石灰窒素

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石灰窒素(せっかいちっそ)は、炭化カルシウム窒素の化合物である。植物および動物に対して毒性があるので取り扱いがやや難しいが、肥料農薬の2つの効果を狙える利点がある。

成分

主成分は、カルシウムシアナミド。副成分は石灰ケイ酸 など。微量のカーバイドも含むので特有の臭気がある。

歴史

1895年、ドイツのアドルフ・フランク(Dr.Adolf Frank)、ニコデム・カロー(Dr.Nikodem Caro)両博士が大気中の窒素とアルカリ土類カーバイドの結合に成功した事に始まる(フランク・カロー法)。原料であるカーバイド(カルシウムカーバイド)製造では生石灰コークスを大容量の電気により反応させるため、電気エネルギーの確保が重要であり、水力発電によるものが一般的である。

肥料としての側面

チッソ肥料であるが、石灰分も多く含まれている。 通常は元肥として利用する。施肥直後、まずカルシウムシアナミドが土中の水分と反応してシアナミドを生じる。このときにはシアナミドの毒性のために植物を植えることはできない。7~10日くらいでシアナミドは分解されてアンモニア性チッソに変化し、毒性が無くなって肥効を表すようになる。植物を植えるのはそれからである。

農薬としての側面

土に散布して混和することで生じるシアナミドの毒性により、線虫類や雑草の防除効果がある。水田においては、穴を掘ってイネの根に害を与えるザリガニを防除する効果もある。 カルシウムシアナミドは、土中で分解されて無害なアンモニア性チッソとなるため残留毒性の問題はない。 日本では1963年に新潟大学の黒井伊作氏の報告により、石灰窒素浸出液の処理が、ブドウの自発休眠を覚醒(休眠打破)できることが明らかにされた。

取り扱い上の注意点

ファイル:Chemical burn CaCN2.JPG
着衣の裾に石灰窒素が浸入したことによる化学熱傷
  • 皮膚に対して刺激性がある。場合によっては化学熱傷を起こす。皮膚に付着した場合は、充分に洗浄すること。
  • 眼に入ると強い刺激性があり危険である。眼に入った場合は、充分に水洗した後、眼科医を受診すること。
  • 散布直後に飲酒すると急性アルコール中毒を引き起こすことがある。これはシアナミドが肝臓でのアルコール代謝に影響を与え、有害なアセトアルデヒドを体内に蓄積させるからである。(ちなみにシアナミドは劇薬。医薬品としては抗酒剤として利用されている。悪酔いを引き起こし、断酒、節酒させようとするわけである。)
  • 上記のように危険性、毒性があるので、散布は防護マスク、防護メガネを着用し、肌を露出しない服装で行うべきである。

関連項目

外部リンク