処女膜
処女膜(しょじょまく、Hymen)とは、哺乳類の雌の膣口に見られる襞状の器官。ここでは、主に人間の女性に見られる物について解説する。
役割
生理学的な役割に関しては特にないとされる。しかし、初夜権など文化的に意味付けがなされる場合がある。 処女膜の名称自体は杉田玄白の『解体新書』で初めて記されたとされている。
形状
処女膜とは膣の入り口付近にある粘膜の"ひだ"を指し、時に膣内にある薄い膜を指す。形状は個人差があり様々であるが、普通は膣の開口部をせばめるようにしているだけであり、膜で膣を塞いでいるわけではない。なお稀に膣内に膜を張っている場合もあるが、普通は小さな穴が開いていたり、縦に長い穴が二つあるものや泡のように多数穴が空いているので、月経時の経血やおりものは問題なく排出される。
ただし、ごく稀に処女膜で膣が完全に塞がっている処女膜閉鎖症という状態がある。この場合、経血等が排出されず滞留し、体内に溜まって身体的に危険な状態となるので、早急に外科的治療を受ける事が望ましい。膣が完全には塞がれていないが、処女膜が厚く、膣口が狭く伸び難いため、性交が困難である処女膜強靭症という状態もある。手術を受けることで、普通に性交できるようになる。
処女膜の損傷
処女膜は通常のスポーツやタンポンの使用、骨盤の検査、何かにまたがったりすることによって裂けることはない。しかし、激しい動作によって裂けることがある[1]。
処女膜は思春期に達すると弾性になる傾向がある。43%の女性は初めての性交のときに出血すると報告したが、残りの57%は不明である。[1]。
処女と処女膜
処女である事と処女膜が損傷していない事は同義ではない。処女には、「未婚の女性」という意味と「性交の経験のない女性。きむすめ(生娘)」という意味があるが[2]処女である事は(主に男性との)性交経験がないことを指し、処女膜が損傷していない事は、ただ単に体の状態を指しているだけである。
処女膜はその名前から、女性の初めての性交で破れる(上述に従えば普通は「裂ける」という表現が妥当)と認識されていることが多いが、激しい動作によって損傷したり、ペニスが挿入されたとしても損傷しない場合もあることから、処女膜の状態で、その女性が処女であるかどうかの確実な判断はできない。初めての性交については処女喪失も参照のこと。
処女膜のある動物
ヒト以外にも処女膜がある動物がいる。
- アシカ
- アルパカ
- イッカク
- イヌ
- イルカ
- ウマ
- カモノハシ
- ガラガラヘビ
- ガラゴ
- キツネザル
- コウモリ
- ゾウ
- チンチラ
- チンパンジー
- テンジクネズミ
- トガリネズミ
- ネコ
- ヘラジカ
- ポニー
- マナティー
- ミーアキャット
- モグラ
- リャマ
など。 なお、『処女膜はモグラと人間にしか存在しない』とも言われるが、これは三島由紀夫が雑誌週刊明星に連載していたエッセイ「不道徳教育」に書いたことにより広まった俗説である。
存在意義
処女膜の存在意義については、ロシアのメチニコフが、「精子の逆流を防止する為のもの」という説を主張している。どんなに性交回数を重ねても完全に消滅することはなく、「精子が確実に子宮に届くように、種族維持の役割をはたしている」という。
膣縮小、小陰唇縮小等の女性器の形成と並んで、処女膜をつなぎ合わせる「処女膜再生手術」を請け負う美容整形、美容外科もある。