転生
転生(てんせい, てんしょう)とは、死後に別の存在として生まれ変わること。肉体・記憶・人格などの同一性が保たれないことから復活と区別される。また一部の宗教では再生とも言われる。仏教では、特に輪廻と区別はされていない。また、再び生まれる、「再生」という語ではなく、再び存在する、「再有」という語を用いる。仏教では、魂の存在を認めていないため、輪廻における主体(アートマン)を想定する他の思想と区別するためである。転生する前の人生のことを前世、転生した後の人生のことを来世と言う。輪廻のように人間は動物を含めた広い範囲で転生すると主張する説と、人間は人間にしか転生しないという説がある。
一般には仏教を語る上でのみ触れられるが、仏教に固有の思想ではなく、釈迦以前の思想家にも見られ、インドのみならずギリシア古代の宗教思想にも認められる。インドでは六道輪廻にみられるような生まれ変わり(→輪廻)による苦から解脱することが目的とされた。現代の日本では、仏教における転生を、単に民衆を道徳へ導くための建前として語られたにすぎないとする者も多くいるが、過去の日本では、輪廻思想は仏教において前提とされる一般的な考え方であり、浄土教の源信などのように、転生を信じながら真摯な布教活動をした宗教家が多くいた。
目次
フィクションの中での転生
過去に生きていた人物が別人となって現代に現れるというのは魅力的なテーマであり、転生という概念を取り入れたフィクションは数多くある。その場合、記憶や能力の一部を受け継いでいることも多い。
研究例
転生についての研究は、前世研究と内容を同じくする。
イアン・スティーヴンソンによる調査
転生を扱った学術的研究の代表的な例としては、イアン・スティーヴンソンによる面接調査がある。スティーヴンソンは1961年から生まれ変わり事例の調査を始め,最終的に2000 例を超える「生まれ変わりを強く示唆する事例」を収集した。そして考察の結果、スティーヴンソンは最終的に,ある種の「生まれ変わり説」を受け入れている。テンプレート:See
前世療法研究
前世療法で用いられる退行催眠については、虚偽記憶を生み出すという批判もあるが、検証の結果「前世の記憶」である可能性が高い記憶が想起されたケースもある。 テンプレート:See
生まれ変わりの村
著作家の森田健が、中国に存在する「生まれ変わりの村」を取材した記録がある[1]。村民の記憶によれば、彼らのうち多くの者が肉体の死後、同じ村に生まれ変わるという。前世の記憶を持っているために、生まれながらにして複雑な大工仕事が出来たという男性の例や、性同一性障害に悩まされたという女性の例などが存在する。また、前世と今世では「私」というアイデンティティーは同一のまま保たれるが、温和さや残忍さといった性格は生まれる肉体により変化する、と複数の村人は語っている。
生まれ変わりが登場する作品
「Category:転生を題材とした作品」も参照のこと
その他
2007年9月に発行された条例により、中国では、転生を行う際に事前に政府への申請を行い、許可を得ることが必要となった。この条例は、高僧が転生を繰り返すとされるチベット仏教の管理を目的としていると見られている[2]。
脚注
- ↑ 森田健『生まれ変わりの村』河出書房
- ↑ 「中国政府、チベット高僧の転生に事前申請を要求」、AFPBB News、2007年8月4日。