オルゴール

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櫛の歯が18本のシリンダー・ムーブメント 写真提供:日本電産サンキョー商事株式会社
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30本の櫛歯を持つシリンダー・ムーブメント
ファイル:Polyphon 2.jpg
ディスク・オルゴール

オルゴールは、機械仕掛けにより自動的に楽曲を演奏する楽器の一つ。自鳴琴とも呼ばれた。

概要

オルゴールは大きく分けて、ピンを取り付けた金属の円筒を用いるシリンダー・オルゴールと、突起の付いた円盤を用いるディスク・オルゴールに分類される。

原理はどちらも同じであり、取りつけられたピンが長さの違う状の金属板(櫛歯)を押し上げ、はじくことにより演奏を行う。金属製の櫛に加えて小さなドラムやベル、カスタネットやリード・オルガンなどを内蔵しているものもある。

特にぜんまいを利用したシリンダー・オルゴールは比較的安価で動力源も単純、小型化も容易であるため、ぬいぐるみなどの贈答品に使われることもある。

名称

日本語の「オルゴール」は、オランダ語ドイツ語オルガンを意味するテンプレート:Interlang(オランダ語でオルヘル、ドイツ語ではオルゲル)に由来する。 一方英語などではオルゴールとは呼ばれず、特に箱状のオルゴールを指して テンプレート:Interlang または musical box という。しかしこのMusic boxという語は箱状の自動演奏器具全般を指すこともあるため、オルゴールの演奏機械部分はオルゴール・ムーブメントmusical movement)と呼ばれ、区別されることが多い。

またオルゴールの語自体も広範な意味を持つ場合があり、ゼンマイ仕掛けのフイゴと笛を使うシンギング・バードや、自動オルガンの類も含まれることがあるため、日本でも自動演奏機械部分を指してムーブメントと呼ぶ場合もある。また、持ち運べないほど大きく設計されたミュージック・ボックスはオーケストリオン(オーケストラが語源)と呼ぶこともある。ここでは音源に金属の櫛歯を使うものをオルゴールと呼ぶこととする。

歴史

オルゴールの原型は17世紀頃のスイスの時計職人がカリヨンを鐘の代わりにピンを利用して演奏させるものであった。それまでにもカリヨンは機械化されて一定の間隔で鐘を鳴らすように作られていたものがあったが、鐘の代わりに調律した金属片を用いることで小型化を可能にした。

後に時計がぜんまいによって小型化したように、オルゴールもやがて家具のように大型なものと携帯できる小型なものに別れた。 シリンダーは通常、金属で作られ、動力源はゼンマイである。複数の曲目を演奏できるようシリンダーが横にスライドする構造がとられたものも多い。また高価ではあるが、より多くの曲目を演奏できるようシリンダーをムーブメントから取り外して交換できるものもあらわれた。インターチェンジャブル・シリンダー・オルゴールである。これは1862年パイヤールが発明し、1879年ジュネーヴのMetertによって完成された。

18世紀初頭に作られた初期のオルゴールはシリンダー型であり、時計職人が手製で作る[1]こともあって非常に高価だったが、19世紀になり機械技術や加工技術が高度化すると金属製のディスクにピンが植えられたディスク型のオルゴールがドイツから現れた。ディスク型オルゴールはシリンダー型よりも安価かつ大量に量産でき、ディスクを交換することでシリンダーよりも簡単に曲目の変更ができたため、瞬く間にディスク型のオルゴールは普及していった。ディスクが上下して2曲を演奏するものもあった。 シンフォニオン (Symphonion ) やポリフォン (Polyphon のようなモデルでは、シリンダーの代わりにディスクが使われた。これらは新しい市場を求めてアメリカにいくつかの工場を開いた。 ポリフォンアメリカ代理店は後にポリフォンから独立しレジーナ社に変わり、シンフォニオンはアメリカシンフォニオンとなる。

こうしたディスク型のオルゴールの台頭によってスイスのシリンダー・オルゴール・メーカーは大きな影響を受ける。対抗するために独自の構造を持つディスク・オルゴール"ミラ"や"ステラ"などを製造しはじめたが、間もなく現れた蓄音機に、特にジュークボックスとして置かれていた大型のオルゴールはシェアを奪われ、以後は小型のオルゴールが少数生産されるにとどまっている。

現在、19世紀から20世紀初頭にかけて作られたオルゴールは収集家によって珍重されている。日本でも各地のオルゴール博物館で当時のオルゴールを鑑賞できる。またメーカーは少数にはなったが、現在でも伝統的なムーブメントの製造が続けられている。(ポーター、三協など)

ジュークボックスとしてのオルゴール

ヨーロッパやアメリカではオルゴールは家庭で楽しまれることも多かったが、レストランやパブ、ホテル、駅などでコインを入れて音楽を楽しむ自動演奏装置としても普及した。ディスク・オルゴールの中にはセットされた10~12曲から選んで演奏できるものもあり、レストランなどではヒットソングを次々入れ替え客の要望に応え、蓄音機やレコードの時代のジュークボックスと同様の役割を担った。

またスイスでは駅の待合室に置かれたオルゴールをステーション・オルゴールと呼び、近年まで見ることができたが、老朽化やオルゴールを壊してコインが盗まれることもあり、多くが取り除かれた。

構造

  • シリンダー・オルゴールの円筒は金属でできている。ディスク・オルゴールの円盤も同様に金属製である。他の全ての部品は金属の基盤(ベッド・プレート)上に固定されている。
  • 動力源であるぜんまいを巻くため、巻上げクランクや巻き戻りを防ぐ歯止め装置がある。
  • ぜんまい(長時間の動作をさせるため、複数を使用することがある)、または電動モーターを用いて、数分から長いものでは1時間以上も演奏する。
  • ぜんまい式の場合、羽根車などを使った調速機で回転を調整する。
  • 音源である櫛(コーム)は異なる長さの何十から何百もの金属製の歯状に切られ、歯(ティース)は音階に合わせて調律されている。
  • シリンダやディスクには譜面に合わせて音楽が記録されている。シリンダー上にはピンが植えられ、ピンが歯を弾いて音を出す。ディスク・オルゴールの円盤には突起または穴があり、スター・ホィールと呼ばれる歯車を介して櫛の歯を弾く。

生産地の推移

蓄音機とラジオの出現、その性能の向上によって、スイスやドイツ、アメリカのオルゴール・メーカーの多くは廃業、または元の時計や新しい分野である蓄音機タイプライターカメラ自動販売機、真空掃除機などの製造へ業種を変えることになる。その中でスイスのリュージュ社は現在も製造を続けている。

第二次世界大戦後、オルゴールの大規模な生産地はスイスから日本へ移った。株式会社三協精機製作所(現日本電産サンキョー株式会社)がオルゴールの製造を始め、小さなキーホルダーから大きいモデルまでのさまざまなオルゴールを供給した。自動化された工場による製造方法を築き、ついにスイスをしのぎ世界最大のメーカーとして市場の80%以上を占めるまでに至った。現在オルゴールの生産は子会社の日本電産サンキョー商事株式会社の手に移っている。日本電産サンキョー商事ではオルゴールの旋律を電子化し着信音として携帯電話にダウンロードできるサービスも行っている(おるごーる本舗)。

スイス、日本では今も高品質のオルゴール・ムーブメントが作られているが、安価なオルゴールの大規模な生産は中国に移動した。現在では中国でも高級な製品が作られつつある。

一方アメリカ・バーモントの Porter Music Box 社 はレジーナ (Regina ) の規格を持つディスク・オルゴールとディスクを現在も生産している。ポーターのオルゴールの動力源はゼンマイまたは電気モーターが選べ、またディスクの曲目は最近のポピュラーソングまで約1,000曲ほどを供給している。ディスクはドイツのポリフォンとアメリカのレジーナのオルゴールと共通の規格を持つため、円盤の寸法が同じであればそれらのアンティーク・オルゴールででも演奏ができる。

主なオルゴール博物館

現在、日本各地のオルゴール博物館でそれらの多種多様さを見聞することができる。

主なメーカー

参考文献

  1. 特に小型かつピンの多いシリンダー型オルゴールを手製で作ろうとすると、櫛歯は非常に高い精度を要求される上やすりで少しづつ研磨して調律したため高い技量が要求された。

外部リンク

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オルゴール関係の博物館など

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