工廠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
工廠(こうしょう)は軍隊直属の軍需工場で、武器・弾薬をはじめとする軍需品を開発・製造・修理・貯蔵・支給するための施設。造兵廠とも呼ばれる。大日本帝国陸・海軍はそれぞれ直轄の軍需工場を持っていた。立地条件としては、他国からの攻撃をできるだけ避けられる安全な場所で、輸送の便のよいところが望ましい。
第二次世界大戦末期、工廠は米軍の空襲目標の一つとして攻撃を受けた。当時、成人男性の多くは戦地に送られ、工廠には学生たちが学徒動員され働いており、彼らも空襲の犠牲者となった。
自衛隊は工廠と呼べるものを持たず、兵器の開発・製造を民間企業に委託している。
陸軍の工廠
再編統合を繰り返したため、それらの名称はさまざまに変わったが、主なものをここに挙げる。
- 戦前
- 戦中
など
海軍の工廠
旧海軍工廠
- 戦前
- 呉海軍工廠(広島県:開廠1903年11月)
- 横須賀海軍工廠(神奈川県:開廠1903年11月)
- 佐世保海軍工廠(長崎県:開廠1903年11月)
- 舞鶴海軍工廠(京都府:開廠1903年11月→復帰1936年7月)
- 広海軍工廠(広島県:開廠1923年4月)
- 豊川海軍工廠(愛知県:開廠1939年12月)
- 高座海軍工廠(神奈川県:開廠1944年4月)
- 光海軍工廠(山口県:開廠1940年10月)
- 多賀城海軍工廠(宮城県:開廠1943年11月)
- 鈴鹿海軍工廠(三重県:開廠1943年6月)
- 沼津海軍工廠(静岡県:開廠1943年6月)
- 川棚海軍工廠(長崎県:開廠1943年5月)
- 相模海軍工廠(神奈川県:開廠1943年5月)
- 津海軍工廠(三重県:開廠1944年4月)
- 大神海軍工廠(大分県:計画)
- 仮称S廠(山口県:計画) など
- 戦中
内陸に位置する工廠へは鉄道の専用線が引かれた。今も各地の道路やトンネルにその跡が残る。
関連図書
- 『陸軍工廠の研究』佐藤 昌一郎 八朔社 ISBN 4938571765(1999/07)
- 『横須賀海軍工廠史 (1)』 明治百年史叢書 (329) 横須賀海軍工廠 原書房 ISBN 4562013788 (1983/01)
他国の相当する施設
- アメリカ合衆国
- スプリングフィールド造兵廠 - 小火器の開発製造を担当。1968年に閉鎖。
- ロック・アイランド造兵廠(Rock Island Arsenal) - 陸軍用火砲の開発製造を担当。
- ブルックリン海軍工廠 - かつて存在した海軍工廠。多くの米海軍主力艦を建造。1966年に閉鎖。別名ニューヨーク海軍工廠。
- ピカティニー造兵廠 - MIL規格の制定と管理を行っている。
- イギリス
- イングランドのアーセナルFCなど、工廠の労働者で結成されたチームを起源とするサッカークラブの多くが「工廠」を意味する"Arsenal"をチーム名としている。hu:Arzenál