ナツメ
ナツメ(棗、学名:Ziziphus jujuba)は、クロウメモドキ科の落葉高木である。和名は夏に入って芽が出ること(夏芽)に由来する[1]。
果実は乾燥させたり(干しなつめ)、菓子材料として食用にされ、また生薬としても用いられる。
原産地は中国から西アジアにかけてであり、日本への渡来は奈良時代以前とされている[1]。
ナツメヤシは単子葉植物であり遠縁の別種。果実が似ていることから。
英語ではjujube[2] または Chinese date(中国のナツメヤシ)という。
学名
- 1753年 - カール・フォン・リンネが Rhamnus zizyphus として記載。
- 1768年 - フィリップ・ミラーが Ziziphus jujuba[2]として記載。クロウメモドキ属 (Rhamnus) から分離したので、新しい属名としてリンネによる種小名を属名に昇格(ただしおそらくは何らかの間違いで1文字変わった)させ、トートニム(属名と種小名を同じにすること)は植物命名では認められないため新たに種小名をつけた。
- 1882年 - ヘルマン・カルステンが Ziziphus zizyphus として記載。Ziziphus と zizyphus は1文字違うのでトートニムにはならず、リンネのつけた種小名が引き続き有効であることを指摘した。
特徴
葉は互生し、落葉樹らしからぬ光沢があり、3脈が目立つ。花は淡緑色で小さく目立たない。果実は核果で長さ2cmほどの卵型、熟すと赤黒くなり次第に乾燥してしわができる(英語名のとおりナツメヤシの果実に似る)。核には2個の種子を含む。
同属は多く熱帯から亜熱帯に分布し、ナツメ以外にも食用にされるものはあるが、ナツメが最も寒さに強い。
中国北部原産で非常に古くから栽培されてきた。
利用
木材としては、硬く、使い込むことで色艶が増す事から、高級工芸品(茶入れ、器具、仏具、家具)等に使われている。その他、バイオリンのフィッティング(ペグ、テイルピース、顎当て、エンドピン)にも使われている。 比重としては柘植と黒檀の中間程度。
食用
日本では、果実を砂糖と醤油で甘露煮にし、おかずとして食卓に並ぶ風習が、古くから飛騨地方のみで見受けられる。
韓国では、薬膳料理として日本でも知られるサムゲタンの材料に使われるほか、砂糖・蜂蜜と煮たものを「テチュ茶(ナツメ茶)」と称して飲用する。
欧米には19世紀に導入されキャンディ(当初はのど飴)の材料として使われるようになった。また葉に含まれる成分ジジフィンZiziphinは、舌で甘味を感じにくくさせる効果がある。
乾果の砂糖漬を高級の菓子として賞味する。
生薬
ナツメまたはその近縁植物の実を乾燥したものは大棗(たいそう)[3]、種子は酸棗仁(さんそうにん)と称する生薬である[4](日本薬局方においては大棗がナツメの実とされ[5]、酸棗仁がサネブトナツメの種子とされている[6]。)。
大棗には強壮作用・鎮静作用が有るとされる[3]。甘味があり、補性作用・降性作用がある。葛根湯、甘麦大棗湯などの漢方薬に配合されている[7]。生姜(しょうきょう)との組み合わせで、副作用の緩和などを目的に多数の漢方方剤に配合されている。
酸棗仁には鎮静作用・催眠作用が有るとされる[4]。酸味があり、補性作用・降性作用がある。酸棗仁湯に配合されている[8]。
その他
茶器にも「棗」があるが、これは形が棗に似るためである。
脚注
参考文献
テンプレート:Sister- ↑ 1.0 1.1 [公益社団法人日本薬学会 - ナツメ Zizyphus jujuba MILLER var. inermis REHDER(クロウメモドキ科)]より。
- ↑ 2.0 2.1 英語の一般名「jujube」と種小名「jujuba」のつづりが微妙に異なる。
- ↑ 3.0 3.1 大塚敬節、p.249。
- ↑ 4.0 4.1 大塚敬節、p.245。
- ↑ 第十五改正日本薬局方、p.1239
- ↑ 第十五改正日本薬局方、p.1220
- ↑ 大塚敬節、p.p.208-209。
- ↑ 大塚敬節、p.217。