バンドネオン
ファイル:Early-bandonion.jpg 初期のバンドネオン、1905年頃 ファイル:Aa-bandoneon.jpg アルフレッドアーノルドバンドネオン、1949年頃 |
バンドネオン(テンプレート:Lang-en-short、テンプレート:Lang-es-short)は、主にタンゴで用いられる楽器。
概説
アコーディオンに形が似ているため(同じ蛇腹楽器)、「アコーディオンの一種」という説明も見受けられるが、鍵盤は、ピアノのような形ではなく、ボタン型で、これが蛇腹を挟んで両側についている。アコーディオンが1820年代に発明され、改良して作られたアコーディオンの一種であるコンツェルティーナ(コンサーティーナ)の影響を受けて、1840年代、ドイツのハインリヒ・バンドが1847年に考案し、野外での教会の儀式でパイプオルガンの代用として、またドイツの民俗音楽で、使用されていた。
1880年代、アフリカ系アルゼンチン人のセバスティアン・パルドが、タンゴで用いたとする文献がある。アルゼンチンのタンゴ楽団は、最初はギター・フルート・バイオリンという編成であり、バンドネオンの応用が徐々に広まったものの、しばらくバンドネオンなしが主流だった。20世紀になり、ドイツから大量のバンドネオンが輸出され、タンゴでよく用いられる楽器となった。バンドネオンの使用で、「タンゴ」の音楽の性質が大きく変化し、テンポも遅くなり、今の大衆のイメージたる「タンゴ」となった
また、サンバやミロンガなどのフォルクローレで使われることもあり、アルゼンチンのご当地ワルツたるバルス・タンゴのバンドネオン入りのレコード録音も、フランシスコ・カナロ作曲の 「黄金の心」 などで聴ける。
また、バンドネオン独奏にこだわる演奏家もいる。映画 「サンチャゴに雨が降る」 でのピアソラのバンドネオン独奏の録音は有名である。
また、日本の叙情歌を演奏したレコードもあり、武満徹作曲の作品にバンドネオンが使われるものがある。また、バッハなどのクラシック音楽の曲を演奏する演奏家もいる。
内部構造
調律などのメンテナンスは、専門の技術が必要である。
ボタン配列-ディアトニックとクロマチック
基本的なバンドネオン(ダイアトニック型。バイソニック型とも呼ぶ)は、蛇腹を押すときと引くときで別の音が出る、音階配置がほぼ不規則といった独特の構造を持つ。これは発展途上で不足した音階を建て増しした歴史に理由があるようだ。この為、習得が非常に難しいことから「悪魔が発明した楽器」と呼ばれる。中央のボタンは、隣同士の特定のボタンを同時に押すと、(ダイアトニック・コンサーティーナや、アコーディオンの左手と同じように)和音が鳴るようになっている。
左33個右38個合計71個のボタンがある ライン式配列 Rheinische lage のバンドネオン 142 voces が、タンゴの演奏で標準的に用いられるものである。このボタンの配列は、下の外部リンクにある図があるので、そちらを参考のこと。
それよりも多い左36個右40個合計76個のバンドネオン 152 voces もある。また、より少ない左31個右34個合計65個 のバンドネオン 130 voces もある。
のちにヨーロッパのアコーディオン奏者の要請に応えて構造を整理したクロマチック型バンドネオンも作られ、こちらの鍵盤配列は規則的である。日本のタンゴ楽団も含め、アルゼンチン以外のタンゴ楽団で広く使用されてきた。アルゼンチン・ウルグアイのタンゴ楽団ではダイアトニック型が使用されている。1950年代ぐらいから日本のタンゴ楽団でも、ダイアトニック型を使用するようになってきた。
タンゴの独特の音楽性は複雑な構造を持つバンドネオンの運指、吸気リズムを自然に活かした演奏技術との相互発展の産物であり、単純に合理性で解釈できるものではない。
演奏法
蛇腹を引いたときの方が、音が響く。蛇腹によく共鳴するためだと言われる。従って、バンドネオン奏者は蛇腹を引く音を多用し、蛇腹を引いて演奏しては空気抜きレバーを押しながら蛇腹を戻す、ということを繰り返すことが多い。特に、タンゴの鋭いスタッカートは、膝を使いながら蛇腹を瞬時に引くことによって出される。
標準的なバンドネオンの演奏としては、座ってバンドネオンを膝に置いて弾くのがごく一般的であるが、アストル・ピアソラは立ち膝で演奏することもある。
製造元
製作元については、アルフレッド・アーノルド Alfred Arnold 社 にこだわる演奏家がかなり多い。1911年に、旧東ドイツ領のカールスフェルト Carlsfeld に設立されたが、第二次世界大戦前後に製造中止した。AA ブランドであり、ドブレA(Doble A) ともいわれている。
1861年に同じカールスフェルトで設立されたエルンスト・ルイス・アーノルド Ernst Louis Arnold 社のバンドネオンも、演奏に用いられる。ELA ブランドで知られている。ちなみに、アルフレッド・アーノルドは、エルンスト・ルイス・アーノルドの息子である。
ドイツのクリンゲンタール Klingenthal に存在する マイネル&ヘロルド Meinel & Herold 社製造のバンドネオンを、レオポルド・フェデリコは愛用している。3B ブランドで知られている。 クリンゲンタールにはいくつかのバンドネオンメーカー、博物館がある。
アコーディオンメーカーで知られるホーナー Hohner 社も、バンドネオンを製造していた。また、ベルリンのプレミア Premier 社も、新品のバンドネオンを製造している。その他、製造元が十社ぐらいある。
バンドネオンについては、新しい楽器よりも、古くても調律・メンテナンスがしっかりしたものが、演奏家から選ばれる傾向にある。
製造元メーカー
- アルフレッド・アーノルド Alfred Arnold
- エルンスト・ルイス・アーノルド Ernst Louis Arnold
- マイネル&ヘロルド Meinel & Herold
- ホーナー Hohner
- プレミア Premier
- Baltazar Estol (Argentina)
著名なバンドネオン奏者
タンゴ楽団の代表が、バンドネオン奏者とは限らない。
アルゼンチン・ウルグアイ
- ビセンテ・グレコ Vicente Greco
- エドゥアルド・アローラス Eduardo Arolas
- ペドロ・マフィア Pedro Maffia
- パキータ・ベルナルド Paquita Bernardo
- ペドロ・ラウレンス Pedro Laurenz
- エクトル・バレラ Héctor Varela
- アニバル・トロイロ Aníbal Troilo
- アストル・ピアソラ Ástor Piazzolla
- ミゲル・カロー Miguel Caló
- エドゥアルド・ロビーラ Eduardo Rovira
- レオポルド・フェデリコ Leopoldo Federico
- ダニエル・ビネリ Daniel Binelli
- ネストル・マルコーニ Nestor Marconi
- ルベン・フアレス Rubén Juárez
トルコ
- トルガ・サルマン Tolga Salman
日本
関連項目
参考文献
- 舳松 伸男 タンゴ ― 歴史とバンドネオン (東方出版) ISBN:978-4885912573
外部リンク
バンドネオンボタン配置
- Christian's Bandoneon Page - The keyboard system 142 voces - バンドネオン 142 voces のボタン配置
バンドネオンボタン配置掲載サイト
- バンドネオンメモランダム - 「ボタン」のリンクで鍵盤の配置も掲載
- Bandoneonbau Uwe Hartenhauer Germany - 鍵盤の配列(ドイツ語音名)も掲載
- Christian's Bandoneon Page (英語)
- Proyecto Bandomecum Bandoneon's Portal Page (Spanish)
バンドネオン奏者のホームページ