ゆりかごから墓場まで
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「ゆりかごから墓場まで」(ゆりかごからはかばまで)は、第二次世界大戦後の英国における社会福祉政策のスローガン。原語では”from the cradle to the grave”。
用語解説
社会保障制度の充実を形容する言葉で、第二次世界大戦後にイギリス労働党の掲げたスローガンである。これが日本を含めた各国の社会福祉政策の指針となった。英国の社会福祉サービスは、国民全員が無料で医療サービスを受けられる国民保健サービス(NHS)と国民全員が加入する国民保険(NIS)を基幹とすることが特色である。
しかしながらこの政策は膨大な財政支出をもたらし、「英国病」に由来する税収の伸び悩みによりNHSの財政圧迫は深刻な問題となった。このため「小さな政府」を目指すイギリス保守党のマーガレット・サッチャー政権下で同方針の転換が図られ、大胆な福祉支出の削減が行われた。これによりNHSは機能不全に陥り(医療崩壊)、医療従事者が大量に国外に流出、数ヶ月もの診療待ちが常態化する事態となった。さらに、保守党の新自由主義政策によってロンドンを除くイギリス経済は沈滞を続け、財政赤字も解消されなかった。このため、労働党が政権を奪還した後のイギリス政府は「第三の道」路線へ進み、経済再建とNHSの立て直しに取り組んだ。