Handspring
Handspring(ハンドスプリング)は、Palm OS搭載のPDAを開発・販売していた企業。
経緯
1998年、Palmの開発者ジェフ・ホーキンスが、パーム社を退社してドナ・ドゥビンスキーとともに設立した。
Handspringは設立後、VisorというPDAのシリーズを発売した。これは、完全なプラグアンドプレイを実現した独自の拡張スロットSpringboard(スプリングボード)を搭載した製品で、さまざまなモジュールを差し替えることで、状況に応じてPDAをデジタルカメラやGPS、バーコードリーダーなどに変身させることができた。
しかし業績の問題などもあり、この方針は転換され、Handspring社はTreoに代表される、通信機能を内蔵したコミュニケータと呼ばれる種類の製品にシフトしていったが、Springboardスロットのファンはまだ残っている。
2003年、Handspringはパーム社に買収され、二人の創業者はパーム社の幹部として復帰することとなった。
主な製品
- PalmOS搭載。モノクロ液晶を備え、キーボード付きの無印と、グラフィティ入力を採用したTreo 180gの二種類がある。
- Treo 90 2002年
- PalmOS搭載。モノクロ液晶。キーボード搭載。コミュニケーターだったTreoシリーズの中で、携帯電話機能は内蔵されていないモデル。
- Treo 270 2002年
- PalmOS搭載。カラー液晶。キーボード搭載。フロントカバー裏にスピーカーを内蔵。カバーの開閉状態を検出できる機構を持つ。
- 注)2003年にHandspringはPalmに買収される。
- Treo 700w 2006年
- Windows Mobile5.0搭載
など。
Visor
Palm OS 3.0(〜Visor Deluxe)、Palm OS 3.5(Visor Platinum〜)をベースにしたPalmハンドヘルド互換機。基本的にそれまでのPalm機種を踏襲しているが、他機種と違いOSを格納したマスクROM+ユーザー領域のSRAM(初代Visorは2MB、以降は8MB)となっている(OSへのパッチはSRAMにファイルを置いてフックを行うことで対処している)。
液晶解像度は160×160、Visor Prismが65536色カラー表示に対応、それ以外の機種は16階調モノクロ液晶である。
パソコンと同期を行うクレードルはUSB接続のものが標準であり、シリアルポート接続のものは別売。
サードパーティーから各種サプライ品が発売されたが、特記すべきは色違いボディー自体が販売されたことで、特にVisor Deluxeは標準で5色、サードパーティー製ボディも多数発売され、それまでのPalm機種にはないデザインとファッション性を主張した。本来は分解はメーカーサポート外ではあるが、スタイラスにボディーの十字ねじに対応したドライバーが収納されており、比較的簡単に分解してボディーを交換できるようになっていた。
背面上部に独自のSpringboardスロットがあり、Springboardモジュールを挿入することが出来るのが特徴(Visor Edgeは添付されているSpringboardアダプタを本体に接続し、そのアダプタにモジュールを挿入する)。
SpringboardスロットとSpringboardモジュールは68ピンのコネクタで接続される。標準のSpringboardモジュールはコンパクトフラッシュより横幅は一回り(54mm)、縦幅はふた周り程度(57mm)大きい(コンパクトフラッシュのデータを読み込むSpringboardモジュールがちょうど良いサイズとなる)。
Springboardモジュールにメモリ(フラッシュROM等)を搭載して、Springboardモジュールの動作に必要なプログラムを格納(さらには挿入した際に自動的に実行するように設定)することができるため、基本的にSpringboardモジュールを動作させるためのドライバやプログラムを別にインストールする必要がない。
また、本体にはマイクロフォンが内蔵されている。ただしマイクロフォンの入力はSpringboardモジュールに直結されており、Visor単体では利用することが出来ない。
主なSpringboardモジュールの一覧
- バックアップモジュール
- フラッシュROMモジュール(ユーザー領域を追加)
- コンパクトフラッシュなどのメモリカードのアダプタ(VFS(Virtual File System)に対応したものもある)
- コンパクトフラッシュ型PHSアダプタ
- デジタルオーディオプレーヤー
- デジタルカメラ
- ボイスレコーダー
- プレゼンテーション(パワーポイントなどの画像を映像出力端子から出力する)
- FM音源
- 無線LANアダプタ
- Bluetoothアダプタ
- 赤外線リモコンユニット
- GPSユニット
- 低周波治療器
- 万歩計
- ゲームソフト
一時、日本ではSpringboardモジュール化したPHSを接続し、スマートフォンとして取り扱えるモジュールが構想され、開発されていたが、Handspringの方針転換、および日本撤退により開発が中止されて発売にはいたらなかった。
デジタルオーディオプレイヤーやデジタルカメラなど時代の流行を取り入れた展開が行われたが、思うように価格が下がらずそれぞれの専用機種の性能アップのスピードについていけなかったために大きな話題となることはなくSpringboardモジュールの展開は終了した。