長三和音
テンプレート:出典の明記 長三和音(ちょうさんわおん)とは、和音の一種である。西洋音楽における、最も重要な和音のひとつである。ポピュラー音楽では英語名のメイジャー・コード(慣例的にはメジャー・コード)とも呼ばれる。
目次
基本データ
各語での呼称
- テンプレート:Lang-en (メイジャー・トライアド)
- テンプレート:Lang-de (ドゥアーアコルト)
構成音
- 根音
- 長三度(M3)
- 完全五度(P5)
の3音から構成される三和音である。
和音記号
和音記号の種類 | 表記法 | ||
基本形 | 第1転回形 | 第2転回形 | |
コードネーム表示 | X | X/Y または XonY |
X/Z または XonZ |
クラシック系での和音記号 | X | X6 | X46 |
ピッチクラス表示 | [047] |
ただし、根音をX, 第3音をY, 第5音をZとする。
周波数比
音律名 | 根音 : 第3音 : 第5音 | 数値 |
純正律 | 4 : 5 : 6 | 1 : 1.25 : 1.5 |
ピタゴラス音律 | <math>1 : \frac{81}{64} : \frac{3}{2}</math> | 1 : 1.265625 : 1.5 |
中全音律 | <math>1 : \frac{5}{4} : 5^{\frac{1}{4}} </math> | 1 : 1.25 : 1.494358 |
平均律 | <math>1 : 2^{\frac{4}{12}} : 2^{\frac{7}{12}}</math> | 1 : 1.259921 : 1.498307 |
主な用法
西洋音楽においては、短三和音と並んできわめて重要な位置を占める和音である。具体的な用法としては以下のようなものがあげられる。
- 長調における I, IV, V
- 短調における III (♭III), IV, V, VI (♭VI), VII (♭VII)
転回
基本形
長三和音は、主に基本形(根音が低音)で用いられることが多い。これはポピュラー系では顕著である。
第1転回形
第1転回形(第3音が低音)は基本形とは異なった独特な浮遊感を持った響きから、クラシック系では愛用されている。この場合、バス以外に第3音を含むと響きが厚ぼったくなってしまうため、避けるべきとされている。とくに第3音が導音となる場合は、第3音の重複は禁忌である。 ただしポピュラー系で第1転回形(ベースが第3音)が使用される場合にはこのことはあまり気にされていないし、とくに気にする必要もない。
第2転回形
第2転回形(第5音が低音)は響きが不安定である。このため、基本形、第1転回形のような用法ではなく、偶成和音的な用法、あるいは不安定であることを狙った用法に用いられることが大半である。
最も頻繁に用いられるのは、偶成和音としての用法のひとつである、
- C/G - G7 - C
という倚和音としての用法である。そのほか、
- C - G/D - C/E
という経過和音としての用法もある。
付加音、テンション
ポピュラー系では、ジャンルやスタイルによっては長三和音は響きが単純なので、第6音、第7音を付加して、X6、XM7(X△)などの形で使用することがある。そのような場合には、単にCと書いた場合には、普通C6 か CM7のことをあらわす。長三和音は 9、#9、#11、13 をテンションとして持ち、これを付加することもある。また、第3音を第4音と交換したXsus4もよく使用される。
長三和音の正当性
長三和音は倍音列を根拠として正当化されている。
まず、ハ長調の和音(すなわちCの和音)を考えてみる。この和音の構成音は、ハホト(C,E,G)である。ここで、この図によれば、EはCの第5倍音、GはCの第3倍音である。つまり、Cの和音は、C音上の低次倍音のみから構成されていることがわかる。そして低次倍音のみから構成されていることによって、Cの和音は非常に澄んだ快い響きが得られるのである。これは、長三和音が西洋音楽の中心的和音として確立されるにいたった、音響的な根拠とされている。
また、それぞれの音の音程に着目してみると、長三和音は
- 長三度(短六度)
- 短三度(長六度)
- 完全五度(完全四度)
という音程から構成されていることがわかるが、これらはすべて協和音程である。音楽史的に見れば、伝統的な対位法ではこれらの音程しか許されていなかったため、必然的にこれらの音程を積み重ねた和音、すなわち、長三和音とその第1転回形[1]が頻繁に使用されることとなり、これも長三和音が重要な和音として普及した一因であると思われる。とくに対位法において低音の完全四度が禁忌とされた[2]ことは、長三度と完全五度が最も重要な協和音程と認識されることにつながり、長三和音の普及に非常に大きな貢献をしたと考えられる。(←修正求む)