脚フェティシズム
脚(足)フェティシズム(あしフェティシズム、テンプレート:Lang-en-short)とは、パートナーの脚部に非常に強い誘惑を覚えるフェティシズムの一種である。脚フェティシズムではパートナーの脚を愛撫し、舐め、接吻することを愛好する。特に男性が女性の脚・足に特別な性的嗜好を有する場合を言う場合が多いが、脚フェティシズムは異性愛者にも同性愛者にも関係がある。
大部分のフェティシズムがそうであるように、この誘惑は心理学的にはリビドーに関連付けられる。ジークムント・フロイトはこのタイプのフェティシズムは特に男性に多く見出されるという仮説を立てた。場合によっては、脚フェティシズムは完全に排他的なもので、脚がパートナーの生殖器を完全に置き換えてしまい得る[1]。
同じ脚・足フェチであっても興奮する部位は異なることがある。大まかに分類すると以下のように分かれる。
- 腰からつま先まで
- 股下からかかとまで
- かかとからつま先まで
- 足の裏
他にも膝の裏(膕)限定であったりかなり細分化される。
概要
脚部全体を性的対象とする嗜好は一般的であり、珍しいものとはいえない。脚線美という言葉が存在したり、ミニスカートが周期的に流行したりすることを鑑みれば、脚部は充分に性的アピールを行なえる部位であると言える。ただ好みとしては「足先」や「ふくらはぎ」に特に執着するような、本来のフェティシズムに近い例もみられる。
フェティシズムとは性的対象の歪曲を指すため、脚部フェティシズムであれば美しい脚を見ながらの自慰行為や脚への射精、脚による愛撫(俗称:足コキ)による射精などで満足をし、性行為にいたらない程度の性的倒錯を意味する。
フェチと略称された場合に単なる「好き」「好み」という意味合いに誤用されることが多いために脚フェチは一般的と解釈されることが多いが、それは本来の意味とは乖離している。前述の視覚刺激の他に靴で蒸れた臭いを嗅ぐ、その足を舐める、素足を触ると言った行為で性的に満足し、本来の性行為に興味を示さない状況が持続した場合は、足部に対するフェティシストであると診断される。
足はペニスの象徴とも言われ、そういう風に見立ててプライドを保とうとする心理もあるらしい。足はもともと地面を踏みつける身体部位であり、足で踏む行為には社会的なステータスの下落を意味することが多い。足で何かを操作することは失礼にあたる。そのためマゾヒズムと密接に結びついたケースでは強制的に足を舐めさせられる、臭いを嗅がされる、踏まれるといった行為に強い性的興奮を覚えることがあるが、この場合マゾヒズムとフェティシズムとの切り分けが困難であり正確な性的対象の特定が難しい。
脚フェティシズムの一種として「生脚(生足)フェティシズム」がある。
また、ハイヒールやストッキング、スニーカーといった装身物に特化したフェティシズムは靴フェティシズムやフェティシズム的服装倒錯症など他のフェティシズムに分類される。
心理学的側面
1914年5月11日に、フロイトは「脚フェティシズムの症例」を発表した[1]。フロイトはフェティシズムの対象に男根的な象徴体系を位置付けた。その理論によると、他の全ての部分を排除して身体の特定の部分(この場合は脚)に欲望を置き換えることはその人が幼年期に脚を性器に結び付けるように条件付けられたことを物語っているのだという(フェティシズムの項目を参照)。1927年の論文では、フロイトは娘たちの足を縛ることで足をエロティックな誘惑の道具にするという中国の慣習(纏足)に触れている。フロイトにとって、ここで重要なのは女性の足を対象とした集団的なフェティシズムの現象であった。フロイトはそこに去勢恐怖の社交化を見出した[1]。ここでの脚フェティシズムは女性または男性の脚に対する男性のそれに当て嵌まる。脚フェティシズムでは脚の匂いを嗅ぐ強い欲求を覚え、それは概して快いものと感じられ、性的興奮を覚えるにまで至り、さらにはパートナーの踵や足指や爪先を舐めたいという欲望を覚える。
映画・文学
ルイス・ブニュエル(特に1930年の『黄金時代』や1963年の『小間使の日記』)のように多くの映画監督が女性の脚への幻惑を明らかにしている。クエンティン・タランティーノの映画にもしばしば脚フェティシズムの暗示がある。日本の小説家の谷崎潤一郎(『富美子の足』『瘋癲老人日記』『鍵』)、松浦理英子(『親指Pの修行時代』『ナチュラル・ウーマン』)、小川洋子(『妊娠カレンダー』『ホテル・アイリス』)などもいるほか、これに密接な関係のある性的衝動を現したレーオポルト・フォン・ザッハー=マゾッホ(『毛皮を着たヴィーナス』)など、枚挙に暇がない。
脚フェティシズムはリヒャルト・フォン・クラフト=エビング博士の『性的精神病理』(19世紀末)にも同性愛、フェラチオ、クンニリングス、啜尿症(飲尿)、糞尿愛好症、獣姦、サディズム、マゾヒズムなどと並ぶ性的逸脱として言及されている。