アボガドロ定数
アボガドロ定数(アボガドロていすう、テンプレート:Lang-en )とは、物質量 1 mol とそれを構成する粒子(分子、原子、イオンなど)の個数との対応を示す比例定数で、単位は mol−1 である。イタリア出身の化学者、アメデオ・アヴォガドロにちなんで名付けられており、記号 テンプレート:Math で表す。以前はアボガドロ数(アボガドロすう、テンプレート:Lang-en-short )と呼ばれたが、1969年のIUPAC総会でアボガドロ定数に名称が変更された。
なお、アボガドロ定数に関連し、時に混同される数として、0 ℃, 1 atm の気体 1 cm3 に含まれる分子の数、ロシュミット数(テンプレート:Lang-en-short )がある。
定義と数値
アボガドロ定数は、ある物質 1 mol の中に含まれている構成要素の総数を意味し、12C 12 g の中に含まれている原子の総数で定義される。
現在の 2010CODATA推奨値は テンプレート:Math である[1]。
アボガドロ定数の測定の仕方としては初期のものとして、ヨハン・ロシュミット (テンプレート:De) による気体の分子数の測定(最初の測定、1865年)や、ブラウン運動から求められているが、現在では以下の方法が用いられている。
- ファラデー定数と素電荷との比から求める。
- プロトン(陽子)の核磁気回転などから求める。
- X線回折と結晶の密度から求める。
- X線と光干渉計を組み合わせた実験による測定(単結晶の格子定数を精密に求める)。
以上のうち、最後の方法が他のものより若干精度的に優れている。問題は現実の結晶には不純物や欠陥があることで、これが格子定数の精度を落としている。いかに完全結晶に近い結晶を作成し、観測するかが求めるアボガドロ定数の精度の鍵となっている[2][3]。
現在、もっとも不純物が少なく、且つ欠陥も少ない結晶は単結晶シリコンである。真球度 50 nm の単結晶シリコン製の密度標準原器をX線干渉計で計測することで 200 ppm のオーダーで格子定数が決定でき、この方法を用いると 10−8 の精度でアボガドロ定数が決定できる[4]。 この方法により、測定された値、テンプレート:Val が2011年1月に発表された[5]。将来的には、この方法で質量(キログラム)を定義することができると考えられている。
質量の基準
テンプレート:See also アボガドロ定数は質量の単位にとってかわる可能性がある。従来は質量原器(国際キログラム原器)が質量の単位キログラムの基準とされてきたが、アボガドロ定数の精度を向上させることで、質量原器にかわって新たなキログラムの基準として用いることも可能となるので、その研究が進められている。
現状ではフランスの国際度量衡局に保管されている白金・イリジウム合金製の質量原器が 1 kg と定義されているが、埃の堆積や風化、災害による破損などによる質量変化の懸念があるので、普遍定数を基準とすることができれば、そのような心配は払拭される。
この候補に挙がっているのがアボガドロ定数とプランク定数である[6]。
現在提案されている新しい SI の定義では、アボガドロ定数およびプランク定数の値は定義値とされる[7]。質量単位の定義にはプランク定数が用いられ、物質量単位の定義にはアボガドロ定数が用いられるようになった。また、現行の物質量単位の定義は質量単位の定義に依存していたが、新しい定義では両者は独立に定義されることとなる。