ヒューゴー賞
ヒューゴー賞(ヒューゴーしょう、ヒューゴー・アウォーズThe Hugo Awards)は、前年に発表されたSF・ファンタジー・ホラーを主な対象分野とする賞である。複数の部門があり、各受賞者は毎年の世界SF大会(ワールドコン)中に開催されるヒューゴー賞授賞式において発表される。
概要
1953年の世界SF大会(ワールドコン)において創設され、現存する中で最も歴史の古いSF賞である。アカデミー賞をヒントとして提案され、アメリカSF界の功労者であるヒューゴー・ガーンズバックにちなんだニックネームが与えられた。1953~92年の正式名称は「SF功労賞」(Science Fiction Achievement Awards)だったが、1993年以降は「ヒューゴー賞」が正式名称となった。
SF・ファンタジー作品に与えられる賞としては、アメリカSFファンタジー作家協会 (SFWA) の会員投票で選ばれるネビュラ賞と知名度を二分する。ヒューゴー賞とネビュラ賞の同時受賞はダブル・クラウンと呼ばれることがある。(同時受賞作の一覧については英語版 List of joint winners of the Hugo and Nebula awards を参照)
賞の創設以来、受賞者には流線型のロケットを象ったトロフィーが授与されている。1984年にロケットのデザインが公式に変更されて以降は、台座部分のみが毎年新しくデザインされている。
なお、ジョン・W・キャンベル新人賞(ヒューゴー賞には含まれない)も同時に選出・受賞される。
選考方法
SFファンの投票によって決定される。
まず、1〜3月に前年と当年のワールドコン参加登録者によるノミネート投票が行なわれ、4月に候補が決定・発表される。その中から当年のワールドコン登録者による最終投票(各部門の候補すべてに順位をつける選好投票方式)が行われ、その年のヒューゴー賞が決定される。
ヒューゴー賞の部門
半世紀以上の歴史の中で、部門数・名称・内容は数々の変遷を重ねている。以下は2014年4月現在の規定を解説する。
現在の部門名 | 開始年 | 対象、備考 |
---|---|---|
長編小説部門 (Best Novel) | 1953 | 4万語以上(ノヴェル) |
中長編小説部門 (Best Novella) | 1968 | 17500〜40000語(ノヴェラ) |
中編小説部門 (Best Novelette) | 1955 | 7500〜17500語(ノヴェレット) |
短編小説部門 (Best Short Story) | 1955 | 7500語未満(ショート・ストーリー) |
関連書籍部門 (Best Related Work) | 1980 | ノンフィクションなど小説以外のテキスト |
グラフィックストーリー部門 (Best Graphic Story) | 2009 | グラフィックノベル、コミックなど |
映像部門 (Best Dramatic Presentation) | 1958 | 映像だけでなくスピーチ、ラジオドラマ、音楽、演劇なども対象。2003年から長さ90分を境に長編部門(Long Form)と短編部門(Short Form)に分割 |
セミプロジン部門 (Best Semiprozine) | 1984 | 半商業誌 |
ファンジン部門 (Best Fanzine) | 1955 | 非商業誌(同人誌など) |
編集者部門 (Best Professional Editor) | 1973 | 文章で書かれた作品の編集者。2007年から長編編集者部門(Long Form、長編小説の編集者)と短編編集者部門(Short Form、雑誌やアンソロジーの編集者)に分割 |
プロアーティスト部門 (Best Professional Artist) | 1953 | |
ファンアーティスト部門 (Best Fan Artist) | 1967 | |
ファンライター部門 (Best Fan Writer) | 1967 | |
ファンキャスト部門 (Best Fancast) | 2012 | オーディオ/ビデオ形式のファンジン(ポッドキャストなど) |
- 各年のワールドコン実行委員会の判断により、授賞式上において特別賞が授与されることがある(この場合投票は経ない)。これは正式にはヒューゴー賞には含まれず、トロフィーも与えられない(かつては与えられたこともある)。
- 各年のワールドコン実行委員会の権限において、その年限りの条件で特別部門が設定されることがある(これは正式なヒューゴー賞として扱われる)。
受賞資格
毎年のワールドコンで行なわれる、ワールドSFソサエティー(WSFS)ビジネス・ミーティングにおいて、規約は随時変更されている。下記は2014年4月現在の規定である[1]。
- 発表国・言語は問わないが、英語以外の言語で発表されたものは、英訳版が発表された年も対象となる。アメリカ国外で発表された作品はアメリカで初めて刊行された年も対象となる(試験運用中)。
- 作品や連続刊行物を対象とする部門では、発表形態(紙媒体、電子書籍、自費出版、ウェブサイトに発表された作品、ブログなど)は問わない。ただしセミプロジン部門・ファンジン部門・ファンキャスト部門のように媒体を資格定義に含む部門は、それぞれの定義に従って区分けされる。
- 個人(アーティスト、編集者など)を対象とする部門は、作品個々ではなく個人を対象とする。ただし該当年にまったく活動していない人物は資格を持たない。
- テレビシリーズやコミック、小説などのシリーズ作品(Serialized Works)については、シリーズの個々の作品が対象となる場合は各作品の発表年が対象となる。シリーズ全体が対象となる場合は、シリーズ最終作の発表年が対象となる。一度でもシリーズの個々の作品が候補となった場合は、完結時にシリーズ全体を候補とすることはできない。
- 「プロ」の定義
- ヒューゴー賞の関連部門(プロアーティスト・ファンアーティスト部門など)においては、下記のどちらかを満たす場合に、professional(プロ)と定義される。
- 誰か一人の年収の1/4以上を賄っていること
- 対象となる媒体等を所有する団体が、そのスタッフもしくはオーナーのうち誰か一人の年収の1/4以上を支払っていること
- 連続刊行物の定義と資格
セミプロジン部門、ファンジン部門、ファンキャスト部門は連続刊行物を対象とする。個別の号ではなく、対象年の刊行物すべてが対象となる。
- セミプロジン部門のノミネート資格は、これまでに最低4号以上かつ対象年に1号以上を発表した上で、下記の条件をすべて満たす場合である。
- 前述の「プロ」の定義に当てはまらないこと
- 寄稿者やスタッフに対し、掲載号の提供以外の何らかの利益(金銭など)が適用されていること
- 刊行/発表/公開物の入手方法が基本的に有料のみであること
- ファンジン部門のノミネート資格は、これまでに最低4号以上かつ対象年に1号以上を発表した上で、対象が上述の「プロ」「セミプロジン」および下記の「ファンキャスト」に該当しない場合である。
- ファンキャスト部門のノミネート資格は、これまでにすくなくとも4エピソードを配信しかつ対象年に1エピソードを発表したオーディオ・ビデオ配信物で、かつ「プロ」に該当しない場合である。
過去に存在したヒューゴー賞の部門
部門名 | 期間 | 対象、備考 |
---|---|---|
商業誌部門 (Best Professional Magazine) | 1953–1972 | |
カバーアーティスト部門(Best Cover Artist) | 1953 | |
挿絵イラストレーター部門 (Best Interior Illustrator) | 1953 | |
Excellence in Fact Articles | 1953 | ノンフィクション作品・記事の執筆者 |
Best New SF Author or Artist | 1953 | 新人作家またはアーティスト |
#1 Fan Personality | 1953 | ファン |
Best Feature Writer | 1956 | 雑誌への執筆者 |
Best Book Reviewer | 1956 | 書評の執筆者 |
Most Promising New Author | 1956 | 新人作家 |
Outstanding Actifan | 1958 | ファン |
Best New Author | 1959 | 新人作家 |
Best SF Book Publisher | 1964–1969 | 出版社 |
Best All-Time Series | 1966 | アイザック・アシモフ「ファウンデーション」三部作が受賞した |
Other Forms | 1988 | 小説4部門に当てはまらない、印刷されたフィクション作品 |
Best Original Art Work | 1990, 1992–1996 | アートワーク |
Best Web Site | 2002, 2005 | ウェブサイト |
レトロ・ヒューゴー賞
Retrospective Hugo AwardsまたはRetro Hugos(遡及的ヒューゴー賞)は、ヒューゴー賞が授与されなかったワールドコン(1931〜41、46〜52、54年)の50年後・75年後・100年後に開催されるワールドコンにおいて、その年度の対象作品を対象として、通常のヒューゴー賞と同じ手順を経て選ばれる。1990年代中盤に規則が制定された。
これまでに実施されたのは1996年、2001年、2004年の3回で、いずれも50年目に行なわれている。
2014年のLoncon 3(ロンドン)では、75年前の1939年を対象とするレトロ・ヒューゴー賞を実施している[2]。
脚注
参考文献
- SFマガジン2007年7月号
外部リンク
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