物品税
概要
間接税についての伝統的な考え方は、生活必需品に対しては課税を差し控え、贅沢品には担税力が認められるからこれを重く課税するというものである。戦後の混乱期から高度経済成長を迎える日本においても、前述の考え方は一般的に肯定されていた。具体的には、宝石、毛皮、電化製品、乗用車あるいはゴルフクラブといったものが物品税の対象とされていた。日本の「物品別間接税」は世界に先駆けて導入され、現在欧米で導入されている間接税の物品別軽減税率は日本のこの間接税システムを真似したものである。
物品税は低所得者でも購入せざるをえない生活必需品などが非課税になっており、かわりに高所得者が購入する贅沢品には高い税率で課税されるという税制であるため、一億総中流社会の原動力になったシステムといえる。
日本では1937年(昭和12年)に特別税法に規定された北支事件特別税(1938年から1940年まで支那事変特別税)の一つとして創設された物品特別税が前身となり、1940年(昭和15年)に恒久法として物品税法が制定されて物品税となった。1989年(平成元年)4月1日の消費税法施行にともない廃止された。
問題点
しかし、物品税は課税対象の品目をあらかじめリストアップしておく必要があるが、商品の多様化により生活必需品か贅沢品かの判定自体が困難なものもあり、奢侈度で税率が異なっていたため、物品税そのものが執行困難性を内包する税制であった。
例えば、物品税法上、レコードは一般的に課税であったが、教育に配慮して童謡と判定されれば非課税であった。このため皆川おさむの『黒ネコのタンゴ』、子門真人の『およげ!たいやきくん』、わらべの『めだかの兄妹』などのレコードについて、課税対象か否かの議論が行われた。『黒ネコのタンゴ』は東京国税局は童謡と判定したものの、他の国税局管内で歌謡曲とみなされ、結果的に課税となった[1]。『およげ!たいやきくん』は童謡と判定され、非課税となった[2]。『たいやきくん』問題を受けて[1]、日本レコード協会は1977年、国税庁から了解を得て「歌詞・メロディが子供にふさわしく、子供が容易に口ずさめる曲」やジャケットに「子供向け」「児童向け」の表示があるレコードを童謡扱いとする自主基準を定めた[3]。この自主基準を基に、アニメソングについても童謡扱いとするレコード会社もあった。しかし、1986年、ポニーとキャニオン・レコード(後に両社は合併し、ポニーキャニオン)が童謡扱いとしていたアニメソングのレコードの一部[注釈 1]について、東京国税局は「童謡に該当せず、課税対象」と判断したため、物品税約4000万円を追徴された[3]。
他にも、類似製品であるが課税・非課税が異なる問題[注釈 2]や、同じ商品でも時代の需要の違いで課税対象となるかどうかが変化する問題[注釈 3]もあった。さらに、複数製品で一体をなす製品では、その製品ごとに課税の有無や税率が異なる場合、それらを別売りとするケースも見られた[注釈 4]。
また、対象となる物品の範囲、指定のタイミングや税率を巡って企業側や消費者から不公平感が指摘されることもあった。例えば、真に新しいカテゴリの商品のうちは対象にならず、法令の改正などを経るためにある程度普及してから課税対象になるため、可処分所得が相対的に少ない世帯は新商品の入手をいっそう困難にする結果となる不公平な問題点も指摘された。法律自体は変わっていないのに通達によって租税対象を変更したパチンコ球遊器課税事件も発生した。
また基本的には蔵出し課税であり、一部を除いてサービスなどには課税されない。
このような背景もあり、一般消費税導入時に物品税は廃止された。
日本における消費税制度導入前当時の物品税等の課税比率
※1988年(昭和63年)当時
乗用車
- 普通乗用車 (3ナンバー車) - 23%
- 小型乗用車 (5ナンバー車) - 18.5%
- 軽乗用車 - 15.5%
商用車
脚注
出典
注釈
関連項目
外部リンク
- テンプレート:PDFlink - ISFJ日本政策学生会議
- 改正物品税法(昭和37年3月31日公布) - 衆議院
- テンプレート:PDFlink - 財務省(旧大蔵省) 1984年1月27日閣議決定内容 「4.物品税」の章に、当時の一部の物品税率が記載されている
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