ヨーダ
ヨーダ(Yoda)は、ジョージ・ルーカス監督の映画『スター・ウォーズ・シリーズ』に登場する架空の人物(エイリアン)である。性別は男性。
概要
身長わずか66cmのジェダイ・マスターで、銀河唯一の存在であるグランド・マスターの称号を持ち、生ける伝説と称される人物である。ジェダイ評議会の長老でありしわをたくわえた緑色の肌、質素な服と杖を持つ、老人の姿をしている。脚力は特別に発達しており、戦闘においては、ライトセーバーを手に、変幻自在に跳ねまわる体術(フォームIV「アタール/アタロ(Ataru)」に種族特有の運動能力を掛け合わせた発展型と思われる)を駆使する。その実力はジェダイの中でも屈指のものであり、ライトセーバーの腕、フォースの強さ共に史上最強と云われ、かつての弟子であるドゥークー伯爵や宿敵ダース・シディアスと肩を並べるほどである。フォースを操る力は晩年になっても衰えず、戦闘機を持ち上げて動かしている。
種族に関しては『エピソード1』でジェダイ評議員の一人として登場していたヤドルという女性のジェダイ・マスターがヨーダと同じ種族である事しか判明しておらず、彼らの出身地および出身種族名は今のところ公式には明かされていない。
映画内では高齢のため衰えた体力をカバーするためにフォースを自らに使うことでアクロバティックな動きを可能としている。また、体が小さいためライトセイバーも小型であり、色は緑。
ヨーダ級のジェダイ・マスターは、ライトセーバーを使わなくても十分に戦闘可能であるといわれている。実際、ドゥークー伯爵との決闘の時、ヨーダは数十年ぶりにライトセーバーを握ったとされている。
9世紀にわたる生涯のうち、800年以上をフォースの指導者として後進の育成に努め、主に年少のパダワン(弟子)の指導を行っていた。ジェダイ評議会の最長老として、誰よりも深い洞察力をもって、ジェダイをあるべき方向へ導いた。
主な弟子に、ドゥークー伯爵(ダース・ティラナス)、メイス・ウィンドゥ、キ=アディ=ムンディらがいる他オビ=ワン・ケノービは1対1の師弟関係は無いものの実質弟子のような扱いを受けている。
銀河共和国末期、予言にある「選ばれし者」の可能性を秘めた少年アナキン・スカイウォーカーと初めて対面したとき、ヨーダはこの少年がジェダイの訓練を開始するには歳を取りすぎているという決定を下す。ヨーダにはアナキンの曇った未来を予見できず、彼を訓練するには大きな危険が伴うと判断したのだ。しかし、ナブーの戦いにおけるアナキンの活躍を知った評議会は彼の訓練に賛成し、ヨーダも他の評議員の総意に押されて以前の決定を撤回した。結果として、この判断は銀河の歴史を闇が覆い尽す暗黒の時代へと変えてしまうことになったのだ。
銀河の平和に生涯のほとんどを捧げたヨーダだったが、シスの暗黒卿、ダース・シディアス(パルパティーン元老院最高議長)の野望を阻止することは出来なかった。パルパティーンがシスであることさえ、完全に突き止めることが出来なかったのである。ダース・ヴェイダーとなったアナキン・スカイウォーカーとクローン・トルーパーの反乱によってジェダイの大半が非業の死を遂げる中、チューバッカらの助けによって難を逃れたヨーダは、銀河帝国の皇帝となったシディアスと一騎打ちを挑む。一進一退の攻防が続くが、勝ち目が無いと悟ったヨーダはベイル・プレスター・オーガナの救援で辛くも逃げ延びるが、シディアスとヴェイダーによるジェダイ狩りから逃れるために、薄暗い未開のジャングルが広がる惑星ダゴバの湿地帯で隠遁生活を送ることを余儀なくされた。そして、皇帝によるジェダイの抹殺を目的とした混乱の中で、ヨーダに関する資料や記録は失われてしまった。やがて帝国に反旗を翻すべき瞬間が訪れるまで、わずかに生き残ったジェダイはその時代の到来を待つことになる。またその合間に、ヨーダとオビ=ワンは肉体を失ったクワイ=ガン・ジンから、新たなフォースの術を学ぶのだった。[1]
それから約20年、ヨーダがどのようにして長く孤独な隠遁生活を送っていたのかは全く分かっていない。だが、彼の役目はまだ終わりではなかった。アナキンの才能を受け継いだ息子、ルーク・スカイウォーカーがヨーダを訪ねてきたのだ。ヨーダは生涯の最後の務めとしてルークをジェダイとして鍛えることを決意する。しかし、ルークはあまり彼の助言を聞こうとせず、それどころか危機に陥る仲間を助けようとしてヨーダの制止も聞かず、修行を中断して飛び出してしまう。彼はアナキンもルークも一人前のジェダイに育てることはできなかったのだ。そしてルークがダゴバに帰った頃にはヨーダに寿命が来ていた。病によって衰弱したヨーダは最後の弟子に事実を打ち明け、肉体を消滅させることによって静かに900年の生涯を終えたのだった。
やがてエンドアの戦いでルークはヴェイダーに打ち勝ち、父を改心させることに成功する。善の心を取り戻したアナキンはパルパティーンを滅ぼし、「選ばれし者」の予言を成就させた。この戦いの祝賀会の最中、ルークは自分を見守るヨーダとオビ=ワン、そしてアナキンの魂を垣間見るのだった。
ジェダイ・オーダーの頃は荘厳にして厳格であったのに対し、隠棲の後の彼は長い孤独や自責の念からか、幾分、角のとれた性格になっている。そのため、ルークを試した際は道化を演じきって見せるなど、オーダー時代には見せなかった一面を見せている。晩年は咳き込む場面が増え、自身も悟っていた通り病で没するも、死してなお霊体となりルークを後押しし続けた。
劇中でヨーダの言う台詞「Try not, Do or do not. There is no try. (やってみるのではない、やるのだ)」は、非常に有名であり、多くの作品に引用されている他、イギリスの雑誌「short List」が選んだ「名作映画の名台詞100選」の1位に選ばれている。
ヨーダのモデル
ヨーダのモデルについてはデザインをしたスチュアート・フリーボーンが、自分自身を基にして目をアルベルト・アインシュタインとミックスしたとDVD-BOX「STAR WARS TRILOGY」の特典ディスクで証言している。
また、黒澤明監督の代表作、「姿三四郎」のさいづち和尚とよく似た部分が多いこともよく指摘されている[2]。
実在人物モデル説・および「ヨーダ」の名前に関して
名前の由来に関しては諸説あるが、明確な答えは公式には提示されていない。
溝口健二監督の中期から後期の脚本を手がけた大阪芸術大学元映像学科長の依田義賢であるという説は有名である。論拠としては、ルーカスが溝口健二監督のファンであり、ルーカスからヨーダのぬいぐるみが依田義賢に届けられたという話があること、ルーカスは「あなたの耳は面白い形をしている」と依田教授に言ったこと、取材時に「ヨーダのモデルはあなたですか?」の問いに依田教授が笑って答えを返さなかったこと、などが挙げられている。
イギリスの映画評論家トニー・レインズは「日本の脚本家・依田義賢が、ヨーダのモデルである」と発言している。レインズは、「依田がサンフランシスコのフィルムアーカイブで講演した際、フランシス・F・コッポラが聴講したのち、依田をルーカスに紹介したのが、依田とルーカスとの出会いである」としている。この件に関しては、ルーカスも認めているとレインズは語っている。つまりこの講演会がルーカスと依田を結び付けたという。この講演会については、依田の実の息子であり現大阪芸術大学芸術学部教養課程主任教授である依田義右も、その事実を認めている。[3]
なお、ルーカス本人は1999年6月2日の来日時の記者会見で糸井重里の発した「ヨーダの元は依田さんですか?」との質問に対して「NO」と明確に否定している[4]。
また、ヨダ(Yoda)という姓の日本人女性が「ヨーダ」と間違われ、実名が原則のSNSサイト「Facebook」の登録を拒否されたという事例が発生している[5]。
キャラクター制作
『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』の製作は、1979年より始まっていたが、スチュアート・フリーボーンによるデザインのみが決まっていたヨーダを現実化する方策を、ルーカス・フィルムは所持していなかった。この問題の解決にあたったのが、製作者ゲイリー・カーツだが、彼はマペット映画で知られるジム・ヘンソンのもとを訪ね、ヘンソン社に協力を取り付けた。
ジム・ヘンソンは当時、『セサミストリート』、『マペットショー』などのテレビ番組制作に並行して、マペットを使用した本格的なファンタジー映画の製作を準備中で、この製作チームの中から、フランク・オズやウェンディ・ミッドナー、キャスリン・ミュレンを始めとする人形製作チームがルーカス・フィルムの撮影現場に加わり、ヨーダのキャラクターを実現することとなった。ヨーダはラテックスの皮膚を持つリアルな人形キャラクターの原型となったが、これらヘンソン社の造形・操演チームの努力は後に映画『ダーククリスタル』として、結実することとなる。
なおヨーダの声の担当として、多くの候補がオーディションを受けたが、最終的にヨーダを操演した本人であるフランク・オズが担当することとなったことについて、「極めて個性的な声ながら、彼以上にヨーダの本質を捉えている人はいなかった」とゲイリー・カーツが語っている。日本語吹き替えは新三部作では永井一郎が演じているが、旧三部作は度々キャストが変更されている。オリジナル劇場公開時(『エピソード5』のみ)こそ、新三部作と同じ永井の吹き替えであったが、現在発売されているDVDでは辻村真人へと変更されている。
CGキャラクターが跋扈した『エピソード1』でも一部を除いてパペットで演じられたが(パペットは一度リテイクされ、NG版はヤドルに流用されている)、『エピソード2』、『3』では遂にヨーダもフルCG化され、サブサーフェイス・スキャタリングという最新のCG技術によって、リアルな肌の表現がなされた。特に『エピソード2』終盤の、従来のヨーダの印象を完全に覆したダイナミックなライトセーバー戦はCGならではの物であった。一方、ライトセーバー戦の相手にとっては難しい演技を要求されるようになったらしく、『エピソード3』でヨーダと対決したパルパティーン役のイアン・マクダーミドは「相手が見えないので非常に難しかった」と語っている。なおエピソード2ラスト近くでヨーダがクローン戦争の始まりを告げるシーンは、ヨーダの表情になかなかルーカスのOKが出ず、ILMのCGスタッフの間では担当者がなかなか家に帰れないという事で「家庭不和製造ショット」と呼ばれていた。2011年に発売されたブルーレイ版では、エピソード1のヨーダも全てCGに置き換えられている。
ゲーム
バンダイナムコゲームスから発売された『ソウルキャリバーIV』のXBOX360版に操作キャラクターとして特別出演を果たした。ダース・ベイダーも同作のプレイステーション3版に特別出演している。
出典
- ↑ 『エピソード3』のラストシーンでは、クワイ=ガン・ジンと交信しており、小説版では「君のアプレンティス(弟子)になる」という台詞がある。
- ↑ 内田樹著 「下流志向」
- ↑ 轟夕起夫「ヨーダとは何者か? 『悪名』サーガ考」『轟夕起夫の映画あばれ火祭り』河出書房新社、2002年、pp.47-49.
- ↑ 「GEORGE LUCAS 来日記者会見 '99.06.02/東京・新宿」『GaZO』VOL.4、徳間書店、1999年、p.93
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