公衆衛生大学院
公衆衛生大学院(こうしゅうえいせいだいがくいん、School of Public Health)は「組織された地域社会の努力を通して、疾病を予防し、生命を延長し、身体的、精神的機能の増進をはかる科学であり技術である」公衆衛生学分野を中心に展開する大学院である。
特に修了の際に公衆衛生修士号(マスター・オブ・パブリックヘルス、Master of Public Health、MPH)を与える大学院のことを示す。公衆衛生博士号(ドクター・オブ・フィロソフィー・イン・パブリックヘルス、Doctor of Public Health、DPH)、学術博士号(ドクター・オブ・フィロソフィー、Doctor of Philosophy、PhD)を与える課程を併設することもある。公衆衛生学の範囲は明確なものではないが、米国公衆衛生大学院協会は疫学、生物統計学、環境衛生学、行動科学・健康教育学、医療管理学を少なくとも含むことを公衆衛生大学院の認定基準としている。
入学者は医師、歯科医師、薬剤師、看護師などの医療職に限らず、法律、経営、メディア、心理など多様な職種から構成される。
設立の背景
日本においては公衆衛生学および衛生学は主に医学部医学科の一講座として存在しており、医師中心であり、また研究に重点を置いたものであった。しかしながら公衆衛生学の今日的課題の解決には医学のみならず、学際的な対応が必要であるとの認識から独立大学院・独立専攻として公衆衛生大学院を設立することが主張されてきた。
公衆衛生に限らず、多様な資格、経験を有する学生を各職業領域の専門家として育成するプロフェッショナルスクールは、経営管理、会計、法曹分野などでも検討が始まっていた。文部省大学審議会は平成10年10月「21世紀の大学像と今後の改革方策について」答申を取りまとめ、高度専門職業人養成に特化した実践的教育を行う新しい大学院の設置促進が取り上げられ、また平成11年4月には文部省21世紀医学・医療懇談会第4次報告「21世紀の命と健康を守る医療人の育成を目指して」において、公衆衛生分野の大学院修士課程の設置の答申が出された。
そして平成12年から始まった専門大学院制度において、京都大学大学院医学研究科に社会健康医学系専攻が、日本で初めての公衆衛生大学院として設置された[1]。
国立保健医療科学院と公衆衛生大学院
日本では旧厚生省所管の機関であった国立公衆衛生院が昭和13年3月29日より、公衆衛生技術者の養成訓練と公衆衛生に関する機関として活動を続けてきた。国立公衆衛生院は、現在、国立保健医療科学院に改組され、国立保健医療科学院の教育研修のうち専門課程を修了すると「Certified Public Health Professional (CPHP)」が与えられている。従来はMaster of Public Health (MPH)の称号を授与しWHOも国立保健医療科学院を「School of Public Health(公衆衛生大学院)」として紹介しているが、わが国の学制上、大学院でもなく省庁大学校にも該当しない。省庁大学校の修了者は大学評価・学位授与機構の学位授与事業により学校教育法に基づく学位が授与されるが、国立保健医療科学院は対象になっていない。一般国民に誤解を招かないよう、2009年度入学者より表記のように名称変更されている。
公衆衛生大学院設置大学
2000年度開校
- 京都大学(大学院医学研究科社会健康医学系専攻)
2001年度開校
- 九州大学(医学系学府医療経営・管理学専攻)
2007年度開校
2008年度開校
- 長崎大学(大学院国際健康開発研究科国際健康開発専攻)
2011年度開校
- 帝京大学(大学院公衆衛生学研究科)