大学院大学
大学院大学(だいがくいんだいがく)とは、大学院を中心とする大学のことである。
目次
概要
通例、大学院大学とは、学校教育法(昭和22年法律第26号)の第68条に規定がある学部(学部以外の教育研究上の基本となる組織を含む)をおくことなく大学院をおく大学のことを指す。独立大学院大学(どくりつだいがくいんだいがく)ということもある。なお、このような大学におかれる大学院は、独立大学院(どくりつだいがくいん)という。なお、すでに廃止された法律であるが、国立学校設置法(昭和24年法律第150号)では、国立の大学院大学のことを「国立大学院大学」と称していた[1]。また、大学院大学は、大学院重点化を行った大学のことを指すこともある。本稿においては、独立大学院大学について記載する。
沿革
戦後、新制大学化に伴い、旧制高等学校、旧制大学以上の大学院大学設置構想はあったが、予算などの関係によって、旧制高校と旧制大学の統合による新制大学として大学院大学構想は頓挫し、大学院は各大学に附属する研究機関としての役割を担ってきた。1980年代に入り、大学院における事故等の多発、また貧弱な設備による低迷していた研究状況を打開するためには、大学院重点化が必要との世論に押されて、再び大学院大学構想が現実味を帯びることになった。無論、優秀な頭脳の国外流出という問題もあり、研究予算を重点的に研究専門組織へ配分するか、新設の大学院大学を設置することが解決策として実施することになった。
1982年に財界が中心になって民間主導で私立国際大学(新潟県南魚沼市)を設立、日本初の大学院大学が誕生した。さらに、各国立研究所及び各大学附属研究所の大学研究共同利用法人化に伴い、全ての大学からの研究職員受け入れが透明化され、また、北陸先端科学技術大学院大学、奈良先端科学技術大学院大学の開学に伴い、国内において博士前期課程及び博士後期課程における技術者・研究者養成の大学院大学が開学することになった。
その後、2003年度に専門職大学院の設置が認められたことにともない、大学院は、単なる教育と研究のみを目的する組織に留まらず、高度専門職業人の養成を重視するという側面も持つようになった。専門職大学院には、法科大学院、公共政策大学院、会計大学院などの設置が進んでおり、アメリカ合衆国の制度を参考にしつつ新しい試みが行われている。
特に2003年度以降においては、学部(相当組織を含む)をおくことなく大学院をおく大学が増加しているため、近年では、大学院大学の意味は、「学部を持ちつつ大学院に重点をおく大学」のことではなく、「学部(学部以外の教育研究上の基本となる組織を含む)をおくことなく大学院をおく大学」こととされる例が増えてきている。
課題
また1990年代以降日本全国で進められている大学院重点化の結果、博士の学位を有する者の数が増加する一方で、大学の教員や公的機関の研究者などのポストは増えていない。そのため2003年には、大学院の博士課程(博士後期課程など)の修了者(課程博士)の就職率が54.4%になるなど、博士の学位を有する非就業者である「余剰博士」(オーバードクター)の増加が社会問題化した。こうした状況を受け文部科学省は、2005年から、博士課程修了者の就職問題対策をとることを決定した。
大学院大学の一覧
学部(学部以外の教育研究上の基本となる組織を含む)をおくことなく大学院をおく大学。詳細は、総合研究大学院大学の項目に記述した通り、研究科もしくは専攻科を設置。単科大学院の場合には、研究科=専攻科であり、総合大学院の場合には、研究科には複数の専攻科を設置。
国立大学
- 総合研究大学院大学 (SOKENDAI)
- 北陸先端科学技術大学院大学 (JAIST)
- 奈良先端科学技術大学院大学 (NAIST)
- 政策研究大学院大学 (GRIPS)
公立大学
- 産業技術大学院大学 (AIIT)(設置者は公立大学法人首都大学東京)
- 情報科学芸術大学院大学 (IAMAS)
私立大学
総合
- 国際大学 (IUJ)
ビジネス・会計
文化
- 国際仏教学大学院大学 (ICABS)
- 桐朋学園大学院大学
- ハリウッド大学院大学
- 文化ファッション大学院大学
科学技術
医療
教育
かつて存在した大学院大学
学生募集停止の大学を含む。
- デジタルハリウッド大学院大学 - 大学院大学として開設した後に学部を設置し、デジタルハリウッド大学に改称
- ビジネス・ブレークスルー大学院大学 - 大学院大学として開設した後に学部を設置し、ビジネス・ブレークスルー大学に改称
- LCA大学院大学 - 廃校
- 映画専門大学院大学 - 廃校
- 大宮法科大学院大学 - 学生募集停止。桐蔭横浜大学法科大学院と統合予定。
- 日本伝統医療科学大学院大学 - 学生募集停止。
大学院大学としての設置が計画されたが、実現しなかったもの
名称はいずれも仮称である。
大学院重点化による大学院大学の一覧
研究教育を行うにあたり、予算を学部から研究科に重点を移した国立大学。よって、学部も存続している。 なお、以下の大学は全学で前期・後期課程の大学院を設置。
注)上記の大学以外にも、前期・後期課程を有する大学院を設置する国立大学法人や公立大学法人、特定分野に対して大学院の拡充を行っている国立大学法人もある。
関連項目
教育機関として
制度として
新制度による大学院
背景にあるニーズ
脚注
- ↑ 法制定当時、大学院大学構想があったが、予算等の都合により設置ができず、学部に附属する研究科として各大学にて、大学院を設置していたためである。その研究科が、現在、全国大学研究共同利用研究所や全国利用研究所、大学研究利用機関法人として、研究科重点の大学院大学の主たる研究機関として研究業務を行っている。