化学的酸素要求量
化学的酸素要求量(かがくてきさんそようきゅうりょう、COD, Chemical Oxygen Demand)とは、水中の被酸化性物質を酸化するために必要とする酸素量で示したものである。代表的な水質の指標の一つであり、酸素消費量とも呼ばれる。
概要
CODは排水基準に用いられ、海域と湖沼の環境基準に用いられている。CODの値は、試料水中の被酸化性物質量を一定の条件下で酸化剤により酸化し、その際使用した酸化剤の量から酸化に必要な酸素量を求めて換算したものであり、単位は ppmまたはmg/Lを使用する。被酸化物質には、各種の有機物と亜硝酸塩、硫化物などの無機物があるが、おもな被酸化物は有機物である。そのため、CODが高いほど有機物量が多いといえる。類似した指標にBODがあるが、BODとの違いは、CODが有機物と無機物、両方の要求酸素量であるのに対し、BODは生物分解性有機物のみの酸素要求量であるという点である。また、CODは30分~2時間程度の短期間で求められるのに対し、BODは長い時間を要するため、CODがBODの代替指標として用いられることもある。
有機物が多く水質が悪化した水ほどCODは高くなるが、還元性の無機物によってもCODは高くなるため一概に水質が悪いとは言い切れない。また、酸化剤の種類と濃度、酸化時の温度や時間、有機物の種類や濃度によっても測定値が異なることがあるため、一義的にCODを比較することは難しい。
日本におけるCOD
日本の環境基準等において使用される酸化剤は、測定に長時間を要するBODの代替指標との意味合いから、比較的酸化力が弱く生物分解性有機物の酸化に近い過マンガン酸カリウムによる酸性高温過マンガン酸法(CODMn)が採用されている。
これに対して、有機物全量を推定するものとして、強力な酸化剤である二クロム酸カリウムによるCODCrがある(ちなみに二クロムの冒頭の二は数字の2の漢字表記。かつては、重クロム酸カリウムと呼ばれた)。
日本においてCODMnを採用したことには、生物分解不可能な有機物質は「酸素消費」という環境問題の原因物質でないことから、環境基準をはじめとして環境規制の対象としなかったとの経緯がある。また、典型的な環境問題、公害問題として六価クロム汚染があるなか、この六価クロム(二クロム酸カリウムはその一つ)を使用する測定方法を採用しにくかったこともCODMn採用の消極的理由とされる。このように、様々な解釈や評価のあるCODMnであるが、特にCODMnと長期間BOD(例えばBOD20)などとの間には、その水中の物質、物質構成によってはその測定値に相当の開きがあることもあり、その代替指標性について疑問が呈せられる場合がある。
また、有機炭素を簡易に測定できるTOCが普及したことにより、CODCrに替わり特に学術的にはTOCが全有機物を表す指標として採用される状況にある。
酸化剤の種類による測定方法の種類
- CODCr(二クロム酸カリウムによる酸素要求量)
- 欧米で広く用いられる方法で、最も酸化力が強いためほぼ全量の有機物が分解される。
- CODMn(酸性高温過マンガン酸法、100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素要求量)
- 日本における法定試験方法であるため、国内で最も広く用いられる。この方法は、検査水を混合した5 mmol/L過マンガン酸カリウム溶液を沸騰水で30分間熱したときに酸化された過マンガン酸カリウムの量を測定することで、消費された酸素の量を算出する[1]。塩化物イオンによる影響を防ぐため、硝酸銀(AgNO3)を用いる。有害物質のクロムを使用しない、測定操作が短時間などのメリットはあるが、酸化力が弱くCODCrよりも低い数値となることが多い。
- CODOH(アルカリ性過マンガン酸カリウムによる酸素要求量)
- 塩化物イオンが多い海水などに用いられる方法。
- COD-アルカリ性(アルカリ性100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素要求量)
- 硝酸銀を使用する必要が無く、CODOHと比べて残留する過マンガン酸カリウムの滴定が簡素なため、海水の混入する恐れがある場所で日常的に試験を行う場合に用いられる。
- COD-硫酸銀(硫酸銀を用いる100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素要求量)
- 塩化物イオンの影響を防ぐため、硝酸銀の代わりに硫酸銀(Ag2SO4)を用いる方法。
関連項目
- 生物化学的酸素要求量 (BOD)
- 全有機炭素(TOC)
- 溶存酸素量(DO)
- 浮遊物質(SS)
- 生活排水
参考資料
- 下水試験方法 1997年版, (社)日本下水道協会
- 下水道用語集 2000年版, (社)日本下水道協会
脚注
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