ウミサソリ
ウミサソリ(海蠍、英語名:sea scorpion)、は、鋏角亜門- カブトガニ綱(節口綱、剣尾綱)(異説あり)に分類される、絶滅した節足動物である。 実際には一群の種を含む分類群(タクソン)(ひとつの目)を指すものであり、とくにその意味ではウミサソリ目(または広翼目)、ウミサソリ類などと呼ばれる。 また、シノニム(異名)に Gigantostraca (和名:オオサソリ目)がある。
約4億6000万年前(古生代オルドビス紀後期カラドック[en])に出現し、シルル紀からデボン紀にかけて栄えた肉食性水棲動物であるが、特にシルル紀には海中における頂点捕食者であったとされる。生物群として約2億年間生き続けたが、古生代を終わらせた約2億5140万年前[1](ペルム紀末、P-T境界)の大絶滅期を乗り切ることはできず、地上から姿を消した。
大きいものは2.5m前後にも達し、これらは既知で史上最大級の節足動物である(アースロプレウラ類と双璧をなす。cf. 1 E0 m)。 ウミサソリ類として一般的周知の種はほとんどいないが、紹介例の多いユーリプテルス属は比較的よく知られている。
名称
学名 Eurypterida は、テンプレート:Lang-grc (eurys; エウリュス) 「広い」 + πτερον (pteron; プテロン) 「翼、櫂」 に、一般的に目名に使われる語尾のひとつ -ida を添えたもので、おそらくその櫂状の脚を指して名づけたもの。 音訳としては、他の慣習に準じて、「ユーリプテリダ」「エウリプテリダ」「エウリュプテリダ」などが考えられる。
英語では Eurypterid (ユーリプティーリッド)という。中国語では訳語に「鱟」(カブトガニ)の字を付け足して「廣翅鱟」(簡体字: 广翅鲎)と呼ぶ(ほかに「板足鱟」(簡体字: 板足鲎)の名もあり)。
和名「ウミサソリ」は、英語における学術的通称である sea scorpion に由来すると思われる。中国語でも同様に「海蝎」である。 標準和名である「ウミサソリ目」の名はこれに単純に「目」を添えたものだが、学名の由来(上記)の訳出にはなっておらず、このことから、20世紀末期以前には標準和名として通用していた「広翼目」という呼び名のほうがむしろ本来である、との考え方があるテンプレート:要出典(「サル目」と「霊長目」の関係などと根は同じ)。
形態
体は偏平で長く、頭胸部と腹部に分かれる。頭胸部は幅広く、背面の前方両側には一対の複眼が、中央には単眼があった。口の前には1対の鋏角がある。鋏角は3節からなり、種によっては大きく発達して鋏状になっていた。口から後ろには5対の付属肢がある。最初の1対は触肢で、形態的に特殊化していない。それ以降の4対は歩脚である。第三脚は細く簡単なものが多い。第四脚は、多くのものではよく発達し、最後の節が偏平になっており、遊泳に用いたものと考えられる。なお、歩脚の基部は咀嚼器となっていた。
腹部は長く伸び、12の節と尾節に分かれていた。その前半部の下面には平板状の付属肢があり、鰓(えら)が付属していた。腹部がやや幅広い前部とやや狭い尾部に分かれるものもあった。尾節は剣状にとがったものが多く、平らになったものもあった。幼生は胴部の体節が少なく、カブトガニ類に似ていた。成長につれて体節が増えたらしい。
生態
多くは浅海、特にサンゴ礁のラグーンに棲息していたものと思われ、淡水域にも棲息するものがあった。一部は陸に出ることができたらしく、それを示唆する足跡化石(生痕化石の一種)も発見されている。尻尾の跡が無いことから、現生のサソリのように尻尾を持ち上げていたとの推測もある。
系統の問題
系統的にはカブトガニ類が最も近いとされてきた。右上のテンプレートにある分類表で示した位置付けはこれに基づいている。他方で、クモ綱のサソリに直接の系統関係があるとの説も強く主張されてきた。形態的に類似点が多いので、陸に上がったウミサソリがサソリの祖先になったというのである。(事実、初期のサソリには海生で鰓を有する等、ウミサソリと共通の特徴を持つ物が存在したことが化石から推測されている。)しかし、これを疑問視する向きもあり、必ずしも定説とはなっていない。また、カブトガニよりむしろクモ綱に近いとして、これをクモ上綱の下でウミサソリ綱とする扱いもある。
なお、カブトガニ類と関係があると思われる分類群に光楯類があり、これは三葉虫類とカブトガニ類の間に存在するミッシングリンクと言われていたこともあるが、これがむしろカブトガニ類とウミサソリ類の共通祖先に当たるとの説もある。
下位分類
2000年代[2]の知見では、下位分類は2亜目22科約300種で構成されている。
脚注・出典
参考文献
関連項目
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