ケツァルコアトルス

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テンプレート:生物分類表 ケツァルコアトルス (テンプレート:Snamei)は、中生代の終わり、白亜紀末の大量絶滅期の直前の時代を生きていた翼竜の1である。翼指竜亜目(プテロダクティルス亜目)中のアズダルコ上科アズダルコ科分類される。

約8400万年前(中生代白亜紀後期カンパニア階)から約6550万年前(同・末期マーストリヒト階)にかけての約1850万年間、海進時代の北アメリカ大陸に生息していた。

現在知られる限りで史上最大級の翼竜であり、同時に、史上最大級の飛翔動物である(かつては「史上最大“級”」ではなく「史上最大」とされていた。今日(2008年時点)もなおそのように紹介されることが多い)。

呼称

属名 テンプレート:Snamei は、アステカ神話に登場する有翼の形の神ケツァルコアトルテンプレート:Lang-nah)にちなむ。

種小名 テンプレート:Snamei は、全翼機の開拓者ジャック・ノースロップ空気力学に対する功績を讃えての献名である。

英語での発音はQuetzalcoatlus - howjsay.comを参照。

中国語では、テンプレート:Snamei を「風神翼龍」、Quetzalcoatlus northropi を「北方風神翼龍」と呼んでいる[1]

発見

ファイル:Quetzskullswittonnaish2008.png
ほぼ完全な形で出土した Quetzalcoatlus sp. の頭蓋骨化石の図

最初の化石は、1971年の夏にアメリカ合衆国テキサス州ビッグ・ベンド国立公園内の白亜紀地層を調査していた、テキサス大学の学生ダグラス・ラーソンが発見した[2]

それは翼の骨の一部分であり、この生物は翼開長(翼を全開した状態での左右の翼先端間の距離)が12mにも及ぶと判断され、1975年、新種 テンプレート:Snamei として記載された[3]

加えて、未だ記載のない種が1996年、同じくテキサスからケルナーとラングストンによって報告された[4]。こちらは、翼開長約5.5m(18ft)と模式種の半分程度の大きさであった[5]

また、2002年モンタナ州のヘル・クリーク累層 (Hell Creek Formation) で発見されたアズダルコ類の脊柱化石「見本BMR P2002.2」も、ケツァルコアトルス属の1種である可能性ありとされている。推定翼開長約5–5.5m(16.5–18ft)[6]

分布

ケツァルコアトルスが生息していた地域は、亜熱帯と温帯の海と湿地ラグーンに満たされていたであろう白亜紀海路Cretaceous Seaway (Western Interior Seaway))にあたる(化石の分布だけで言えば Western Interior Seaway と重なる)。

当時の大陸の様子はリンク先の画像にて確認のこと。

  • 本種の出現より約600万年前、現代の約9000万年前(Late Cretaceous (90Ma) [7])の北アメリカ大陸は白亜紀海路によって中央を分断され、多くの水域が広がっていた。
  • 中生代が終わる約6500万年前(K-T (65Ma))の北アメリカ大陸では白亜紀海路が閉じて、現世に通じる一大陸塊となっている。この時期に本種は絶滅した。
ファイル:Quetzalcoatlus.JPG
ケツァルコアトルス・ノルトロピの全身骨格化石標本(ドイツはフランクフルト・アム・マインセンケンベルク博物館en〉)

形態

巨大な翼

ファイル:Pterosaurs on South Bank.jpg
王立協会350周年記念行事で、サウス・バンクに展示された模型。

ケツァルコアトルス・ノルトロピは史上最大級の翼竜であるが、翼開長の上限に関しては討論が続いている。最大の説では18メートルに達すると主張する学者がおり、米国・ミネソタ州にはその説に基づいた展示を行っている博物館がある。

しかし、そのような翼開長は生物学的に飛翔できる限界を超えているとの異論もあるテンプレート:要出典。もっとも、プテラノドンの最大種であり約9メートルの翼開長を持つステルンベルギは、ケツァルコアトルス発見以前には生物学的に飛翔できるサイズを超えているとされていた。

この議論に関して、複数の科学者が約12メートルという説に賛成している。ところが中国で発見されたアズダルコ科翼竜チェージャンゴプテルスのほぼ完全な全身骨格から、アズダルコ類は前肢が比較的短いプロポーションを持つことが分かってきた。そのため近年の推定では、ケツァルコアトルス・ノルトロピの翼開長を平均約10–11メートルとする説が有力となってきてもいる。12メートルという数値はこれを最大級の個体の記録とするものである。

この問題に対する解答は、まだ明確になっていない。

最大ではなく最大級に

ファイル:Quetzalcoatlus northropi nps.png
ケツァルコアトルス・ノルトロピと乗用車の大きさ比較

翼開長が12メートルにもなる翼竜として以前から知られていたのはケツァルコアトルス・ノルトロピのみであったため、この種は単独で「史上最大の翼竜」や「史上最大の飛翔動物」と呼ばれていた。

しかし近年では、ヨルダンにて発見された同じアズダルコ科のアランボウルギアニア(アランボーギアニア、Arambourgiania)やルーマニア産のハツェゴプテリクスHatzegopteryx)など、12メートル以上の翼開長を持つ可能性のある翼竜がいくつも報告されている[8]。ゆえに、現在のケツァルコアトルス・ノルトロピに対する形容は「既知で史上最大級の翼竜」とするのが適当である。

どれほど軽量であったのか

ケツァルコアトルスの体は他の翼竜と同様に骨の内部が空洞になっており、軽量化されていた。成体でも70キログラム程度しかなかったとされる。

とは言え、飛行体にとって肝心なのは大きさと質量のバランスであり、軽すぎると風に翻弄されるので、かえって不利を生むと考えられる。いかに軽かったかではなく、その生物飛行体が実在するのであれば、大きさに見合った質量がどの程度であるかを推算しなければならない。

地にあってはキリン並み

翼竜もこれほどの大きさになると、地上にあって四肢で這っているとき、その体高はキリン(平均約5.3メートル)に匹敵すると思われる。

おそらく(くび)はキリンに比してより長く、しかし体格はずっとスリムで、体重にいたっては比較にならないほど軽かった(キリンは1t 強)と考えられる。

生態

ファイル:Life restoration of a group of giant azhdarchids, Quetzalcoatlus northropi, foraging on a Cretaceous fern prairie.png
地上を歩きながら獲物を探すケツァルコアトルス・ノルトロピの想像図
ファイル:Quetzalcoatlus 1.JPG
四つ足状態の復元模型
ファイル:Quetzalcoatlus northropi 01.jpg
飛行中のケツァルコアトルスの想像図
ファイル:Dinosaurs at CMNH 44.JPG
飛行状態の復元模型

飛行能力

ケツァルコアトルスは約50- 60km/hで飛翔していたことが分かってきた。

今日では、彼らは上昇気流の助けを借りることなく自力のみで離陸することができたと推測されている。しかしその仮説を容れた場合でも、離陸にあたっては多くの時間を要したであろうと長く言われ続けてきた。

ところがこれにも反証的新説が提示されている。彼ら翼竜類に独特の可動域の広い翼支骨と前皮翼が「円弧翼」を形作るため、ケツァルコアトルスの助走が約40km/hに達しない程度だったとしても、比較的たやすく揚力を得て飛び立つことができたのではないか、とする推論である。円弧翼とは、下面がフラットであるのに対して上面が円弧面を描く、空気力学的基本形と言える翼で、鳥や飛行機の翼にも共通の、大きな揚力を生み出すことができる構造体である。

1980年代に1/2スケールの無線操縦の模型が作られ飛行実験に成功した。このプロジェクトの一部始終はIMAX映画『オンザ・ウイング』で観ることができる。

歩行

足跡の化石が発見されており、地上ではおそらく4つ足で歩いていたと思われる。

食生

生態については、大型の翼竜類で多く言われる「水上を滑空しつつ水面をスキミングする[9]ことで魚を捕食する」という説の他、長く細い頚椎柱と歯の無い長い(くちばし)を具えていることから「現生鳥類のアオサギのように多様な生態を持つ魚食動物であった」とする説や「コウノトリ目の鳥類のように平原湿地を主たる生息域として地上を歩き、さまざまな小動物を啄(つい)ばんでいた」とする説、同じコウノトリ類様でも「アフリカハゲコウと相似をなすような死肉漁(あさ)りであった」という説などが唱えられている。

展示

1987年天王寺博覧会、2007年から各地で巡回開催された「世界最大の翼竜展」でレプリカが展示された。

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脚注・出典

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関連項目

外部リンク

テンプレート:Sister テンプレート:Sister テンプレート:Sister

日本語による

日本語以外

  • 北方」は Northrop の意訳によるもの。
  • Witton, M.P., and Naish, D. (2008). "A Reappraisal of Azhdarchid Pterosaur Functional Morphology and Paleoecology." PLoS ONE, 3(5): e2271. doi:10.1371/journal.pone.0002271Full text online
  • Lawson, D. A. (1975). "Pterosaur from the Latest Cretaceous of West Texas. Discovery of the Largest Flying Creature." Science, 187: 947–948.
  • Kellner, A.W.A., and Langston, W. (1996). "Cranial remains of Quetzalcoatlus (Pterosauria, Azhdarchidae) from Late Cretaceous sediments of Big Bend National Park, Texas." Journal of Vertebrate Paleontology, 16: 222–231.
  • Buffetaut, E., Grigorescu, D., and Csiki, Z. (2002). "A new giant pterosaur with a robust skull from the latest Cretaceous of Romania." Naturwissenschaften, 89: 180–184
  • Henderson, M.D. and Peterson, J.E. "An azhdarchid pterosaur cervical vertebra from the Hell Creek Formation (Maastrichtian) of southeastern Montana." Journal of Vertebrate Paleontology, 26(1): 192–195.
  • Mollewide Plate Tectonic Maps - Dr. Ron Blakey
  • Buffetaut, E., Grigorescu, D., and Csiki, Z. (2002). "A new giant pterosaur with a robust skull from the latest Cretaceous of Romania." Naturwissenschaften, 89(4): 180-184. Abstract
  • (液体を)すくい取ること。