK放送センターと大阪放送局へ伝送される。通常は光回線を利用して伝送するが、ISDN・ADSL回線を使用している場所もある。また、リアルタイム伝送装置には定点カメラ制御用のRS-232C端子が付いているため、各放送局の制御端末では担当区域内のカメラの制御が可能であるほか、NHK放送センターと大阪放送局の制御端末からは全国全てのカメラの制御が可能となっている。さらに、伝送装置には音声入力部(ステレオ対応)も付いているため、同システムで利用する定点カメラにはマイクが付加されているものが多い。

主な設置場所(関東地方)

この他に、戸越谷中亀有新橋多摩川豊海NHK放送技術研究所渋谷駅西口・浦安千住北新宿銀座六本木ヒルズ川崎マリエン(川崎市川崎区)・山手(横浜市中区)・桜木町等にも設置されている[11]

主な設置場所(東海地方)

民間放送での新しいお天気カメラ

カメラの維持には場所代が必要なケースもあり、それとは別に回線の敷設やカメラ自体の維持管理などにコストがかかる。このため可搬型の「臨時お天気カメラ」などは設置しづらい状況にあったが、最近の通信環境の劇的な変化に伴い、インターネット通信網や光ファイバー通信網などを利用した新しい形のシステムが登場している。例として、TBS八丈島に初めて設置した「IPお天気カメラ」が挙げられる。TBSではその後、八丈島を常設とする一方、別の新たなIP伝送式可搬型お天気カメラを導入しており、2008年末までに上野・不忍池や神奈川・松田町、神奈川・箱根町などで期間限定の運用実績を持つ。

お天気カメラにまつわるエピソード

  • 1994年4月26日名古屋空港にて中華航空140便墜落事故(中華航空140便が着陸に失敗、墜落)が発生したが、この際名古屋空港にお天気カメラを常設していた数局のうち、稼動させていたのが東海テレビ(THK・FNN)のみであったため[12]炎上する飛行機の様子をほぼ独占的に撮影し、放送に乗せたことから、他局も「空港にお天気カメラを設置する必要性」を認識、以後各局が各地域の拠点空港内にお天気カメラを常設するケースが増えたと言われている。
  • 2002年和泉節子・和泉元彌母子による“Wブッキング騒動”(岐阜岡山)があった際、中部日本放送(CBC・JNN)が名古屋空港のお天気カメラを通じて和泉母子のヘリコプターからチャーター機への乗り換えの瞬間を同局の生番組『晴れ・どきドキ晴れ』(中京ローカル)の枠内で生中継することに成功した(一方、当時同番組の前枠で放送されていた、同日の全国ネット番組リアルタイム』では、制作局の毎日放送大阪から元彌の公演先である岐阜県に中継車を出して追跡生中継を行ったものの失敗に終わった。
  • 2009年3月23日:成田空港に着陸しようとしていた中国・広州発のFEDEX80便(MD-11型機、乗員2人、貨物便のため乗客なし)が突風にあおられ、着陸に失敗して炎上した瞬間が、NHKおよび在京各局が設置していたお天気カメラにより撮影されていた。
  • 2011年3月12日:この前日発生した東日本大震災では、福島中央テレビ(FCT・NNN)が17km離れた山中に設置し、東京電力福島第一原子力発電所に向けた情報カメラによって発電所の建屋が大きく爆発する瞬間が2回とも捉えられ、大きく報道された。他局のカメラはさらに近い場所に設置されていたが使用不能となっていたため唯一の映像記録となった。福島中央テレビの所有するこの映像の使用料は1秒あたり3000円である。[13][14]

放送エリア外にあるお天気カメラ

  • TBSが、エリア外の新潟県苗場にある苗場スキー場にカメラを設置し、冬季のみ稼動している。尚、このエリアは、本来新潟放送(BSN)の放送エリアである。
  • 静岡県熱海市および伊東市にNHK及び在静民放各社[15]がそれぞれ設置しているカメラは、各系列の在京キー局でも常時モニターしており、そのまま放送に載せることが可能である。これは、静岡県伊豆地方(特に伊豆半島東側)が正式な在京局の放送エリアではないものの、電波が直接受信できていたことから在京局を直接受信する世帯が多いための配慮でもあると同時に、以前から有感地震が比較的多い場所柄を考慮して、在京局でも初動対応を鑑みての措置である。
  • エリア外で系列局の存在しない地域では、フジテレビ青森県青森市青森空港同社青森支局の運営)に、日本テレビ沖縄県那覇市那覇空港に、テレビ朝日鳥取県米子空港にカメラを設置している。

主なメーカー

脚注

  1. ただし、この場合は経費削減(1回の中継にかかる費用は規模にもよるが数十万円から100万円台となる)が第一目的であるが、演出的な目新しさ(=独自性)を狙ったものでもある。
  2. 特に地方局で、高台に本社や演奏所を構える放送局に多いパターン
  3. ただし、テレビ東京は240mの位置(2012年3月8日放送 11:00-13:50 TBS ひるおび!飛び出す新聞バン!、TVでた蔵
  4. 河川の場合、地方局やケーブルテレビ局によっては、コスト削減等から河川事務所や地方公共団体が設置しているカメラを利用して、(通常の目的とともに)放送局用として利用する場合もある。
  5. NHKはルミネ壁面、TBSは新宿サザンテラス敷地内の建物屋上にそれぞれ設置されているが、どちらも低層の建築物(人工地盤の上に建てられている)のため、必然的に低い視点にならざるを得ないとも言える。
  6. TBSが苗場プリンスホテル屋上に設置しているものや、日本テレビが草津国際スキー場に設置している無人カメラは「常設ながら冬季限定運用」に該当する。また、NHK新潟も苗場プリンスホテルの低層部に無人カメラを設置しているが、こちらは建物の2階レベルに仮設状態で設置されている。
  7. ちなみに、臨時に設営され運用するカメラの映像回線はIP伝送を用いることが多いといわれている。
  8. 平樹・田嶋亨「ロボットカメラモニタリングシステムの更新」、『放送技術』第67巻(2014年5月号)、兼六館出版、2014年5月、 ISSN 0287-8658
  9. 各放送局の屋上カメラ・ 地震報道用の居室カメラを含む
  10. R1 blog:NHKブログ | ラジオあさいちばん | 渋谷スクランブル交差点のカメラ
  11. 第2部 第3章 第1節 報道技術 I 3「設備関連」、『NHK年鑑2013』 NHK放送文化研究所、日本放送出版協会、2013年
  12. 実際には中部日本放送(CBC、JNN)も当時、名古屋空港にお天気カメラを既設していたが、事故発生前後はたまたま機材整備のため運用を停止していたという。
  13. 福島中央テレビ「原発水素爆発 私たちはどう伝えたのか」
  14. 「福島原発で何が起きたか」ISBN 978-4000246774
  15. NHK静岡放送局静岡第一テレビ(SDT、NNN)、静岡放送(SBS、JNN)、テレビ静岡(SUT、FNN)、静岡朝日テレビ(SATV、ANN)…以上、公共放送1放送局、民間放送4社。