ガンマ線バースト

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ファイル:Gammarayburst-GRB990123.jpeg
1999年1月23日に起きたガンマ線バースト GRB 990123 の可視光での残光(白い四角形の中の輝点。右は拡大図)。残光の上部に伸びるフィラメント状の天体はバースト源をもつと思われる銀河。この銀河は別の銀河との衝突によって形が歪んでいる。

ガンマ線バースト(ガンマせんバースト、テンプレート:Lang-en-shortGRB)は、天文学の分野で知られている中で最も光度の高い物理現象である。

ガンマ線バーストではガンマ線が数秒から数時間にわたって閃光のように放出され、そのあとX線の残光が数日間見られる。この現象は天球上のランダムな位置で起こり、一日に数回起きている。

ガンマ線バーストを起こす元となる仮想的な天体をガンマ線バースターと呼ぶ。2005年現在では、ガンマ線バーストは極超新星と関連しているという説が最も有力である。超大質量の恒星が一生を終える時に極超新星となって爆発し、これによってブラックホールが形成され、バーストが起こるとされる。しかし天体物理学界ではガンマ線バーストの詳細な発生機構についての合意は得られていない。

名前

ガンマ線バーストの名前は、略称の「GRB」に、発生時刻の西暦下2桁、月、日の6桁の数値で決まる。同日に複数のガンマ線バーストがあった場合は、A、B、C…という順にアルファベットが付けられる。例えば2008年9月16日に3番目に発生したガンマ線バーストは「GRB 080916C」となる。

発見

ガンマ線バーストは1967年7月2日にアメリカの核実験監視衛星ヴェラによって発見された。発見されたGRBは後にGRB 670702と名づけられた。ヴェラは核兵器の爆発実験により放出される放射線を検出する目的で作られた衛星だが、発生源が不明のガンマ線のバーストを検出することがあった。1973年にアメリカのロスアラモス国立研究所の研究者が、この衛星のデータから、これらのバーストが太陽系外からやってきていることを突き止めた。

宇宙から飛んでくるガンマ線は地球の大気によって遮られるため、ガンマ線バーストは大気圏外でしか観測することができない。研究者たちは、より高性能のガンマ線検出器を衛星軌道上に打ち上げればGRBの位置を迅速に求められると考えた[1]。しかし、1970年代になって高性能のガンマ線センサーが打ち上げられたものの、バースト源の位置を特定して詳細に調べるためには精度が不足していた。衛星が示したバーストの発生位置付近を可視光で観測してもそれらしい天体が全く見つからなかった。

バースト源についてそれ以上詳しい情報を得ることは難しいことが明らかになり、またGRBについて多く疑問が出された。第一の疑問は、バースト源は銀河系内にあるのか、それとも遠くの宇宙にあるのか。第二の疑問は、バーストのメカニズムは何か、であった。仮にバーストが遠方の宇宙で起きるとすると、その莫大なエネルギーの源を説明するのが難しくなる。

1980年代にはこの問題はほとんど進展しなかった。しかし1991年4月にアメリカ航空宇宙局コンプトンガンマ線観測衛星を打ち上げた。コンプトンに搭載された観測装置の Burst And Transient Source Experiment (BATSE) はガンマ線バーストを検出し、その天球上の位置を十分な精度で決定することに成功した。BATSEによって、ガンマ線バーストには少なくとも2種類、硬ガンマ線バースト軟ガンマ線リピーターが存在することがわかった。

BATSEは毎日2、3個のGRBを検出し、それらが天球全体にわたってランダムに分布することを発見した。バーストが我々の銀河系内で起きているのであれば、銀河面に沿ってより多く分布するはずである。バースト源が銀河系のハローに付随しているとしても、銀河中心により多く分布するように見えるはずである。またもしそうなら、近傍の銀河も同様のハローを持つと期待されるが、これらの銀河のハローに暗いガンマ線バーストの輝点が見られるようなことはなかった。

多くの天文学者にとってこの事実はGRBが遠方の宇宙で起きていることを示唆するものであったが、同時にこれほど大きなエネルギーを生み出すことができるメカニズムを探すという問題に直面することとなった。理論天文学者の中には依然としてGRBが銀河系内で起きているというモデルを考え出す者もいたが、BATSEではこの問題を解決できなかった。

バーストの同定: GRB 970228

1990年代末にはGRBが銀河系内で起きるとする説は否定された。最初の手掛かりは、1996年に打ち上げられて2003年まで稼動したイタリアオランダBeppoSAX衛星によってもたらされた。

BeppoSAXは2つの広角X線カメラと協調して動作するガンマ線検出器を搭載していた。衛星のガンマ線検出器の角分解能は高くないが、GRBには一般にX線も含まれているので、X線カメラを使えば素早くバースト源を特定することができ、可視光やほかの波長の望遠鏡での観測に役立つ。

1997年2月28日、BeppoSAXはGRBの正確な位置を素早く割り出すことに成功した。このデータにより、アムステルダム大学のJ. van Paradijsのチームがカナリア諸島のラ・パルマにあるウィリアム・ハーシェル望遠鏡でGRBの可視光の対応天体を検出することに初めて成功した。GRB 970228と名づけられたこのバーストの光学対応天体は、1997年3月26日にはハッブル宇宙望遠鏡によって観測され、淡く広がった天体が取り巻いていることがわかった。これはハッブル・ディープ・フィールドの非常に遠方にある銀河によく似ていた。しかしこの頃にはバーストの残光は非常に暗くなっていたため、バーストが銀河系外に起源を持つことをはっきりと証明するために必要なスペクトルを得ることはできなかった。

1997年5月8日、BeppoSAX は別のバーストGRB 970508きりん座で記録した。衛星の研究チームはインターネットでバースト発生の報告を流し、7時間後に天文学者ハワード・ボンドがアメリカのキットピーク国立天文台の90cm望遠鏡を使って光学天体を検出した。5月11日には10mケックII望遠鏡によってこの天体のスペクトルが得られた。このスペクトルの吸収線は大きなドップラーシフトを示していた。赤方偏移の値は 0.835 であった。ハッブルの法則を当てはめるとバースト源は数十億光年の彼方にあることになる。

これらの観測に続いて天文学者たちは、バースト発生の数時間後あるいは数日後により暗い可視光や電波の残光を検出することにも成功した。赤方偏移のデータもより多く集まり、バーストが遠方の宇宙で起きていることがはっきりした。

1997年1998年に行われたいくつかの GRB 発生位置の可視光観測によって、バーストと超新星の間につながりのある可能性が浮かび上がってきた。これらの観測は決定的なものではなかったが、これらのデータから天体物理学者たちは GRB が超新星と関連していることに自信を持つようになった。

バーストの観測: GRB 990123

1999年1月23日、アメリカ・ニューメキシコ州ロスアラモスの Robotic Optical Transient Search Experiment 1(ROTSE-1)という装置によって、初めて GRB 本体の可視光画像を得ることに成功した。ROTSE-1 は商用の200mm望遠レンズ4本が CCD 撮像素子に組み合わされたアレイで構成されており、これが自動動作する架台に搭載されていた。これらの望遠レンズはアマチュア天文趣味の基準から言っても地味なものだが、ROTSE-1 は広い視野を持ち、天球上のどの場所にも素早く向いて撮像を行なえるものだった。

1999年1月23日早朝のまだ暗い時間に、コンプトン衛星が1分半にわたって継続するガンマ線バーストを記録した。バーストが最初に検出されてから25秒後にガンマ線とX線の最初のピークがあり、続いてバースト発生の40秒後にいくらか小さなピークがあった。その後50秒の間にいくつかの小さなピークを残しながら放射は消えていった。発生から8分後には最大光度の 1/100 まで光度が下がった。このバーストは過去のガンマ線バースト全ての中で上位 2% にランクされるほど強いものだった。

コンプトン衛星はバースト発生の報告を NASA ゴダード宇宙飛行センターの地上制御施設に送り、センターはすぐにデータをガンマ線バースト座標ネットワーク (Gamma Ray Burst Coordinates Network, GCN) に流した。このバーストは GRB 990123 と命名された。

コンプトンではバーストの正確な位置は求められなかったが、発生位置の情報は広角の ROTSE-1 にとっては十分なものだった。ROTSE-1 のカメラアレイは自動的に発生位置付近の領域に焦点を合わせ、コンプトンが検出してから22秒後のバーストの画像を撮影し、これ以後、25秒間隔で画像を撮影した。ROTSE-1 は16等までの暗い天体を撮影できるが、GRB ハンターたちは GRB の可視光成分は非常に暗いのではないかと予想していた。しかし ROTSE-1 が撮影した可視光成分は9等もの明るさに達していた。これは性能の良い双眼鏡で見ることができる明るさである。バーストを起こした天体はバースト発生から1分以内に4,000倍も明るくなっていた。

BeppoSAX もこのバーストを観測しており、発生位置を1分角以内の精度で特定した。このデータもネットワークに流され、バーストの4時間後に発生位置がパロマー天文台の1.52m(60インチ)シュミットカメラで撮影された。この画像には過去のアーカイブ画像にはない18等級の可視光の天体が写っていた。

翌日の夜にはハワイの10mケック望遠鏡とカナリア諸島のロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台の2.6mノルディック光学望遠鏡で、20等級まで減光した天体が撮影された。これらの観測で吸収線の赤方偏移が 1.6 であることが明らかとなった。これは距離に換算すると約90億光年となる。

バースト発生の16日後にはハッブル宇宙望遠鏡が GRB 990123 の観測を行った。この頃には当初の300万分の1まで暗くなっていた。ハッブルはバースト源の位置に暗い銀河を写し出した。この銀河は青い色をしており、新しい星が大量に生まれていることを示唆していた。

GRBとは何か?

GRB 990123 の明るさと推定される距離とから、二つの可能性が考えられる。

第一は、このガンマ線バーストの放射は等方的に広がったというものである。これによると、バーストで放出されたガンマ線のエネルギーは太陽質量の1.3倍の恒星の質量を全てガンマ線の放射に完全に変換した場合に生み出されるエネルギーに等しい。可視光の波長では、もしこのバーストが我々の銀河系内の2000光年の距離で起きたとすると、太陽の2倍の明るさで輝いて見えることになる。

同様の議論は1997年に観測された GRB 971214 についても行なわれている。GRB 971214 も HST によって残光の位置に暗い銀河が発見されており、この銀河の赤方偏移が 3.4(距離に換算して約120億光年)と求まっている。この距離でバーストが起き、エネルギーが等方的に放出されたと仮定すると、そのエネルギーは通常の超新星爆発の数百倍に達し、バースト源の周囲100マイルの領域はビッグバンの1ミリ秒後に匹敵する温度に達したことになる[2]

もう一つの可能性は、ガンマ線は等方的な分布ではなく狭い領域に細く絞られて放出された、とするものである。この場合でも大きなエネルギー放出になるが、そのエネルギーは超新星と同等となり、それゆえ奇妙な物理過程をあまり必要とせずに済む。

天体物理学者たちは、バーストのパワーを完全に説明できる説得力のあるメカニズムを考え出すことに挑戦している。様々な考えの一つに、中性子星同士、あるいは中性子星とブラックホールとの衝突によって説明できる、とする説がある。また別の考え方では、バーストは極超新星によって起こるとするものもある。

ハッブルの観測によって GRB 990123 に若い銀河が付随していることが明らかとなった。これは、バーストが中性子星や他のコンパクト天体の衝突によって生じると考えていた理論家達を失望させることになった。衝突説ではコンパクト天体がかなり高い個数密度で存在している必要があるが、これは若い銀河とは矛盾する。一方で超新星は星形成の盛んな若い銀河では頻繁に起こる。超新星爆発を起こして死を迎えるような大きな星は寿命が短いためである。

超新星モデルにもエネルギー生成の点で困難があった。問題を避けるための方法の一つに、バーストのエネルギーは全方向に等しく放射されるのではなく、星の回転軸方向だけに放出されると仮定する方法がある。これは激しい活動性を見せるある種の恒星や銀河が決まった方向に高エネルギーの宇宙ジェットを放出するのと似ている。バーストの強力な光度に対する別の説明として、バーストの光は地球と GRB の間にある大きな銀河によって作られる空間の歪みによる重力レンズで集光されているという説もある。

重力レンズ説は、実際に地球と GRB の間に銀河があることを示唆する観測結果が出てきたことで当初支持された。しかしこの「銀河」は後に、撮像時の傷であることが分かった。このことによって重力レンズ説が完全に否定されたわけではないが、イェール大学のブラッドリー・E・シェーファーが、赤方偏移 1.6 という距離での銀河の密度を考えると、重力レンズが起こる確率は 1/1000 程度にしかならないだろうと指摘したことで、この説に対する興味は薄れていった。

プリンストン大学のボーダン・パチンスキーとカリフォルニア大学サンタクルーズ校のスタン・ウーズレーはそれぞれ独立に、超新星爆発では爆縮によってブラックホールが作られる時にガンマ線のエネルギーが細いビームとなって放出され、この集中したビームによって実際よりもエネルギーの大きい現象として観測される可能性があることを示唆した。爆縮過程でどのようにしてこのようなビームが作られるかはいまだに謎のままである。しかし、2001年秋に発表された17個の GRB の残光の解析から、ビームの幅について上限が与えられた。この解析によれば、ビームの幅はわずか数度の角度範囲に限られる。このような細いビームとして放射されているとすると、GRB のエネルギーは 1044 J の数倍のオーダーとなり、平均より少し規模の大きな超新星でエネルギーをまかなうことができる。

このような細いビームでガンマ線が放射されているとすると、おそらく500個に1個程度の GRB しか地球からは観測されないことになる。もしそうならば、GRB は実際には宇宙でごくありふれた現象であり、毎分1回程度は起きていることになる。これが本当なら、ガンマ線バースト自体は見られず、続いて起こる残光現象だけが見られる「親なしの残光」を観測することができるかもしれない。

GRB の明るさは短時間で変化する。このことから、バースト源の天体(もしくは発生領域)は非常に小さいと考えられる。天体の一部から起きた変化は光速を超えずに天体全体に及んでいくが、天体が大きければそれだけ時間がかかることになるため、明るさの変化がどのような原因であったとしても、そのような短時間でも天体全体の明るさが変化できることは天体は大きくはないことを意味すると考えられているからである。非常に高密度の環境では光子は外へ逃げ出すことができないため、天文学者たちは最初天体から物質のジェットとしてエネルギーが放出され、ガンマ線は天体からある程度離れた領域で内部衝撃波によって作られると理論付けている。

GRB が超新星と関連しているという直接的な証拠も存在する。超新星爆発の爆縮過程によって広い範囲の重元素が合成され、その中の多く、とりわけニッケルの同位体は非常に不安定なためごく短い時間で崩壊し、放射線を出す。これによって、超新星は爆発の数日後、あるいは数週間後により明るくなる。

2001年11月21日、BeppoSAX はある GRB を捉えた。このバーストはハッブル宇宙望遠鏡によって観測が行なわれ、GRB 011121 の進化が長期間にわたって追跡された。観測で得られた光度曲線は超新星の光度変化モデルと一致した。しかし GRB 011121 のスペクトルは得られなかったため、超新星とのつながりを結論付けることはできなかった。

答への接近

GRB のデータは今不完全なものであり、依然として謎に包まれている。GRB のスペクトルを得ることは難しいことが分かっていて、それゆえ GRB までの距離を正確に推定することは困難である。

GRB までの距離は赤方偏移を測定すれば見積もることができる。しかしガンマ線の測定データにははっきりした線スペクトル構造が見られないため、ガンマ線の観測から赤方偏移を測定することはできない。その代わり、残光の可視光観測からは赤方偏移を測ることができる。しかしバースト発生後すぐに場所を特定して残光を見つけるのは非常に難しい。天体物理学者の中には、GRB の変光の割合が距離に関する有用な指標を与え、さらに遠方の宇宙の距離決定の標準光源として役に立つと考える者もいる。

GRB はバーストの継続時間が長いものと短いものの二つのカテゴリーに分かれるという謎もある。長いバーストは超新星に付随しているものであろうと一般に考えられているが、短いバーストは全く異なるメカニズムに関連しているのかもしれない。

データの曖昧さや数多くの謎が残されているにも拘らず、天文学者たちは現在、謎の答に迫りつつあると考えており、非常に興奮している。彼らは自分達が使うことができる道具をこの問題の解決にうまく使っているところである。

天文学者たちは、2000年10月9日に打ち上げられたアメリカのHETE-2衛星によってより多くの情報が得られると期待している。最初のHETE-1衛星1996年11月4日に打ち上げられたが、ロケットからの衛星切り離しに失敗した。バーストハンター達は落胆したが、幸いにもスペア部品から代替機を作ることができた。HETE-2 はガンマ線バーストの位置を迅速かつ正確に求めることに特化して設計されており、これによって NASA のチャンドラX線天文台など他の観測衛星がバーストのより詳細な情報を得られるようになっている。

さらに現在、GRB を調査する新たなミッションが始まっている。スウィフトガンマ線バースト観測衛星2005年4月に稼動している。スウィフトは「バースト警戒望遠鏡」を搭載し、他の衛星にあらゆるガンマ線バーストの発生情報を送ることができる。この衛星はバースト源に向けて素早く方向転換し、今までよりも高感度の観測装置でバーストの観測を行う。スウィフトは50秒以内に姿勢を50度移動でき、天空上の正確な座標に観測装置を向けることができる。

2005年5月5日、スウィフトはあるバーストを捉えて追跡観測を行った。このバーストは他の観測衛星・天文台によっても観測が行われた。この時のデータはこのバーストが2つの中性子星の衝突によって生じた可能性を示唆している。この天体の調査は現在も続けられている。

地球上での大量絶滅

研究者の中には、近距離のガンマ線バーストによって地球がガンマ線の放射を受けた場合の影響について調べている者もいる。この研究は、地球で起きた大量絶滅の原因を説明し、また地球外生命の存在の可能性を評価するという動機に基づいている。現在の共通認識では、ガンマ線バーストによる被害はバーストの継続時間が短いために限定されたものに留まるが、十分に近い距離でバーストが起きた場合には地球大気に深刻な被害をもたらし、オゾン層が破壊されて大量絶滅を引き起こす可能性もあるとされている。ガンマ線バーストによる被害は、同じ距離で起こる超新星爆発による被害よりは小さいものになるだろうと考えられている。

2005年、NASA とカンザス大学の研究者が、約4億5000万年前のオルドビス紀シルル紀境界での大量絶滅がガンマ線バーストによって引き起こされたことを示唆する研究結果を発表した。研究者達はこのようなバーストが古代の絶滅を引き起こした直接的な証拠を持っているわけではないが、彼らの研究の特色は、大気のモデリングによって、「そのようなバーストがもし起きたとしたらどうなるか」というシナリオを描いている点である。彼らは比較的地球に近い恒星の爆発によるガンマ線放出の計算を行い、この爆発で地球にはわずか10秒間しかガンマ線は降り注がないものの、これによって地球大気のオゾン層の約半分がなくなる可能性を示した。消滅したオゾン層の回復には少なくとも5年を要するとされている。オゾン層の破壊によって、太陽からの紫外線が地上や海・湖沼の表面近くに生息する生命の大半を死滅させ、食物連鎖も破壊される。我々の銀河系内でガンマ線バーストが起こる可能性は非常に小さいが、NASA の研究者は過去数十億年の間に少なくとも1回は地球にガンマ線が降り注ぐほど近い距離でバーストが起きただろうと見積もっている。地球上の生命は少なくとも35億年前には誕生していたと考えられている。カンザス大学の古生物学者であるブルース・リーバーマン博士は、ガンマ線バーストがオルドビス紀の大絶滅の原因となった可能性があるという具体的なアイデアを提唱した人物である。「我々はそれがいつ起きたか正確には知りませんが、それが過去に起こり、その痕跡を残したこと自体には確信を持っています。最も驚くべきことは、たった10秒間のバーストでオゾン層に数年にわたる破壊的な被害がもたらされるということです」と彼は述べている[3]

2012年、名古屋大学により、屋久杉年輪の解析から、西暦774年から775年の1年間に宇宙線が急激に増え、炭素14が生成されていたことが発表された。この宇宙線の増加の原因を、地球から近傍での超新星爆発(ガンマ線バースト)とする説や、太陽での巨大フレアの発生とする説などが唱えられたが、特定には至っていない[4][5]

軟ガンマ線リピーター

軟ガンマ線リピーターマグネターの一種で、ガンマ線やX線の大規模なバーストを不規則な周期で引き起こす天体である。この現象で放出されるガンマ線・X線光子のエネルギーは通常のガンマ線バーストのものよりは低く(軟ガンマ線及び硬X線の領域に相当する)、天球上の同じ領域で繰り返しバーストが起こるのが特徴である。

SGR 1806-20 は過去に記録された最大のバーストで、その絶対等級は-29等に達した。

脚注

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参考文献

  • Neil Gehrels et al. "The Brightest Explosions in the Universe," Scientific American, Vol 287, No. 6, December 2002
  • Originally based on the document [v1.1.0 / 01 jul 02 / gvgoebel@earthlink.net / public domain]

関連項目

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外部リンク

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  1. このように考えたのは、それ以前に宇宙X線源について、同様に人工衛星を使うことで位置の同定に成功していたためであった。
  2. [1]
  3. テンプレート:Cite web
  4. テンプレート:Cite news
  5. サイエンスポータル 「西暦775年に宇宙環境の大変動が起きていた」2014年6月閲覧