バルバス・バウ
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バルバス・バウ(テンプレート:Lang-en)とは、船の造波抵抗を打ち消すために、喫水線下の船首に設けた球状の突起[1]。球状船首(きゅうじょうせんしゅ)[1]、船首バルブ[2]ともいう。
歴史
テンプレート:節stub 1911年、アメリカ海軍の造船官であったデヴィット・W・テーラー少将が考案、レキシントン級航空母艦に採用した。その後、独客船ブレーメン、仏客船ノルマンディーなど、主に速度と燃費の良さの両立が要求される大型の外洋船、特に客船主体に普及していった。
働き
- 造波抵抗
- 船首では水面を掻き分けて進む時に波が生じる。この波は引き波と呼ばれ、引き波を生み出すためのエネルギー損失を船が推進する時の抵抗と見做せる。この抵抗が造波抵抗である。これを小さくすることは、航行速度を高め燃費を改善する重要な要素である。
- 原理
- バルバス・バウの水面下の前方に突き出した構造によって、水面での船首が水を掻き分けることにより前方にあらかじめ波を生じる。このため、水面で船首が水を掻き分けて生じる波は、バルバス・バウによって生じた波とは逆位相となり、それぞれの山と谷が打ち消しあうことで波を小さくする。
- 結果として造波抵抗を最小化して燃料効率や速度の向上を図ることができ、さまざまな船に有効である。
- 逆効果
- 船体がバルバス・バウの設計どおりの喫水であれば高い造波抵抗低減の効果が期待できるが、積荷の増減などで喫水高が大きく変わり、特に空荷で船体が浮かび過ぎていてバルバス・バウが水面上に出ている場合には、従来型船首と比べて逆効果となる。また、フルード数が0.5を越えるような船では効果はほとんどなくなる[3]。
名称
「Bulbous」は「球根状の」、「Bow」は「船首」という意味である。喫水線下の船首の突起という点でラムと共通するが、目的・効果が異なる。
戦艦大和
旧日本海軍の大和型戦艦が早くから採用していたことで有名である[1]。なお、旧日本海軍で最初にバルバス・バウを採用したのは翔鶴型航空母艦である。
軍艦のソナードーム
軍艦ではバルバス・バウの内部にソナードームを備えた艦艇が多数存在する。主に敵潜水艦の位置や動きを把握するために使用される軍用ソナーを配置する場所として、船首部水中にあって大きな球状のバルバス・バウはうってつけであるためである。
ソナードームの内部は、水中振動波(水中音波)の振動子と受信センサーが球状に多数取り付けられ、間隙は水などで満たされている。バルバス・バウの外面カバーは繊維強化プラスチックか合成ゴムによって内部を保護するとともにセンサーの感度を落とさないように配慮されている。
バルバスバウマーク
バルバス・バウを持っている船の船首にはバルバスバウマークを掲示し、船首付近を通過する船が乗り上げないよう注意を促している。[4]
画像
- Brosen bow ship.jpg
バルバス・バウをそなえた船首
- Bow at 23 knots.jpg
バルバス・バウによる波
出典
- 池田良穂著 「船の科学」 BLUE BACKS 講談社 ISBN 978-4-06-257579-9