ユグドラシル
ユグドラシル(古ノルド語: Yggdrasill, [ˈyɡːˌdrasilː][1]; ユッグドラシッル)、テンプレート:Lang-en ([ˈɪg.drə.sɪl], イグドゥラスィル) は、北欧神話に登場する1本の架空の木。
世界を体現する巨大な木であり、アースガルズ、ミズガルズ、ヨトゥンヘイム、ヘルヘイムなどの九つの世界を内包する存在とされる。そのような本質を捉えて英語では "テンプレート:Sname" 、日本語では、世界樹(せかいじゅ)[2]、宇宙樹(うちゅうじゅ)と呼ばれる。ワーグナー の楽劇「ニーベルングの指輪 」の「神々の黄昏 (楽劇) 」の冒頭「ワルキューレの岩」で第一のノルン(運命の女神)が「一人の大胆な神が水を飲みに泉にやって来て 永遠の叡智を得た代償に片方の目を差し出しました そして世界樹のトネリコの木から枝を一本折り その枝から槍の柄(つか)を作りました 長い年月とともに その枝の傷は 森のような大樹を弱らせました 葉が黄ばんで落ち 木はついに枯れてしまいました」と歌う。
呼称
原義
Yggdrasill という名前の由来には諸説あるが、最も有力な説ではその原義を "Ygg's horse" (恐るべき者の馬)とする。"Yggr" および "Ygg" は主神オーディンの数ある異名の一つで (cf. en) 、その名はオーディンの馬を意味していると解釈されている。
日本語名
日本語名は、引用先の言語の違いによって、また、仮名転写の際に生じる言語的揺らぎに原因して、"Ygg-" を「ユッグ」と読むものと「ユグ」と読むもの、「イッグ」と読むものと「イグ」と読むもの、さらに "drasill" を「ドラシル」と読むものと「ドラジル」と読むものがあり、これらの組み合わせによって多数の異形が存在する。
特徴
三つの根が幹を支えている。『グリームニルの言葉』第31節によると、それぞれの下にヘルヘイム、霜の巨人、人間が住んでいる[3]。また『ギュルヴィたぶらかし』での説明では、根はアースガルズ、霜の巨人の住む世界、ニヴルヘイムの上へと通じている[4]。 アースガルズに向かう根のすぐ下には神聖なウルズの泉があり[5]、霜の巨人の元へ向かう根のすぐ下にはミーミルの泉がある[4]。
この木に棲む栗鼠のラタトスクが各々の世界間に情報を伝えるメッセンジャーとなっている。 木の頂きには一羽の鷲(フレースヴェルグとされる)が留まっており、その眼の間にヴェズルフェルニルと呼ばれる鷹が止まっているという[6]。
ユグドラシルの根は、蛇のニーズヘッグによって齧られている。また、ダーインとドヴァリン、ドゥネイルとドゥラスロール (古ノルド語: Dáinn ok Dvalinn, Dúneyrr ok Duraþrór, en) という四頭の牡鹿がユグドラシルの樹皮を食料としている[7]。また、『グリームニルの言葉』第25節によると、山羊のヘイズルーンがレーラズという樹木の葉を食料にしているとされる[8]が、レーラズがユグドラシルと同じ樹木かははっきりしていない[9]。
類似の世界樹
イルミンスール
ザクセン人がイルミンスール (古ザクセン語: テンプレート:Sname, ザクセン人の祖神イルミンの柱の意) という同じような世界樹を崇拝していたことが、カール大帝の記録などから分かっている。大帝は、ザクセンに対する征服戦争(ザクセン戦争)の最初の年となった 772年、もしくはその翌年に、パーダーボルン近郊のエレスブルク (Eresburg [Obermarsberg]) にてキリスト教から見た邪教の拠り所であったこの神木を伐り倒したと伝えられる[10]。
脚注
関連項目
- 北欧神話 - 九つの世界
- 自然崇拝
- 世界樹 (テンプレート:Sname) - ユグドラシル / イルミンスール (en)
- トネリコ属#人間との関係 - セイヨウトネリコ (en)
- 須弥山
- 世界軸
- 生命の樹
- 天までとどく木(ハンガリー)
参考文献
テンプレート:北欧神話- ↑ 下宮・金子、p.22。
- ↑ 世界樹と呼ばれるのはユグドラシルだけではない。マヤの文化では60mにもなるセイバが世界樹と考えられている。宇宙は枝の天界、幹の地界、根の地下界に分かれていて、天界は13あり、太陽、月、金星などや神々が住む。地界は人間界。地下界は9層あり、一番下に死の神がいる。3つの界はまた東西南北の4つの方位に分けられる。その世界の中心に母なる大樹、聖なる樹、緑のセイバの世界樹が生えている。その枝は天界まで延び、その根は地下界まで延びている。その緑のセイバの木が生えているのが世界の中心であると考えられていて、ティカルのピラミッドもセイバの木をモデルにしている。
- ↑ 『エッダ 古代北欧歌謡集』55頁。
- ↑ 4.0 4.1 『エッダ 古代北欧歌謡集』236頁。
- ↑ 『エッダ 古代北欧歌謡集』237頁。
- ↑ 『エッダ 古代北欧歌謡集』238頁。
- ↑ 『エッダ 古代北欧歌謡集』55、238-239頁。
- ↑ 『エッダ 古代北欧歌謡集』54頁。
- ↑ 『エッダ 古代北欧歌謡集』59頁。
- ↑ テンプレート:Cite book