弾性

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弾性(だんせい、テンプレート:Lang-en-short)とは、応力を加えるとひずみが生じるが、除荷すれば元の寸法に戻る性質をいう。一般には固体について言われることが多い[1]

弾性は性質を表す語であって、それ自体は数値で表される指標ではない。弾性の程度を表す指標としては、弾性限界、弾性率等がある。弾性限界は、応力を加えることにより生じたひずみが、除荷すれば元の寸法に戻る応力の限界値である。弾性率は、応力とひずみの間の比例定数であって、ヤング率もその一種である。

一般的にはゴム等の材料に対して「高弾性」という表現が用いられる。この場合の「高弾性」とは弾性限界が大きいことを指す[2][3]。しかしながら、前述の通り、弾性に関する指標は弾性限界だけでなく弾性率等があって、例えば、ゴムの場合には弾性限界は大きいが弾性率は小さいため、「高弾性」という表現は混同を生じる恐れがある。

英語で弾性をテンプレート:Enというが、この語源はギリシャ語の「ελαστικος(elastikos:推進力のある、弾みのある)」からきている[4]。また、一般的には弾力弾力性等の語が使われるが、これらはほぼ弾性と同義である[5]

現実に存在する物質は必ず弾性の他に粘性を持ち、粘弾性体である。物質が有する粘弾性のうち弾性に特に着目した場合、弾性を有する物質を弾性体と呼ぶ。

概要

すべての固体材料は、変形が一定の範囲(弾性範囲内)では、変形しても元に戻る、つまり弾性を示す。弾性の意味するところは本来応力ひずみの関係が一意的に定まっていることであり、必ずしも二者間の比例関係を指しているわけでは無いが、単に弾性とだけ書いてあっても、応力ひずみの比例関係である線型弾性を指していることが多い。これは弾性力学やその派生である構造力学材料力学では主に線型弾性を持つ材料を研究対象にしてきたことに由来する。

材料が線型弾性を示すとき、応力 σひずみ ε に比例し、その比例定数を弾性率という。特に一方向に対する引っ張り(圧縮)変形に対する弾性率Eヤング率 という。

σ =  (フックの法則
ファイル:Stress v strain pl.png
の応力-ひずみ線図。グラフ左の直線部分が弾性範囲内で、残りが塑性領域

弾性を示す範囲の変形を弾性変形という。ここから応力がある限界を超えると、弾性の性質から元にもどらない塑性変形を起こす領域へ変わる。その際の限界点を弾性限界点または降伏という。

ゴムのように、金属などに比べて大きな変形をする材料の弾性は エントロピー弾性に分類され、金属材料等の示す弾性(エネルギー弾性)とは弾性の生じる原理が異なる。材料科学ではこのような物質をエラストマー(elastomer)と呼ぶ。

超弾性

超弾性とは、応力によって誘起されたマルテンサイト変態が、一定の温度条件下で逆変態しもとの形状に戻ることによって生じる弾性を指す。通常の弾性変形に比べて大きな変形が生じ、その変形はフックの法則には従わない。この性質を応用したのが形状記憶合金である。また特に弾性回復温度が常温以下の形状記憶合金は、超弾性合金とも呼ばれる。

参考文献

テンプレート:参照方法

  • 金属材料技術研究所『図解 金属材料技術用語辞典-第2版-』日刊工業新聞、2000年
  • 社団法人高分子学会『高分子辞典 第3版』朝倉書店、2005年
  • 東京大学物性研究所『物性科学辞典』東京書籍、1996年
  • 中島尚正 他『機械工学ハンドブック』朝倉書店、2011年
  • 日本機械工学会『機械工学便覧』日本機械工学会、1989年新版第3刷

脚注

テンプレート:Reflist

関連項目

  • ただし、液体や気体も弾性を有する。
  • 高弾性 大辞林
  • 高弾性 大辞泉
  • 『英語語義語源辞典』三省堂、2004年
  • 『広辞林 第六版』三省堂、1983年