キリン

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テンプレート:生物分類表 キリン英語:giraffe)は鯨偶蹄目キリン科に属する動物。もっとも背が高い動物であり、体にくらべ際立って長い首をもつ。アフリカ中部以南のサバンナや疎林に住む。

名称

和名「キリン」は、鄭和が連れ帰ったキリンを「麒麟」として永楽帝に献上した故事にちなみ、近代になって命名されたものである。 キリンを「麒麟」と呼ぶ言語にはほかに韓国語の「기린」(麒麟、girin)、台湾語テンプレート:繁体字(kî-lîn-lo̍k)がある。 ちなみに中国語では(台湾ミン南語を除き)キリンは「麒麟」ではなく、「長頚鹿」(“長いくびの鹿”、テンプレート:繁体字テンプレート:簡体字テンプレート:ピンイン)と呼ぶ。

種小名 camelopardalisラテン語 camelus 「ラクダ」および pardus 「ヒョウ」の合成語で、「豹柄のラクダ」との含み。ローマ時代からの古い言葉である。

英名 giraffe はさかのぼれば テンプレート:Lang-ar (zarāfa)に由来するとされる。日本語でもごくまれに、英名にもとづいて「ジラフ」と呼ぶことがある。

特徴

ファイル:Giraffe skeleton.jpg
キリンの骨格標本。長い首は、ヒト等と同じく7個の頸骨から成る。

長い首をもつ最も背の高い動物であり、オスの体高は平均5.3m に達する。見た目から細い印象があるが、体重が1tを超す場合も多い。殆どの哺乳類と同様、頸骨(けいこつ)の数は7個である。長い首は一つ一つが大きい頚骨と、それに伴い発達した筋肉で支えている。時速50キロ程度で走ることができるが、足が長いため加速性は悪い。ライオン等に襲われた時には、リーチを活かしてキックで応戦することもある。このキックは強烈で、ライオンを蹴り殺すことがある。

長さ約40cmの長いを持ち、この舌でからめ取るようにして高い所にある木の葉を食べている。オス、メスともに頭に2-5本の皮膚におおわれたがある。体は黄褐色の地に茶色のまだら模様になっている(ちなみにその模様は体毛を剃ると無くなる)。

心臓からまでの高低差は約2mある。脳まで血流を押し上げる為、動物の中で最も高い血圧を有する。首の血管には弁がついており、血液が逆流することを防いでいる。

キリン科に属するキリンとオカピの後頭部には「ワンダーネット(奇驚網)」と呼ばれる網目状の毛細血管が張り巡らされている。この「ワンダーネット」が急激な血圧の変化を吸収するため、急に頭を上げ下げをしても、立ちくらみをすることがない。

脚が鬱血しないように、皮膚が硬質化している。

1日の睡眠時間は諸説あるが、10分-20分、長くても1時間程度と言われている。寝る時は足をまげて地面に座り、首は丸めて体に乗せて寝る。

鳴き声はにやや似た声で「モー」と鳴く。ただし滅多にその鳴き声を披露することはなく、動物園の飼育員ですらごくごく稀にしか聞けないという。

生態

ファイル:Giraffe head at ground.png
前脚を広げ屈むキリン

オスを中心とした2-10頭程度の群れで生活している。食物の葉から摂る水分のみで、水を飲まなくても生きていくことができるため、アフリカに住む他の草食動物と異なり、乾季になっても移住をしない。

キリンはいつもは草を食べているが、時おり小鳥などの小動物を食べることもあるという。『キリン ぼくはおちゃめなちびっ子キリン』[1]によると、多摩動物公園のキリンたちがトンカツを食べるので、高タンパクの飼料に切り替えると、めったに肉食しなくなったという[2]。同書には、当時話題をまいた鳩をくわえた写真や、鳩の背後で舌を伸ばす写真が掲載されている。

水を飲むときはしゃがまずに前足を大きく左右に広げ、立ったままで水を飲む。これは敵に襲われたときにすぐに逃げることができるためであると考えられる。

発情期にはメスを取りあって、オス同士が首をぶつけ合いながら戦う姿がしばしば見られ、これはネッキングと呼ばれる。妊娠期間は15か月。体高1.7-2mの子どもを1頭出産する。生まれた子どもは20分程度で立つことができるようになる。

アフリカではキリンは土と骨を舐める事によりミネラルを摂取し、まとわりつくダニウシツツキが食べている。

亜種

分布域によって9-12亜種に分けられる。体表の模様などが異なる。脚の模様の有無も重要な判別材料となる。

日本のキリン

日本にキリンが来たのは、1907年3月15日である。「キリン」の和名は、この時に当時の動物学者石川千代松によって定められたものである(鄭和の故事に基づくネーミングである)。ドイツの動物園から2頭のキリンが海路横浜港に到着した。鉄道で輸送する予定が、経路途中の陸橋をくぐることができないため、船で日本橋浜町河岸につけ、大八車で上野動物園に運んだ。

しかしこの時来日した2頭は、越冬できず翌年死亡している。原因は熱帯の動物だからという事で、過剰に暖房に注意を払った事による換気不足と考えられている。1933年に2度目の輸入で運び込まれた2頭については、冬期の暖房温度を20度から15度に下げてみた所、問題無く越冬し、1937年に繁殖に成功した。ちなみに第二次世界大戦中は動物園でも暖房を行う余裕など無かったが、無事生き延びており、暖房そのものが不要であったとされた。

その他

キリンは法律上、ペットとして飼育できる。これは日本国内で個人が飼育できる最大の陸上哺乳類である。しかし飼うとなると莫大な費用(餌代だけでおよそ一日3,000円以上)が必要である。寿命は長く、30年以上生きたことがある。また、飼育には各自治体の許可が必要で、輸入には検疫が必要である。

キリンは、人の食用とされることがある。古代イタリアポンペイでは、住民がキリンやフラミンゴを食べていたことが分かっている[3]。キリンの個体数が多い国では、今でも個体数調整のため、キリンを狩猟して食べることがある[4]。また、イスラエルラビユダヤ教指導者)によれば、キリンはカシュルートに当てはまる動物であり、ユダヤ教徒が食べても良いという見解を発表した。ただし、ユダヤ教徒が多い地域では、もともとキリンのは一般的な食べ物ではない[5]

ギャラリー

脚注

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関連項目

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  1. 子ども動物園3 徳江和代・文 ポプラ社 1980年4月
  2. キリンに限らず草食動物タンパク質を必要とするときは他の動物を捕食することはあり得ることである。
  3. テンプレート:Cite news
  4. テンプレート:Cite news
  5. テンプレート:Cite news