アメノウズメ

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天鈿女命像 天岩戸神社東本宮

アメノウズメ(アマノウズメ)は、日本神話に登場する女神。一説に別名「宮比神」(ミヤビノカミ)、「大宮能売命 」(オホミヤノメノミコト)。

岩戸隠れ」のくだりなどに登場する芸能の女神であり、日本最古の踊り子と言える。

神名

古事記』では天宇受賣命、『日本書紀』では天鈿女命と表記する。神名の「ウズメ」の解釈には諸説あり、「強女(オズメ)」の意とする『古語拾遺』説や、「髻華(ウズ)」を結った女性(巫女の装束)の意とする『稜威道別』(イツノチワキ)説、折口信夫が『若水の話』で出した、「マナを指すヲチの音便で、魂をヲチふらせる意」説などがある。

解釈

「神々を笑わせた」という(なお日本書紀には、そういう描写はない)、をこ(滑稽)な所作をするワザヲキ(俳優、隠された意味を指すワザを招く/ヲク者)即ち芸人、コメディアン、俳優の祖であり、白川静の『字訓』によれば、「神と笑ひゑらぐ」巫女の神格化である。播州出身の柳田國男著『タクラタ考』によればアホ、バカ、アヤカリ、タワケ、タクラタ等の表現は元「神懸かり」のような、という意味である。同様に、「神々を和ませ 神の手較ぶ(真似する)」神事の零落したものが、現在の芸能であり、折口信夫によれば、滑稽な技芸である猿楽(さるがく 狂言の祖)は、猿女のヲコのわざと一脈通じるという(上世日本の文学 天細女命)。

『巫女考』で、芝居の狂人が持つ竹の枝を「ウズメの持つ」笹葉が落ちたものとする柳田國男の説を享けた折口信夫は、手草を「神である」物忌みを表す標とし、「マナを招く」採り物とは別であるとした。

谷川健一が、笑いと狂気という、「人間の原始的情念」の一環が噴出したものとしてあげた(『狂笑の論理』)、天の岩戸の前における「巧みに俳優をなす」彼女の行為は、神への祭礼、特に古代のシャーマン()が行ったとされる神託の祭事にその原形を見ることができる。いわばアメノウズメの逸話は古代の巫女たちが神と共に「笑ひゑらぐ」姿を今に伝えるものである。折口信夫の『上世日本の文学』によれば、カミアソビは「たまふり」の儀礼であり、岩戸で行なったウズメの所作は「マナ(外来魂)を集め、神に附ける」古代の行為である。

なお、折口は『上世日本の文学』で、死者の魂を呼ぶ儀礼が遊びであるため、「岩屋戸の神楽は、天照大神が亡くなったため興った」という説は再考すべきだと言っているが、少なくとも『延喜式』には、宮廷で行われた古代の鎮魂祭において、巫女たちが「槽ふし」激しい踊りを大王家の祖神へ奉納する儀礼に猿女も参加したことが記されている。

神話での記述

岩戸隠れで天照大神が天岩戸に隠れて世界が暗闇になったとき、神々は大いに困り、天の安河に集まって会議をした。思兼神の発案により、岩戸の前で様々な儀式を行った。

このように記述されている。 「槽伏(うけふ)せて踏み轟こし、神懸かりして胸乳かきいで裳緒(もひも)を陰(ほと=女陰)に押し垂れき。」 つまり、 アメノウズメがうつぶせにした槽(うけ 特殊な桶)の上に乗り、背をそり胸乳をあらわにし、裳の紐を股に押したれて、女陰をあらわにして、低く腰を落して足を踏みとどろかし(『日本書紀』では千草を巻いた矛、『古事記』では笹葉を振り)、力強くエロティックな動作で踊って、八百万の神々を大笑いさせた。その「笑ひえらぐ」様を不審に思い、戸を少し開けた天照大神に「あなたより尊い神が生まれた」とウズメは言って、天手力雄神に引き出して貰って、再び世界に光が戻った。

天孫降臨の際、瓊瓊杵尊(ににぎ)が天降ろうとすると、高天原から葦原中国までを照らす神がいた。アマテラスと高木神に、「手弱女だが顔を合わせても気後れしない(面勝つ)からあなたが問いなさい」と言われたアメノウズメが名を問い質すと、その神は国津神猿田彦と名乗り、道案内をするために迎えに来たと言った。

アメノウズメは天児屋命(あめのこやね)、太玉命(ふとだま)、玉祖命(たまのおや)、石凝姥命(いしこりどめ)と共に五伴緒の一人としてニニギに随伴して天降りした。アメノウズメはサルタヒコの名を明かしたことからその名を負って仕えることになり、猿女君の祖神となった。一説にはサルタヒコの妻となったとされる。

アメノウズメは大小の魚を集めて天孫(ニニギ)に仕えるかどうか尋ねた。みな「仕える」と答えた中でナマコだけが何も答えなかったので、アメノウズメはその口を小刀で裂いてしまった。それでナマコの口は裂けているのである。

信仰

ファイル:Uzume-honguu shrine.jpg
椿大神社別宮の椿岸神社(鈿女本宮)

猿女君・稗田氏の祖とされ、稗田氏の氏神である賣太神社では、芸能の始祖神、福の神、おたふく、おかめ、等と称すると伝わる。 芸能・技芸全般の神として信仰されており、千代神社(滋賀県彦根市)、芸能神社京都市右京区)、椿大神社三重県鈴鹿市)、鈿女神社長野県北安曇郡松川村)などで祀られている。

鈿女神社は地元で「おかめ様」として崇められており、最寄駅の大糸線北細野駅信濃鉄道の駅として開業した際「おかめ前駅」と呼ばれていた。国営化に当たって改称。

天孫降臨の地、高千穂より天の岩戸が飛来したと伝えられる長野県の戸隠神社には天の岩戸開神話に功績のあった神々(天手力雄命・天八意思兼命)が祀られており、そのうちの一社、火之御子社には天鈿女命が祀られている。また、岩戸開神話に基づいた神楽が古来より受け継がれている。

宮崎県西臼杵郡の高千穂町には、アメノウズメがサルタヒコと結婚した場、荒立宮の後と伝わる荒立神社があり、国際結婚・安産の神として、ウズメとサルタヒコが神体となっている。

村境や道路の分岐点などに立てられる道祖神は、サルタヒコとアメノウズメであるともされる。

天鈿女命を祭神とする神社

そのほか伊勢神宮内宮等各地神社に「宮比神」として祀られる。

音楽

座光寺公明『天宇受女』Op.4 (1980)。

関連項目

テンプレート:日本神話