ヒヨケムシ目
テンプレート:生物分類表 ヒヨケムシ目(ヒヨケムシもく、日避虫目、テンプレート:Sname)は、節足動物門鋏角亜門クモ綱に所属する分類群であり、熱帯の乾燥気候の場所に多い。大型種が多く、活発な捕食者である。
形態
巨大な鋏角をもち、全身に毛が生えた動物である。頭部は大きく膨らみ、胸部は落ちこむ。頭部の前の端中央に目がある。腹部は楕円形で、体節に分かれる。腹部は、えさを食べると大きく膨らむ。
頭部の前の端からは、前向きに巨大な鋏角が突き出す。鋏角は頭より大きいほどで、上下に動く爪を備えた鋏になっている。毒腺はない。触肢は歩脚状で、先端には吸盤がある。歩脚はよく発達し、毛に覆われている。第四脚が最も大きく、その基部の下面にはラケット器官と呼ばれる小さな突起状の構造が並ぶ。
呼吸器官は、クモ綱には他に例がないほどよく発達した気管をもっている。
生態
乾燥地に多く生息し、地域によっては都市部でも見られる。夜行性の活発な捕食者であり、昆虫、クモ等を捕食するが、ときには共食いもし、大型種はハツカネズミや小鳥も食うことがある。素早く走り、木に登ることもある。また、しばしばタランチュラ(オオツチグモ科)と互いに捕食しあう関係でもある。 強力な顎によって獲物の外皮や肉を食い千切り、出血多量で弱らせてから捕食する。
刺激を受けると触肢を高く上げ、腹部を立てる動作をする。これは一種の威嚇姿勢と考えられている。それでも相手が諦めない場合は、鋏角で噛み付いて防御する。
配偶行動では、雄が雌に触れれば、雌は体を倒し、雄は精包を鋏角を使って雌の生殖孔へ受け渡す。腹部のラケット器官が大きく、体が痩せている方が雄であり、雌は雄よりも遥かに体が太っていて力が強く、配偶行動に失敗したり、終了後の雄が食べられてしまう事もある。
産卵を迎えると、雌は深く穴を掘って産卵する。卵は母親の体内で発生を進めており、産卵後二日ほどで孵化する。
分類
世界の熱帯から亜熱帯にかけて分布し、12科1000種以上が記載されている。日本には分布しない。
人との関係
人間が咬まれると、場合によっては激しい炎症や、めまい、吐き気などを引き起こす。ただしこれは傷口から細菌が入るなどの結果ではないかとも言われており、ヒヨケムシ自体は毒腺をもたないのが定説となっている。しかし唯一インド産のRhagodes nigrocinctusという種に関しては、上皮腺に毒があるとの報告がインド人の研究者らによって1978年になされている[1]。それによれば、この種の上皮腺から抽出した毒をトカゲ類に注入したところ、10匹のうち7匹が麻痺したとされる。しかし他のヒヨケムシからはそのような上皮腺は見つかっておらず、この種についての追試も行われていない。またもし上皮腺に毒があるとしても、その毒を彼らがどのように用いるのかも不明である。
また、イラクに駐留する米兵の間で恐怖と好奇の対象となった。いわゆる不快害虫のため、「毒を持つ」「寝ている間に人間に食いつく」など、その奇妙な姿から根拠の無い風評や生態がネットなどで誇張されて伝えられた。なかには、基地内でペットとして飼育する兵士もいた。
ギャラリー
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脚注
参考文献
- 内田亨監修 『動物系統分類学』第7巻(中A)「真正蜘蛛類」、中山書店。
- ↑ Aruchami, M. & Sundara Rajulu, G. (1978) An investigation on the poison glands and the nature of the venom of Rhagodes nigrocinctus (Solifugae: Arachnida). Nat. Acad. Sci. Letters (India) 1: 191-192.