シティ・オブ・ロンドン
テンプレート:Infobox London Borough シティ・オブ・ロンドン(テンプレート:Lang-en-short)は、イングランドのロンドン中心部にある地域であり、周辺の地域とコナベーションを形成している[1]。現代のメトロポリス・ロンドンの起源となる地域で、その区画の範囲は中世以降ほとんど変わっていない。
単にシティ(the City)とも、またその広さが約1マイル四方(厳密にはテンプレート:Convert)であることからスクエア・マイル (the Square Mile) とも呼ばれる[2]。これらの語は金融街としての安定したシティの長い歴史とも相まって、しばしばイギリスの金融業界を指す換喩としても用いられる。
現代における“ロンドン”は、シティ・オブ・ロンドンと同様にシティ・オブ・ウェストミンスターなど32の区を抱える、おおよそグレーター・ロンドンの範囲に相当する広範囲のコナベーション地域を指す単語となっている。シティの行政はシティ・オブ・ロンドン自治体(City of London Corporation)が執行している。これは英国内でも独特の制度であり、シティの区画境界を越えて権限や所有権を有する事項もあるなど、イギリスの地方自治制度としては一般的でない部分も少なからず含まれる。この自治体の首班はロンドン市長(Lord Mayor of the City of London)であり、大ロンドン市長(Mayor of London)よりもはるかに古い歴史があり、これとは別に存在し、役所も離れて置かれている。
シティにはロンドン証券取引所やイングランド銀行、ロイズ本社等が置かれ、19世紀から今日まで続く主要な金融センターとしてニューヨークのウォール街と共に世界経済を先導している[3]ほか、世界でも有数の商業の中心地としてビジネス上の重要な会合の開催地としても機能している[4]。また、銅や錫などの国際相場もここで決められる[5]。他に、シティから東にテンプレート:Convert離れたカナリー・ワーフもロンドンの主要な金融地区である。
シティに居住する人口はおよそ11,700人だが、金融業を中心に約31万6,700人の昼間人口がある。[6]法曹院のインナー・テンプルとミドル・テンプルが置かれている関係で、シティの西部、特にテンプル地区とチャンスリーレーン地区では法曹界が主体となっている。
目次
歴史
現在の連合王国のローマ人による侵略は紀元43年頃に始まった。彼らの、現在のシティにおける本来の意図はテムズ川に橋を掛け、既にあったコルチェスターやセント・アルバンズ、リンカーンなどのローマ人居住区間の行き来を可能にすることであった。この時の橋が1750年までテムズ川唯一の橋であり、現在のロンドン橋である。 しかしイングランド南部の比較的海に近いテムズ川は、川幅も深さも十分にあることから海からの船の乗り入れや、国内の物資の輸送に非常に便利であることがわかり、紀元50年頃に川の北岸に居留地を作り、ロンディニウム(Londinium)と名付ける。以後、商業地区として次第に発展してゆく。
地名学的位置づけ
現在、「ロンドン」の名はシティ・オブ・ロンドンに留まらず、より広範な地域を指して用いられており、もとの区域はしばしば単に「シティ」として知られるようになった。この用法は16世紀の記録にまで遡ることができる。その記録には、「シティ(“The City”)は通商と金融のコミュニティの象徴でもある」と記載されている。この前後には、シティが口語的にスクエア・マイルとして知られていたことも著述されている[7]。
市長
シティ・オブ・ロンドンの市長はロード・メイヤー(Lord Mayor)、ロンドン市長と呼ばれ、任期は1年であり毎年9月29日のミカエル祭に選挙が行われる。自治都市の伝統から、英国国王がシティー内に立ち入る際には市長の許可を必要とするほどの格式を誇るが、実際は名誉職にすぎない。2000年に再設置された大ロンドン庁首長(大ロンドン市長)もロンドン市長と呼ばれることがあるので、注意が必要である。シティの市庁舎はギルド・ホールと呼ばれる。
公共サービス
警察
シティはグレーター・ロンドンのその他の地域を管轄するロンドン警視庁とは別に、独自の警察組織であるロンドン市警察(City of London Police) を組織している。ロンドン市警察はスノーヒル、ウッドストリート、ビショップスゲートの3ヶ所に警察署を有し、813人の警察官と85人の特別巡査および48人の補助警察官が職務にあたっている。管轄区域はシティ・オブ・ロンドン全域のみで、イングランドとウェールズにある警察組織としては、管轄範囲と警察官の人員数の点で共に最も小さい。
イギリスの大多数の警察官は銀色のバッジを着用するが、市警察のバッジは市の紋章を基調とした黒と金の意匠が施されている。他にも、赤白のチェック柄のキャップバンドや巡査や巡査部長の制服の上着の袖に着ける赤白のストライプ状の職務用腕章など、イギリスの多くの警察では白黒の配色であるところを、市警察の色である赤白の配色で作られているものがある。市警察の巡査と巡査部長は徒歩によるパトロールの際、羽飾りのついたカストディアンヘルメットをかぶる。このヘルメットには、イングランドやウェールズの多くの警察用ヘルメットで使用されるブランズウィックスター[8]は付いていない。
シティは英国の金融センターに位置づけられ、英国経済の重要な部分を担っており、英国のGNPの2.5%に貢献している[9]。そのため、政治的な暴動あるいは犯罪の標的となりやすく、実際に1990年代初期にはIRA暫定派がシティ内に複数の爆弾を仕掛けて爆発させる事件が発生した。
また、シティはアルカイダによるテロ行為の標的になる可能性も指摘されている。例えば、2004年5月にBBCのニュース番組Panoramaにおいて、2001年の米同時多発テロに匹敵する規模のテロ攻撃に対するイギリスの警察や消防などの緊急時対応機関の準備体制を調査したところ、シティ東部のビショップスゲートで化学薬品による爆破事件が発生するとのシミュレート結果が出された。
リング・オブ・スチールはIRAによる爆撃などテロリストの脅威への対抗策として開発された特に有名な方法である。
消防
シティではセント・ポール大聖堂、オールド・ベイリー、マンションハウス、スミスフィールド・マーケット、ギルドホール、その他多くの高層建築を含む、あらゆる建物や場所で火災の危険性がある。しかし、シティ内にはダウゲートにロンドン消防庁の消防車が一台配備されているのみである[10]。そのため、シティは周辺の区にある消防署に依存して、火災発生の際は消火活動等の支援を受けている。統計によれば、シティ内で発生した火災に対応する一台目の消防車は平均で約5分以内に現場へ到着し、要請に応じて派遣される二台目は通報後約5分台後半で到着する。[10] 2006年度にシティで発生した火災案件は1,814件でロンドン32区の中では最小だった。2007年までの4年間は、シティで発生した火災による死者はゼロだった[10]。
名所
歴史的建造物
火災、爆撃、そして第二次世界大戦後のロンドンの再開発はシティにも影響を及ぼしたが、著名な歴史的建造物の多くはこれらの災禍から無傷あるいは軽微な損傷にて免れたため、他の都市に比べて再開発の規模は比較的小さかった。今日まで残存している建築は、以下の通り。
- ロンドン大火記念塔(モニュメント)(英語版)
- セントポール大聖堂
- ギルドホール(英語版)
- 旧王立取引所(英語版)
- ジョンソン博士の家(英語版)
- マンションハウス
- 多くの教会(英語版) - その多くはセント・ポールの設計でも知られるサー・クリストファー・レンの作
また、以下はテンプル地区(英語版)への激しい爆撃に耐えた著名な建築である。ただし、これらは大規模な改修を受けている。
- 2キングズ・ベンチ・ウォーク(英語版)
- ヘンリー王太子の部屋(英語版)
その他の名所
- その他の著名な現代的高層建築や歴史的名所の数々を以下に示す。超高層建築物については次のセクション参照。
- ロンドン塔:ロンドン塔の位置は正確にはシティ内ではないが、シティの南東部に多くの観光客を呼び込む名所の一つとなっている。
- イングランド銀行
- オールド・ベイリー(英語版)
- スミスフィールド・マーケット
- ロイズの高層ビル群
- バービカン・エステート(英語版)
- 教会・大聖堂
- シティ・オブ・ロンドン・スクール(英語版)
- シティ・オブ・ロンドン女子学校(英語版)
- 法曹院(シティ内にあるがLibertyと呼ばれる独立した自治体の地位を有する)
- ロンドン・ストーン(英語版)
- ロンドン城壁(英語版)
- ロンドン博物館(英語版)
- ロンドン橋
- ニューゲート監獄
- ロンドン波止場
- セント・バーソロミュー病院(英語版)
- テンプル・バー(英語版)
- テンプル・オブ・ミトラス(英語版)
- テンプル教会
超高層建築物
多くの高層建築物や超高層建築物がシティ内に存在し、主に金融ビジネス部門に利用されている。これらのほとんど全てはシティの中でも金融の中心である、スクエア・マイルの東側に集中している。それに比べてシティの北部にはバービカン・エステートの3つの居住用タワーと商業用のシティポイント・タワーが立つ小規模なビル群があるのみである。
現在シティ以内に立地している高さ100m以上の建築物は以下の通り。 テンプレート:-
順位 | 名称 | 竣工 | 用途 | 高さ | 階数 | 住所 | |
メートル | フィート | ||||||
1 | ヘロンタワー | 2010年 | オフィス | 202 | 753 | 46 | 110 ビショップスゲート |
2 | タワー42 | 1980年 | オフィス | 183 | 600 | 47 | オールド・ブロード・ストリート25番地 |
3 | 30セント・メリー・アクス("ガーキン") | 2003年 | オフィス | 180 | 590 | 40 | セント・メリー・アクス30番地 |
4 | ブロードゲート・タワー | 2008年 | オフィス | 164 | 538 | 35 | ビショップスゲート201番地 |
5 | シティポイント | 1967年 | オフィス | 127 | 417 | 36 | ロープメーカー・ストリート |
6 | ウィリス・ビルディング | 2007年 | オフィス | 125 | 410 | 26 | ライム・ストリート51番地 |
=7 | クロムウェル・タワー | 1973年 | 居住用 | 123 | 404 | 42 | バービカン・エステート |
=7 | ローダーデール・タワー | 1974年 | 居住用 | 123 | 404 | 42 | バービカン・エステート |
=7 | シェークスピア・タワー | 1976年 | 居住用 | 123 | 404 | 42 | バービカン・エステート |
10 | セント・ヘレンズ ("アビバ・タワー") | 1969年 | オフィス | 118 | 387 | 28 | セント・メアリー・アクス、アンダーシャフト |
11 | セントポール大聖堂 | 1710年 | 教会 | 111 | 365 | n/a | ルドゲート・ヒル |
12 | 99ビショップスゲート | 1976年 | オフィス | 104 | 340 | 26 | ビショップスゲート99番地 |
13 | ストック・エクスチェンジ・タワー | 1970年 (2009年に再建) | オフィス | 100 | 328 | 27 | オールド・ブロード・ストリート125番地 |
建設中
シティ内で100mを超える建築物または構築物のうち建設中あるいは建設が予定されているものを以下に挙げる。
名称 | 高さ | 階数 | 住所 | 用途 | 状況 | |
メートル | フィート | |||||
ザ・ピナクル ("ヘルター・スケルター") | 288 | 945 | 63 | ビショップスゲート22-24番地 | オフィス | 建設中 |
ザ・リーデンホール・ビルディング ("チーズグレイター") | 225 | 737 | 48 | リーデンホール・ストリート122番地 | オフィス | 建設中[11] |
100ビショップスゲート | 172 | 564 | 40 | ビショップスゲート100番地 | オフィス | 建設地検討中[12] |
20フェンチャーチ・ストリート ("ウォーキー・トーキー") | 160 | 525 | 39 | フェンチャーチ・ストリート20番地 | オフィス | 建設中 |
ヘロン・プラザ | 135 | 443 | 44 | ビショップスゲート128-140番地 | ホテル/居住用 | 建設地検討中[13] |
"ザ・ヘロン"[14] | 112 | 367 | 35 | バービカン、ミルトン・コート | 居住用 | 建設中 |
年表
シティ・オブ・ロンドン内で最も高い建築物の年表を以下に示す[15]。
名称 |
最高の高さを誇った期間 |
高さ(メートル) |
高さ(フィート) |
階数 |
---|---|---|---|---|
ザ・ピナクル | 建設中 | 288 | 945 | 63 |
ヘロンタワー | 2010- | 202 | 663 | 46 |
タワー42 | 1980–2010 | 183 | 600 | 47 |
シティポイント | 1967–1980 | 122 | 400 | 35 |
セント・ポール大聖堂 | 1710–1962 | 111 | 365 | n/a |
セント・メアリー・ラ・ボウ教会 | 1683–1710 | 72 | 236 | n/a |
ロンドン大火記念塔 | 1677–1683 | 62 | 202 | n/a |
サザーク大聖堂 | 1666-1677 | 50 | 163 | n/a |
旧セントポール大聖堂 | 1310-1666 | 150 | 493 | n/a |
ホワイトタワー | 1098-1310 | 27 | 90 | n/a |
通り・広場など
- アルダスゲート
- アルドゲート
- ビショップスサイド
- チープサイド
- クリップルゲート
- フリート・ストリート
- グレイスチャーチ・ストリート
- ホルボーン
- ラドゲイト
- ムーアゲート
- ニューゲート
- スレッドニードル・ストリート
脚注
参考文献
- 地理用語研究会 編『地理用語集』山川出版社、2004年3月30日、337pp. ISBN 4-634-05790-5
外部リンク
- 公式サイト
- Corporation of London, シティの行政機関
- Museum of London
- Visit the City, シティの観光案内
- 地図
- Ward boundaries map, Corporation of London
- Street map
テンプレート:London テンプレート:イングランドのカウンティ テンプレート:証券取引所
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ 地理用語研究会 編(2004):157ページ
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ 一つの使用例として、ロンドン警視庁の旗が挙げられる。
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 10.0 10.1 10.2 テンプレート:Cite web
- ↑ British Land The Leadenhall Building, London
- ↑ Leytonstonia Great Portland Estates aims for 100 Bishopsgate construction start in 2011
- ↑ Skyscrapernews.com City of London Approves Heron Plaza
- ↑ Skyscrapernews.com Milton Court
- ↑ ホワイトタワーとサザーク大聖堂は厳密にはシティの公式な境界の外にある。また、ピナクルは現在建設中である。