冷風扇

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冷風扇(外山工業製)

冷風扇(れいふうせん)とは、水が蒸発する際に気化熱を奪うことを利用した、主に家庭用の簡易な冷房装置のことである。水冷式冷風機と称されることもあるが、水熱源ヒートポンプパッケージ方式(水冷エアコン)、冷風機と紛らわしいため呼び方としては好ましくない。どちらも原理効果ともに異なる。

基本原理

  1. 吸気用のファンが回転し、背面等から外気を吸い込む。
  2. 水分を含んだ蒸発用のフィルター(スポンジや厚手の不織布等)のすき間を吸気された空気が通る。
  3. その際に水の蒸発が起こり、気化熱が奪われてフィルター部の温度が低下する。
  4. その温度が低下したフィルター部分を風が通ることにより、結果的に放出される風の温度が低下する。

扇風機の背面に濡れたタオルが干してあると考えると分かりやすい。

利点

  • 消費電力や騒音が小さい。
  • 水を用いる為、環境に優しい。
  • 小型で軽量、かつ安価なものが製作できる。
  • 過度な冷房にはなりにくい(特にエアコンで体を冷やして体調を崩しやすい、乳幼児や高齢者に比較的優しい涼しさだといわれる)。
  • 湿ったフィルターに空気が通るため、若干の空気清浄効果が期待できる。

欠点

  • 水の気化を伴うため、室内の湿度が上昇し、体感的にはかえって蒸し暑くなる。
  • 梅雨時など、元々、湿度が高い時の冷房には不適当。
  • 冷却能力が小さく、エアコンのように部屋全体を冷却することは不可能。
  • 定期的に水を交換、または補給しなければならない。
  • 水が汚れたりフィルターにカビが生えるなどのこともあり、不衛生になりやすい。

使用上の注意

液体である水が蒸発して気体である水蒸気に相転移する際に気化熱を奪うが、この熱は潜熱として水蒸気中に蓄えられるので、部屋全体で見れば熱を逃がしたことにはならない。また水蒸気が増えるということは湿度が高くなることであるので、密閉された場所や湿度が高い場所で冷風扇を用いても、より蒸し暑くなるだけに終わってしまう可能性が高い。

とはいえ人体に風を直接当てた場合、皮膚から気化熱が奪われることによる冷却効果はある。しかしそうであるならば、単純な扇風機で何らの不足もないはずである。

水分を含んだフィルターは、水の蒸発によってそこを通る風を冷却する。これは打ち水で涼しくなる原理に相当し、本質的に冷風扇はこの効果をねらったものである。しかし一般に高温多湿である日本の夏においては、若干の室温低下による冷房効果よりも、湿度を低下させてサラッとした乾いた雰囲気にした方が、体感的には快適であることの方が多い(湿度は人体の汗の蒸発による冷却を妨げるからである)。気化熱による体温低下をねらうのであれば極端な話、水で絞ったTシャツを着て軽く扇風機の風を当てた方が効果的である。

以上のような湿度上昇効果と冷却効果との兼ね合いやバランスが、冷風扇の実用上の大きな問題となる。一般的には蒸し暑い時の冷房効果は皆無に等しく、「暑いがカラッとした天気の日」において、風通しのよい室内で補助的に用いるのが効果的といえる。締め切った室内で用いるには適さない。

上述のように温暖湿潤気候の日本では、夏は既に湿度が飽和状態に近く、蒸発用のフィルターを通しても水が蒸発する程度は低い、あえて蒸発させたいならば熱する必要がある(もちろん、そんなことをすれば部屋の気温が上がり、冷風装置の意味を成さない)。したがって気化熱にほとんど冷却効果は期待できず、その冷却効率は到底エアコンには及ばない。しかし砂漠地帯(北アフリカ中近東メキシコ)のような乾燥高温地帯においては、この原理でかなりの室内冷却が可能であり、一般家庭では水の気化熱を利用したクーラーが一般的である。

改良タイプ

氷を投入したり、凍らせた保冷剤を用いて空気を冷却する改良タイプも販売されている。これは間接的に電気冷蔵庫によって空気を冷やしていることに相当し、エネルギー効率の面ではやや疑問が残る。

変わった使い方

冷風扇は事実上加湿器と同様であるため、乾燥しがちな冬季に用いても効果的である。実際、水冷式冷風機と称するものが、取り扱い企業により加湿器としても紹介される。特にスギ花粉症の時期などには、空気清浄効果も期待できる。

冷房用機器

関連項目

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