砲丸投
砲丸投 (ほうがんなげ) は、陸上競技のうち、フィールド競技に属し、投擲競技の種目で、砲丸を遠くに投げる能力を競う競技である。
陸上競技における正しい表記は砲丸投であるが、学校教育や新聞記事など陸上競技関係者以外が多く関わる場面では砲丸投げと表記されることもある。
目次
規定
砲丸の重さは、性別(男子・女子)と年齢(一般・高校・中学)によって定められている。2.135メートル(7フィート)の円内から前方に投擲する。投擲の円内を中心とする、34.92度の扇形の内側の地面に落下したものだけが有効な試技となり、それ以外の場所に落ちた投擲は記録なし(ファウル)となる。線上はファウルである。またサークルの中心から左右に横線が引かれており、その線の後ろ以外から出るとファウルとなる。
投てき方法
規定上、砲丸が両肩を結ぶ線より後方になってはならないため、砲丸をあご若しくは首の付近で固定し、片手で押し出すように投げる。(いわゆる野球のピッチャー投げ、または投擲の手を伸ばし円盤投げの手法で投擲するのは、ファウルとなる)
グライド投法(オブライエン投法)はパリー・オブライエン(アメリカ)によって考案された投法で、投擲方向に背を向ける形で構える独創的なもので、助走と上体の捻転から生まれる力をより長い時間砲丸に加えることで、それまでの投法よりも飛距離を稼ぐことができる。現在、日本ではグライド投法(オブライエン投法)が主流であるが、海外の強豪選手は、回転投法の選手が主流になりつつある。しかし、安定しない投法であることから、敬遠する選手がいることも現実である。オリンピック陸上競技における砲丸投げの投法の主流は、この回転投法に移行しつつある。 また、滑りにくくするために炭酸マグネシウム(陸上用語では炭マグ{タンマグ})を砲丸や首につける選手もいる。(他の陸上競技{円盤投・やり投げ・ハンマー投げ・棒高跳び}でも同理由で使用されている)
日本の陸上競技の円盤投及び砲丸投は、実力が世界レベルに遠い。世界では、1980年代の時点で、男女共にジュニア記録でも20メートルを超えているのに対し、日本ではまだ20メートルの壁を破った選手が居ない。
グライド投法の記録は1988年のウルフ・ティンマーマン(旧東ドイツ)による23m06cmであり、これは1990年にランディー・バーンズ(アメリカ)が回転投法により打ち立てた23m12cmという世界記録に次いで歴代2位の記録である。
起源
砲丸投の原型は、重い物を遠くに投げる「力比べ」である。 その昔、スコットランドでは石を投げる競技が行われていた。それを参考に、1860年に鉄製の弾丸で行われたのが現在の砲丸投げの始まりである。また、当時のサークルは現在のような円形のものではなく、2メートル強の大きさの四角い囲いから投擲をしていた。 現在のようなサークルは、1867年にアメリカ合衆国で行われた大会がもとになっている。
砲丸
重さは以下のように定められている。直径は、一般男子用が11cmから13cm、一般女子用が9.5cmから11cmである。2006年より中学と高校でそれぞれ現在の規格に移行した。混成競技では高校の八種競技は6kgになったが、中学の四種競技では旧来の4kgを現在でも用いている。
- 一般男子:7.260kg(16ポンド)
- 一般女子:4kg
- 高校男子:6kg(旧12ポンド=5.443kg)
- 高校女子:4kg
- 中学男子:5kg(旧4kg)
- 中学女子:2.721kg(6ポンド)
- 世界ジュニア規格男子:6kg
- 世界ユース規格男子:5kg
世界歴代10傑
記録 | 名前 | 所属 | 場所 | 日付 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 23m12 | ランディー・バーンズ | テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国 | ロサンゼルス | 1990年5月20日 |
2 | 23m06 | ウルフ・ティンマーマン | テンプレート:GDR | ハニア | 1988年5月22日 |
3 | 22m91 | アレッサンドロ・アンドレイ | テンプレート:Flagicon イタリア | ヴィアレッジョ | 1987年8月12日 |
4 | 22m86 | ブライアン・オールドフィールド | テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国 | エルパソ | 1975年5月10日 |
5 | 22m75 | ウェルナー・ギュンター | テンプレート:SUI | ケルン | 1988年8月23日 |
6 | 22m67 | ケビン・トス | テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国 | ローレンス | 2003年4月19日 |
7 | 22m64 | ウド・バイヤー | テンプレート:GDR | ベルリン | 1986年8月20日 |
8 | 22m54 | クリスチャン・キャントウェル | テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国 | グレシャム | 2004年6月5日 |
9 | 22m52 | ジョン・ブレンナー | テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国 | ウォルナット | 1987年4月26日 |
10 | 22m51 | アダム・ネルソン | テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国 | ポートランド | 2002年5月18日 |
記録 | 名前 | 所属 | 場所 | 日付 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 22m63 | ナタリア・リソフスカヤ | テンプレート:Flagicon ソビエト連邦 | モスクワ | 1987年6月7日 |
2 | 22m45 | イローナ・スルピアネク | テンプレート:GDR | ポツダム | 1980年5月11日 |
3 | 22m32 | ヘレナ・フィビンゲロバ | テンプレート:TCH | ニトラ | 1977年8月20日 |
4 | 22m19 | クラウディア・ロッシュ | テンプレート:FRG | ハインフェルト | 1987年8月23日 |
5 | 21m89 | イワンカ・フリストワ | テンプレート:BUL | ベルメケン | 1976年7月4日 |
6 | 21m86 | マリアンヌ・アダム | テンプレート:GDR | ライプツィヒ | 1979年6月23日 |
7 | 21m76 | 李梅素 | テンプレート:PRC | 石家荘 | 1988年4月23日 |
8 | 21m73 | ナタリア・アフリメンコ | テンプレート:URS | Leselidze | 1988年5月21日 |
9 | 21m69 | ヴィタ・パブリシュ | テンプレート:Flagicon ウクライナ | ブダペスト | 1998年8月20日 |
10 | 21m66 | 隋新梅 | テンプレート:PRC | 北京 | 1990年6月9日 |
エリア記録
エリア | 記録 | 名前 | 所属 | 場所 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|
アフリカ | 21m97 | ヤヌス・ロバーツ | テンプレート:RSA | ユージーン | 2001年6月2日 |
アジア | 21m13 | スルタン・アル=ヘブシ | テンプレート:Flagicon サウジアラビア | ドーハ | 2009年5月8日 |
ヨーロッパ | 23m06 | ウルフ・ティンマーマン | テンプレート:GDR | ハニア | 1988年5月22日 |
北アメリカ | 23m12 | ランディー・バーンズ | テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国 | ロサンゼルス | 1990年5月20日 |
南アメリカ | 21m26 | テンプレート:仮リンク | テンプレート:Flagicon アルゼンチン | ドーハ | 2013年5月10日 |
オセアニア | 21m26 | スコット・マーティン | テンプレート:Flagicon オーストラリア | メルボルン | 2008年2月21日 |
エリア | 記録 | 名前 | 所属 | 場所 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|
アフリカ | 18m43 | ヴィヴィアン・チュクウエメカ | テンプレート:NGR | ウォルナット | 2003年4月19日 |
アジア | 21m76 | 李梅素 | テンプレート:PRC | 石家荘 | 1988年4月23日 |
ヨーロッパ | 22m63 | ナタリア・リソフスカヤ | テンプレート:Flagicon ソビエト連邦 | モスクワ | 1987年6月7日 |
北アメリカ | 20m96 | ベルシー・ラサ | テンプレート:Flagicon キューバ | メキシコシティ | 1992年5月2日 |
南アメリカ | 19m30 | エリザンジェラ・アドリアーノ | テンプレート:Flagicon ブラジル | トゥンハ | 2001年7月14日 |
オセアニア | 21m24 | バレリー・アダムス | テンプレート:NZ | 大邱 | 2011年8月29日 |
世界ジュニア記録
距離 | 名前 | 所属 | 場所 | 日付 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 23m00 | Jacko Gill | テンプレート:Flagicon ニュージーランド | オークランド | 2013年8月18日 |
距離 | 名前 | 所属 | 場所 | 日付 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 20m54 | アストリッド・クンバーヌス | テンプレート:Flagicon 東ドイツ | Orimattila | 1989年7月1日 |
日本歴代10傑
距離 | 名前 | 所属 | 日付 | |
---|---|---|---|---|
1 | 18m64 | 山田壮太郎 | 法政大学 | 2009年10月5日 |
2 | 18m56 | 畑瀬聡 | 綜合警備保障 | 2006年7月2日 |
3 | 18m53 | 野口安忠 | 日本大学 | 1998年5月3日 |
4 | 18m43 | 村川洋平 | スズキ | 2006年7月2日 |
5 | 18m20 | 大垣崇 | 日本大学 | 2007年7月15日 |
6 | 17m94 | 大橋忠司 | チームミズノ | 2008年11月3日 |
7 | 17m91 | 野沢具隆 | ゼンリン | 1996年10月5日 |
8 | 17m88 | 山元隼 | 中京大学 | 2013年5月19日 |
9 | 17m82 | 宮内育大 | 日本大学 | 2014年5月11日 |
10 | 17m78 | 笹川勝彦 | 茨城茗友クラブ | 1998年3月14日 |
距離 | 名前 | 所属 | 日付 | |
---|---|---|---|---|
1 | 18m22 | 森千夏 | スズキ | 2004年4月18日 |
2 | 17m57 | 豊永陽子 | 徳島陸協 | 2004年6月5日 |
3 | 16m79 | 市岡寿実 | 国士舘大学職員 | 2004年6月5日 |
4 | 16m22 | 鈴木文 | スポーツプラザ丸長 | 1993年4月29日 |
5 | 16m05 | 篠崎浩子 | 福島県体協 | 1997年5月5日 |
6 | 16m00 | 林香代子 | 熊本高教 | 1977年12月4日 |
6 | 16m00 | 白井裕紀子 | 滋賀陸協 | 2012年9月1日 |
8 | 15m59 | 竹内智子 | 四日市工高教 | 1997年5月10日 |
9 | 15m55 | 市川貴子 | 国士舘大学 | 1997年10月12日 |
10 | 15m52 | 岡明美 | 日本大学 | 1972年5月21日 |
なお、日本人で20Mを超えた人はおりません
日本人各種記録
記録 | 距離 | 名前 | 所属 | 日付 |
---|---|---|---|---|
ジュニア | 17m40 | 畑瀬聡 | 日本大学 | 2001年9月29日 |
高校 | 18m02 | 井元幸喜 | 大阪市立都島工業高等学校 | 2003年6月28日 |
中学 | 17m31 | 武田歴次 | 美馬市立美馬中学校 | 2010年10月2日 |
記録 | 距離 | 名前 | 所属 | 日付 |
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ジュニア | 15m75 | 市岡寿実 | 国士舘大学 | 1998年12月15日 |
高校 | 15m53 | 市岡寿実 | 三重県立津商業高等学校 | 1997年8月3日 |
中学 | 16m67 | 尾山和華 | 加古川市立志方中学校 | 2014年3月1日 |
出典・参考文献
- Top Lists Men All Time - IAAF
- Top Lists Women All Time - IAAF
- Area Outdoor Records - Men - IAAF
- Area Outdoor Records - Women - IAAF
- ロベルト・L・ケルチェターニ著 『近代陸上競技の歴史 1860-1991 誕生から現代まで<男女別>』 ベースボール・マガジン社 1992年 ISBN 4-583-02945-4
関連項目
- 陸上競技の世界記録一覧
- 陸上競技のオリンピック記録一覧
- 世界陸上競技選手権大会 大会記録
- IAAFダイヤモンドリーグ
- 陸上競技の日本記録一覧
- 日本陸上競技選手権大会の記録一覧 (男子)
- 日本陸上競技選手権大会の記録一覧 (女子)
- オリンピック陸上競技メダリスト一覧 (男子)
- オリンピック陸上競技メダリスト一覧 (女子)
- スポーツ器具の一覧
- 投擲
- 辻谷工業 - アトランタ・シドニー・アテネ五輪3大会連続で上位8人の入賞者全員がこの会社の砲丸を使用した。
外部リンク