新株予約権
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新株予約権(しんかぶよやくけん)とは、株式会社に対して行使することにより、当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利である。用途に応じてワラント (テンプレート:En) とも呼ばれる。
日本では会社法第2条で規定されている。会社法について以下では、条数のみ記載する。
目次
用途
新株予約権制度は、以下の用途で用いられることが多い。
新株予約権の機能は様々であるが、大別すると上記四種になる。
1は、本来制度創設時に予定されていた用途である。
2は、有償で新株予約権を発行した場合
- ①株式発行とは違い、発行しても行使されるまでは資本金の額が増加しない
- ②金融機関からの融資とは違い、負債が増えない
と言う性質を利用した用途である。直接金融(金融機関を介さない資金調達)の方法として、利用される。
3の具体例は、新株予約権付社債・転換社債型新株予約権付社債(CB)等である。 4は、M&Aを参照。
概念の沿革
従来、新株予約権は、新株引受権と呼ばれていた。しかし、この語は、「新株発行の際に優先的に新株を引き受ける権利」と「会社に対して行使することにより有償で新株又は自己株式の交付を受けられる権利」の、両方の意味を持っていた。そのため、平成13年商法改正時に、この概念を分離し、前者を新株引受権、後者を新株予約権と定義した。
また、新株引受権は、行使をする者を限定しない概念であったが、平成17年の会社法制定に伴い、新株引受権の行使権者は「株主」に制限され、用語自体は破棄された。これにより、募集株式の発行の際に、第三者が有利発行を受ける権利については、名称そのものが存在しない事になった。
更に、平成13年改正までの新株予約権は、新株引受権付社債のように社債に附され、分離する事が不可能であったが、この改正により、単独発行が認められるようになった。そのため、新株予約権のみを売買することが、可能となった。しかし、転換社債型新株予約権付社債(CB)の様に、新株予約権付社債の形式で発行された新株予約権は、なお従前の通り、分離処分は出来ず、社債部分の金額をもって、株式に転換する権利を持つとされた。
上記の様な概念の整理に至ったのは、平成7年の商法特例法制定によって、特定の会社に先行導入されたストックオプション制度(それ以前に会社実務においては、擬似ストックオプションという制度が普及していた)が、平成9年の商法改正により、本格的に導入された事とも関連する。平成9年当初のストックオプション制度は、自己株式方式と株式引受権方式とがあったが、新株引受権が定款規定が必要であったり、導入に付き、株主総会で正当な理由があることを述べなければならなかったりと、導入の障害になる規定が多かった。そこで、平成13年商法改正で、新株予約権の制度を創設し、ストックオプションとは、株主以外の者への新株予約権の無償での有利発行である、と整理して、自己株式方式と株式引受権方式によるストックオプションの規定を削除した。
新株予約権の消長及び性質
新株予約権が発生する時
- 募集新株予約権の発行時。
- 取得対価が当該会社の新株予約権である時の取得請求権又は取得条項付(種類)株式ないしは全部取得条項付種類株式の取得時。
- 対価が新株予約権とされている吸収型再編。
新株予約権が消滅する時
新株予約権の性質
- 株式や社債とは、別個独立に発行可能。
- 募集新株予約権の割当てを受けた者は、割当日に新株予約権者になる(募集株式の発行の場合は、払込期日に株主の地位を得る。)。
- 募集新株予約権の割当てを受けたにも関わらず、払込期日までに払込みをしなかった者は、失権する。
- 株式と同じく、譲渡制限を附す事が出来る(但し、株式の場合とは違い、定款に定める必要はなく、発行決議時にそう定めていればよい。)。
- 株式と同様に、取得条項を附す事が出来る(但し、取得請求権を附す事が出来るとする規定は、存在しない。)。
- 新株予約権の行使より得られる株式の総数は、発行可能株式総数から発行済株式総数を控除した数を超えてはならない(但し、行使期間の初日を迎えていない新株予約権には、この規定は適用されない。)。
新株予約権の発行
新株予約権の募集
募集新株予約権の発行は、原則的に、募集株式の発行に関する条文を準用している。以下の4段階の手続を踏む。
- 発行決議 : 発行の承認及び募集事項の決定を行なう。その後、決定事項を株主など申し込みをしようとする者に通知する。
- 申込み : 株主又はそれ以外の者から申込みをうける。又は、総数引受契約の締結をする。
- 割当て : 新株予約権を申込んだ者は割当の時に新株予約権者になる。(但し、権利行使の時又は払込期日までに払い込まない場合、失権する。)
- 払い込み : 当該新株予約権の交付と引換えに金銭出資又は現物出資をする。(但し、払込みは、原則として新株予約権の行使の前日までに払い込めばよく、払込期日等を定めた時だけ、その期日ないしは期間内に払わなければならない。)
- 募集事項(238条1項各号)。
- 今回発行する新株予約権の内容(236条)と数
- 払込金額 (当該新株予約権一個と引換えに払込むべき金銭の額を言う。金銭の払込みが不要ならその旨を記す。)
- 払込期日 (但し、定めた時のみ。)
- 割当日
- 募集社債に関する事項 (当該予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合のみ。)
- 新株予約権買取請求の方法の別段の定め(上記5の場合で左記の様な別段の定めをした時のみ。)
- 株主総会の決議(309条2項6号)
- 特別決議が必要である。
- 募集事項の決定の委任(239条1項)
- 株主総会において、その決議によって、募集事項の決定を取締役又は、取締役会に委任することができる。
- 募集事項の決定機関につき、238条2項、240条(公開会社の場合)。
- 既存株主の新株予約権につき、241条。
新株予約権の割当て
- 申込みについて、242条。
- 割当てについて、243条。
- それらの特則について、244条。
- 新株予約権者となる日について、245条。
- 募集新株予約権に係る払込みについて、246条。
- 無償割当てにつき、277条から279条。
「募集新株予約権の発行をやめることの請求」
- 既存株主につき、差止め請求権が認められている(247条)。
- 発行が法令又は定款に違反する場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、募集新株予約権の発行をやめることを請求することができる(1項)。
新株予約権原簿
新株予約権の譲渡等
自己新株予約権の取得等
新株予約権の行使
- 280条から287条。
新株予約権証券
定められた行使期間内であれば、発行会社の株式を一定の行使価格で取得できる権利を持つ有価証券のこと。
無効の訴え
- 会社の組織に関する行為の無効の訴え(828条)
新株予約権の評価
資金調達における新株予約権を発行する企業は、発行における公正価値の根拠に対して、既存株主に対して説明責任を負うこと、また、訴訟リスクを回避するために、第三者機関に委託し、評価を行うのが一般的である。また、ストックオプションとしての新株予約権においても、会社法施行後、上場企業において費用計上が義務付けられたため、新株予約権の評価が必要となった。
また、プルータス・コンサルティングは新株予約権の評価手法において、市場の流動性や株式売却が市場へ与える影響度を考慮したモデルを初めて構築し、以後、評価手法のスタンダードとなった。
参考文献
- 新株予約権・種類株式の実務(第一法規) ISBN 978-4474022812
- 金融大学ホームページ
- ストックオプションブログ