マンマシンインタフェース
マンマシンインタフェース(man machine interface)とは、人間と機械の間で情報のやりとりを行う際に情報伝達の仲介を行う機器やコンピュータプログラムの総称である。
代表的なマンマシンインタフェース
- 電気機器
- コンピュータ
概要
マンマシンインタフェースは、機械と人間の間で、人間の要求を機械に、あるいは機械の状態を人間に理解させるために伝達する手段を、多くの場合一定の思想の下、設計し実現された、または実現を図るものである。
人間側からは「操作」として機械に指令を出す際、人間の行う特定の行為を機械が検出できれば指令伝達は達成される。その手段を設計するのがマンマシンインタフェースの、”マンからマシン”側。 機械がその状態を人間に通知するのに人間の五感のいずれかあるいは複数に訴え、人間の感覚器でそれを検出できるようにする設計が”マシンからマン”側。 これらを総称してマンマシンインタフェースとしている。
マンマシンインタフェースはコンピュータで主に用いられる用語であるが、機械と人間の接点として一般でも用いられる。 マンマシンインタフェースが定義されるとき、必ず積極性あるいは能動性を備えたものである。つまり「人間がAの指示(たとえば電源を入れる)のためにBの操作(電源のボタンを押す)をする」ことはAの積極性があり、「機械がCの状態を表す(たとえば電源が入っていることを通知する)ため、Dの現象を起こす(電源ランプを点灯する)」のも機械は能動的にDの現象を起こしている。 積極性あるいは能動性の伴わないものはマンマシンインタフェースとして定義されない。機械にとっては同じ現象でも、たとえば「指紋センサーに付いた指紋を読み取る」はマンマシンインタフェースとして定義できるが、「電源スイッチに指紋が残る」ことは事象としては発生してもマンマシンインタフェースではない。後者は指紋を読み取る積極性も、指紋が残ったことで起こる能動性もないからである。
機械の状態がすべてマンマシンインタフェースに含まれるわけではなく、たとえば「故障したらヒューズが切れる」はマンマシンインタフェースではない。ヒューズが切れて動作しないことで異常発生を人間は推測できるが、機械は単に火災等のさらに深刻な事態から保護しているだけで故障を積極的に人間に通知しているわけではない。しかしヒューズが切れたことを何らかの形で通知する方法を持っているならそれはマンマシンインタフェースとできる。(たとえばヒューズが操作面に露出しており、人がそれを容易に見て取れ、操作者に見て取る積極性を要求している場合など)
マンマシンインタフェースの設計は、人間にとって「指示可能で、理解可能で、効率的で、標準化されている」ことが主眼とされる。 機械にとっては「物理現象として機械に影響できる」が実現されなければならない。
似た概念に「ユーザーインタフェース」があるが、ユーザーインタフェースは人間を中心に据えた概念で、マンマシンインタフェースは機械と人間をともに考えた中立的なものである。 境界を設けるならマンマシンインタフェースはハードウェアにより近い概念とも言え、マンマシンインタフェースは「手段」を定義し、ユーザーインタフェースは「表現」を定義するとして差し支えない。 たとえば「エラーは表示画面に赤文字で表示する」という要件があるとき、マンマシンインタフェースとしては「表示画面が赤文字を表示できる能力」が定義され、ユーザーインタフェースでは「人間が気づきやすくするため赤文字で表現する」ことが定義される。いずれの概念でも、人間と機械の相互関係を表すものであり切り離したものとはできず、以下本稿においては双方を含めたものとしている。
コンピュータプログラム
コンピュータのプログラムが、①人間の指示を受け、②処理し、③結果を人間に知らせる。の構成を取る場合、このうち①と③の両方をマンマシンインタフェースとしている。 マンマシンインタフェースは、コンピュータプログラム全体のうち人間と関わる部分の処理機能の名称または実現するサブシステムの名称として用いられ、一般的には「マンマシンインタフェース」とは呼ばれず、「マンマシンのバグ」、「マンマシン部」など略された表現がされることが多い。
指示可能
電話機において、特定の相手と通話するために電話機に働きかける方法として、
- 相手の電話機が番号によって特定されるという仕組みが設計され、
- 掛ける相手を番号によって指示するため、
- 番号を交換手に伝える。
- 番号の書かれたダイヤルを何度か回す。
- 番号の書かれたスイッチを何度か押す。
- 電話機に登録済みの相手の番号を別の短い操作で示す。
- 電話機に登録済みの相手の名前を電話機に話す。
- 番号を電話機に向かって話す。
- 電話機のもつカメラに番号を示す数字を見せる。
などの操作が考えられる。いずれも人間にとって容易に指示可能である。 他にも多数の方式を設けることもできるが、以前の方法より同じか容易に行えることが目的に設計され、機能全体として容易で有効に機能する設計が良いマンマシンインタフェースである。 手の不自由な人の利用を想定し「番号を電話機に向かって話す」ことで電話が掛けられるなら良い設計である。しかし「番号を電話機に向かって話す」機能を呼び出すためにスイッチ操作が伴うならこれは一貫した思想を伴わない悪い設計である。
理解可能
電話機は電話が掛かってきたことを人間に通知するため、
- 決められた音を鳴らす。
- 振動する。
- 光る。
- 相手の番号が表示される。
- 相手の名前が表示される。
などの現象を示して人間に着信を通知することができる。これらは「電話機が特定の状態を示せば電話が掛かって来ている」と人間があらかじめ理解しておくことで、電話が掛かってきたことがわかる。 もしこれが
- 着信ごとに電話機の内蔵時計が1秒遅れる。
- 電話機の温度が2℃上昇する。
- 表示パネルの色が紫色から、それよりやや薄い紫色に変化する。
などで通知する設計であれば、常時非常に注意深く観察すれば着信の判定はできることもあろうが、理解可能ではない。
効率的
機械は省力化の達成を目標とするため、容易に操作できることは重要である。 より効率化を目指して変化したマンマシンインタフェースの事例として、切符を投入する自動改札機からカードをかざす自動改札機への変化やURLの文字列入力から2Dコードの撮影への変化などが挙げられる。これらは効率化を主眼にシステムそしてマンマシンインタフェースが改良された結果とできる。
たとえば電話機に電話番号を指示するため、「相手番号を表す残高が示されている預金通帳を電話機に挿入する」ことも設計としては成立する。あるいは一酸化炭素ガスを機械に検出させることで映像の再生が始まる録画再生装置を設計をすることもできるが、このような設計は、指示は不可能ではなくても、容易ではなく、効率的でもない。しかし意図をもってこれらをマンマシンインタフェースとして設計することは可能である。
効率的でないが意味のある設計の例
- セキュリティ。核弾頭ミサイル発射において「2人の人間が位置の離れたキーを同時に回す」などの設計は効率的ではないが、誤操作を防ぐマンマシンインタフェースとしては有効である。
- フールプルーフ。拳銃の弾丸は引き金を引くことで発射されるが、実際には安全装置をあらかじめ解除しなければならない。安全装置の解除は拳銃の操作をよく理解している者でないとできないマンマシンインタフェースである。
- 感情。死刑の執行において数名が執行ボタンを同時に押し、誰の操作で実際に執行されたのか分からなくなっている設計は効率的ではないが人間の感情を考慮したマンマシンインタフェースである。
標準化
同一の目的のため設計されるマンマシンインタフェースは機械が異なっていても統一されていることが人間にとって望ましい。
以下、標準化が達成されている例である。
- キーボードの配列はどのメーカーのコンピュータでもほぼ同じである。
- レコーダーは赤色で示されるスイッチを操作すれば録音・録画が始まる。
- 銀行ATMの操作は異なる銀行でも銀行ごとの操作学習を要せず行える。
- テレビのリモコンで音量調整などの基本的な操作はメーカーが異なっても共通である。
- 日本において、体温計の数値は自然に読み取れば摂氏として読み取れる。
これらはマンマシンインタフェースが標準化されていることで特に理解するための努力をしなくても指示等が可能な例である。
標準化の重要性は、たとえば自動車の操作において、右に回るために行う指令が、メーカーAの自動車ではハンドルを右に回し、メーカーBの自動車ではハンドルを左に回すとなっていても設計としてはいずれも有効である。しかし双方の自動車を運転する機会のある人間は混乱し、正常な運転を行うことができず良いマンマシンインタフェースとはいえない。 実際にこのようなことは建設機械では存在[1]し、操作員が誤操作する場合がある。