シェリー (ワイン)
シェリー(テンプレート:Lang-es-short: テンプレート:Pronounced、テンプレート:Lang-en-short)は、スペイン南部アンダルシア地方カディス県の町ヘレス周辺の三角地帯(エル・プエルト・デ・サンタ・マリーア、サンルーカル・デ・バラメーダ、ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ)とその周辺認定地域だけで作られる強化ワインである。それ以外の地域で作っても、1935年以降は原産地呼称統制法(認定は1933年)によって世界商標会議の加盟国は「シェリー」という名を使用することはできない。(世界商標会議非加盟国ではシェリーと呼んでいることもある。)
ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ(Jerez)はかつてXerez(シェレス)と呼ばれており、英語では「シェリー」と呼ばれるようになった。
スペインではシェリーと言っても伝わらないこともあるので、ビーノ・デ・ヘレス(Vino de Jerez)ヘレスのワインという言い方になる。(ヘレスだけでも通じる)
製造過程
シェリーは、チェリーリキュールや蒸留酒に勘違いされることがあるが、100%ブドウを原料とした白ワインである。 透明に近い黄色から琥珀色、茶褐色、黒い色をしたものまであるが、シェリーはどんな色をしていても白ワインに分類される。
原料となる白ブドウはパロミノ、ペドロ・ヒメネス、モスカテルの三種で、この地域独特の石灰分を多く含んだアルバリサと呼ばれる土で作られる。普通の白ワインと同様に、収穫されたブドウはワイン工場に運ばれる(甘口や極甘口を作るときは天日干しされレーズン状になってから処理されることもある)。
アルコール発酵によってアルコール度が11~12%になると、酵母の栄養分である糖分が少なくなり、アルコール発酵が終了する。
アルコール発酵の終わった白ワインの表面には、フロールと呼ばれるシェリー特有の酵母膜が現れ、これがシェリー特有の味を作っていく。 フロールとはスペイン語で「花」を意味し、その由来は形成された産膜酵母が白い花のように見えるから、または花が咲く春と秋に酵母の活動が活発化するから、という2つの説がある。
辛口タイプはビノ・ヘネロソと呼ばれ、熟成法によって「フィノ」と「オロロソ」に大別される。他にはマンサニージャ、アモンティリャード、パロコルタードがある。
モストと呼ばれるブドウ果汁はアルコール発酵後、試飲によって分けられ、やさしく繊細な味のものはフィノ用に、ボディのしっかりしたものはオロロソ用などにまわされる。
酒精強化時にフロールの成育限界(アルコール度数18%)を超えないように調整されたものがフィノ、超えるように調整されたものがオロロソとなる。
フロールによって表面を覆われたまま熟成される(生物学的熟成)フィノは酸素と遮断されるので薄い色調で繊細な味わいになる。 それに対し、オロロソはフロールをなくすことで酸素と触れる熟成(酸化熟成)をさせる。
色は琥珀色になり独特の芳香を持つようになる。
アモンティリャードはフィノとしての生物学的熟成を経験した後、アルコール添加によって18度以上に調整され、酸化熟成をしたタイプとなる。 フィノやマンサニージャ、アモンティリャードには、フロールに由来する酵母の、キレのあるスパイシーな香りが含まれるが、オロロソにはそれがない。その分残糖度がわずかに高く、味わいもどっしりとしたものになる。
極甘口タイプは、ビノ・ドゥルセ・ナトゥラルと呼ばれ、ペドロ・ヒメネス、モスカテルと言う2つのタイプがある。どちらも同名のブドウ品種をソレオ(天日干し)したものから作られる。
天日干しされ、レーズン状になったブドウから絞られる果汁は、非常に糖度が高く、酵母はほとんど活動できない。
発酵があまり進んでいない状態にアルコール添加をして樽に詰められ、熟成、瓶詰めされる。(樽熟成をしないフレッシュな状態で瓶詰めされることもある。)
上記の辛口タイプと極甘口タイプをブレンドして作られる甘口タイプは、ビノ・ヘネロソ・デ・リコールと呼ばれ、ミディアムやクリームといったタイプがある。それぞれ、ブレンドされるシェリーの組み合わせによってタイプ分けされる。
例
- アモンティリャード+ペドロ・ヒメネス→ミディアム
- オロロソ+ペドロ・ヒメネス→クリーム
- フィノ+MCR(濃縮葡萄果汁)→ペールクリーム
など
シェリーの熟成は、ボデガと呼ばれる貯蔵熟成庫(ボデガという言葉はワインメーカー自体、個人のワインセラー、酒屋にも使われる)で行われる。
樽に移されたシェリーは「ソレラ・システム」という独特の方法で熟成される。段々に詰まれた樽から出荷するときには、一番古い樽から取り出し、減った分をより新しい樽から補充する。決して一度に大量に抜いたりはせず、少しずつ取り出され、補充されるため、味は概ね一定となる。
一番古い樽には焼き鳥屋のたれと同様に、かなり古いものが少量混じっていることになる。最終出荷樽をソレラといい、熟成途上樽をクリアデラという。 熟成期間は最低でも3年、長いものでは100年以上に及ぶこともある非常に長命なワインである。ちなみに日本の沖縄県の泡盛でも、古酒を作る際に同様の方法が取られている。
シェリーは他のワインと違って、どこの土地のブドウであるかよりも、「どこで」、「どのように」熟成されたかのほうが重要視される。辛口タイプのフィノとマンサニージャは、ほとんど同じ製法であるにもかかわらず、熟成された土地の違いで区別される。
- マンサニージャ
細かい製造法・熟成法の違いによって、上記の他にも約20種類の製法、1000種類ものラベルがあり、非常に多彩な味わいをもつワインである。
日本人に一番なじみがあるのは辛口のフィノタイプとされる。ティオペペが特に有名。
シェリーのソムリエにあたる人をベネンシアドールという。 樽の中のシェリーをグラスに注ぐために使用する長い柄杓のような道具をベネンシアという。 ベネンシアを使って、高い位置から曲芸のようにグラスに注ぐ。 本来はシェリーを作る職人たちが、熟成中のシェリーの状態をチェックするときに使うためのものであるが、現在では結婚式やパーティーでベネンシアのサービスをしたり、シェリーのプロモーションをするときにも使われている。
主なシェリーのタイプ
- 基本的なタイプ
- フィノ
- アモンティリャード
- オロロソ
- ミディアム・アモンティリャード
- クリーム
- ペドロ・ヒメネス
- マンサニージャ
- モスカテル
- 希少価値の高いタイプ
- フィノ・アモンティリャード
- アモンティリャード・フィノ
- パロ・コルタード
- ドス・コルタードス
- トレス・コルタードス
- マンサニージャ・パサダ
- マンサニージャ・アモンティリャーダ
- アモンティリャード・デ・サンルーカル
- ミルク
- ブラウン
- イースト・インディア
- 非伝統的なタイプ
- ミディアム
- ゴールデン ……(注)名称は古い
- ペール・クリーム
産地と有名メーカー
- ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ
- ゴンサレス・ビアス社
- ARバルデスピノ社
- ドメク社
- ガルベイ社
- サンデマン社
- クロフト社
- エル・プエルト・デ・サンタ・マリーア
- オズボーン社
- カバジェーロ社
- サンルーカル・デ・バラメーダ
- イダルゴ・ラ・ヒターナ社
- バルバディージョ社
- アルグエソ社