ビタミンB群
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ビタミンB群とは、水溶性ビタミンのうち、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビオチンの8種の総称で、ビタミンB複合体とも呼ばれる。発見当初ラットの発育に必須の単一の水溶性因子として知られていたが、後の研究で複数種の物質からなる混合物であることが突き止められた。ビタミンB群に含まれている8種の物質は、いずれも生体内において、補酵素として機能することが知られている。
ビタミン名 | 化合物名 | 補酵素型 | 備考 |
---|---|---|---|
ビタミンB1 | チアミン | チアミン二リン酸(TPP) | |
ビタミンB2 | リボフラビン | フラビンモノヌクレオチド(FMN)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD) | |
ナイアシン | ニコチン酸とニコチン酸アミド | ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチドリン酸 (NADP) | ビタミンB3 |
パントテン酸 | パントテン酸 | 補酵素A(CoA) | ビタミンB5 |
ビタミンB6 | ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン | ピリドキサシンリン酸(PNP)、ピリドキサールリン酸(PLP)、ピリドキサミンリン酸(PMP) | |
ビオチン | ビオチン | ビオチン | ビタミンB7 |
葉酸 | 葉酸 | テトラヒドロ葉酸(THF) | ビタミンB9 |
ビタミンB12 | シアノコバラミン | アデノシルコバラミン |
かつてビタミンBとされた化合物
参考までに、ビタミンB群の化合物として登録されたものの一覧を以下に示す。(英語版より転載) なお、番号は見つかった順番を示していない。
- ビタミンB-1 (チアミン)
- ビタミンB-2 (リボフラビン) ビタミンG
- ビタミンB-3 (ナイアシン) ビタミンPあるいはビタミンPP
- ビタミンB-4 (アデニン)
- ビタミンB-5 (パントテン酸)
- ビタミンB-6 (ピリドキシンおよびピリドキサミン)
- ビタミンB-7 (ビオチン) ビタミンH
- ビタミンB-7* 通常ビタミンIと呼ばれる
- ビタミンB-8 (アデニル酸)
- ビタミンB-9 (葉酸) ビタミンM
- ビタミンB-10 ビタミンR (葉酸と他のビタミンB化合物との混合物)
- ビタミンB-11 ビタミンS
- ビタミンB-12 (シアノコバラミン)
- ビタミンB-13 (ピリミジン-5-カルボン酸)
- ビタミンB-14 B-10とB-11の混合物
- ビタミンB-15 (パンガミン酸)
- ビタミンB-16 +葉酸=ビタミンU?
- ビタミンB-17 (アミグダリン; C6H5-CHO(CN)-Glc-β1-6-Glc)
- ビタミンB-22 アロエベラ抽出物の成分?
- ビタミンB-c (葉酸) ビタミンB-9
- ビタミンB-h (イノシトール)
- ビタミンB-t (L-カルニチン)
- ビタミンB-w (ビオチン) ビタミンB-7
- ビタミンB-x (パラアミノ安息香酸)
同一の物質が重複して登録されていたり、複数のビタミンの混合物であったり、あるいはビタミンではないものも含まれている。本当のビタミンB群化合物は、前述の8種のみである。
B群多数登録考察
ビタミンB群には平たく言えば水に溶けること(水溶性)と、炭水化物をエネルギーに変える手助けをするという2つの共通した働きがある。1910年(明治43年)鈴木梅太郎がオリザニン=ビタミンB1を発見したあと、化学者の間でビタミン発見の競争が沸き起こり 、前述のような共通した働きを持つものは、すべてB群とされてしまった結果B群が多く登録された。