変形菌門 (旧)
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変形菌門(へんけいきんもん)は、現在では狭義の変形菌のみを含む分類群であるが、以前は類似の生物をすべてこれに含めていた。ここではそれらについて記す。
かつての変形菌門は、変形菌が菌類であるとの判断から、五界説では菌界にこれを含めた。そしてそこには変形菌と同様に、アメーバ運動で移動し、アメーバのように微生物を捕食するなどして生活し、生活環のある時期には胞子を形成する生物がすべて含められていた。現在ではこれらは菌類とは類縁が近いと考えられることはなく、それらのほとんどが独立した群であると見なされている。したがって、現在ではこのような分類群には意味はないが、概観する意味でここに簡単に述べる。
含まれていた生物群
- 変形菌類(真正粘菌)
- いわゆる変形菌である。栄養体は多核、網状の変形体で、胞子形成時には細かく分かれて多数の小さな子実体を作る。
- 細胞性粘菌
- 単細胞で小型のアメーバで生活し、それらが多数集合して子実体を形成する。タマホコリカビ類とアクラシス類の2つがある。
- 原生粘菌(プロトステリウム類)
- 変形菌のような変形体を形成するがごく小型。胞子は管状の柄の先に1つ外生する。
- ラビリンチュラ類
- 主として海産。網状の分泌物の上を単細胞の細胞体が滑るように動く。
- ネコブカビ類
- 主として植物細胞内に寄生。細胞内でアメーバ運動する変形体を形成。やがて胞子塊に変形する。
上記の内で、原生粘菌は変形菌類の中でツノホコリとの関係が論議されている。また、ラビリンチュラ類は卵菌などとともにクロミスタ界に含まれる。それ以外のものは、系統関係について定説がない。
参考文献
- ジョン・ウェブスター/椿啓介、三浦宏一郎、山本昌木訳 『ウェブスター菌類概論』, (1985), 講談社