空対艦ミサイル
空対艦ミサイル(くうたいかんミサイル)は、航空機から発射され、艦船を目標とする対艦ミサイルのこと。英語で air-to-ship missile 略してASMという。
西側諸国の空対艦ミサイルは、低空を飛行する事により敵艦からの探知を避けることを重視しており、高速性は必ずしも重視されていない。敵艦対空ミサイルの射程外から攻撃可能であることが望まれるため、近年ではエンジンに航続性能の高いジェットエンジンが使われることも多い。ロシアの空対艦ミサイルには、敵に対応の時間を与えないよう、高速性を重視したタイプもある。
対艦ミサイルという意味では同一であるため、艦対艦ミサイルを空対艦ミサイルに転用する、あるいはその逆のケースも見られる。一般的に航空機に搭載できるミサイルは、水上艦への搭載も問題無く行える(これは空対空ミサイルと艦対空ミサイルにも言える事であり、空対空ミサイルを短射程の艦対空ミサイルに転用する例は多い)。最近では、ヘルファイアなど、対戦車ミサイルを対艦ミサイルに転用する例もみられる。
実戦における空対艦ミサイルの使用例
フォークランド紛争
1982年にイギリスとアルゼンチンとの間で起きたフォークランド紛争では、アルゼンチン空軍のシュペルエタンダール攻撃機が放ったエグゾセが、イギリス海軍の駆逐艦「シェフィールド」に命中して沈没させた。この時弾頭は不発であったが、ロケット推進剤の残りにより火災が発生し、航行不能となった。イギリスへの曳航中に荒天のため、破口から浸水したのが沈没原因であった。エグゾセは低空を高速で接近するため、レーダーなどで発見し、効果的に迎撃する事が極めて困難である。
イラン・イラク戦争
1980年に始まったイラン・イラク戦争において、イラク軍は200発とも推定されるエグゾセを使用してイラン海軍の艦艇を攻撃したが、戦果はまちまちであった。
1987年、イラク空軍のミラージュF1戦闘機は、アメリカ海軍のオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート「スターク」をイランのタンカーと誤認し、2発のミサイルを発射した。2発とも命中したが、爆発したのは1発のみであった。「スターク」は火災を起こし、37名が死亡するなど重大な損害を受けたが、沈没を免れ修復のために後送された。