糸電話
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糸電話(いとでんわ)とは、音声を糸の振動に変換して伝達し、再び音声に変換することによって離れた2点間で会話ができるように作られた玩具。また、音の実体が振動であることを示す目的で、理科実験教材として使用されることがある。
概要
最も一般的には一組の紙コップと凧糸によって作られる。適当な長さに切ったたこ糸の両端をそれぞれ紙コップの底に貼り付けたものが最も簡単な糸電話の一例である。糸がピンとはるように適度な張力をかけた上で、片方の紙コップに向かって音声を発すると、もう片方の紙コップからその音声が聞こえてくる。これは、空気の振動である音声が紙コップの底を振動させ、その振動が糸に伝わり、もう片方の端で再び紙コップの底を震わせて、最終的に空気を振動させるからである。
糸電話の音質を決定するのは、主に紙コップの底にあたる振動板の材質と、糸の材質である。振動板は、薄く、軽く、しなやかで振動しやすいことと共に、張力をかけた糸を支えるだけの丈夫さを持たなければならない。また、糸とコップ底の連結部分には、ガラスビーズを結んでおくと結構振動が伝わる。トレーシングペーパーなどは手に入りやすいものの中では優れた特性を持つといえる。糸は、軽くしなやかで振動の損失が少ないものがよく、自然繊維では絹糸が最も良いとされる。また、ナイロンなどの化繊の使用も有効である。紙コップの筒の部分は音声をまとめ拡散しにくくする役割を持ち、口に当てやすい形状が求められるが、材質自体はあまり関係しない。強いて言うならば、硬く振動の損失の少ない材質が望ましい。
類似品
糸の代わりに別のものを使うと、聞こえ方が違ってくる。
- 針金電話
- 針金を使うと、声が響いて聞こえる。
- ばね電話
- ばねを使うと、エコーがかかったように聞こえる。
- 風船電話
- 細長風船を使うと、振動している様子がよくわかる。曲げられるので、自分の声を聞くこともできる。
ストリングラフィ
音楽家の水嶋一江が糸電話の原理を応用した「ストリングラフィ」という楽器を考案し、演奏活動を行っている。
参考文献
- 左巻健男・野村治編著 『新しい理科の教科書 小学3年―親子でひらく科学のとびら』 文一総合出版、2004年、179-182頁、ISBN 4-8299-0189-6。
- 山田善春 「細長風船で楽器や電話をつくる」『ガリレオ工房の身近な道具で大実験 第2集』 滝川洋二・吉村利明編著、大月書店、1999年、76-79頁、ISBN 4-272-61077-5。