サティアン
サティアン(Satyam)とは、オウム真理教の宗教施設の名称である。本来はサンスクリット語で「真理」の意。
概要
オウム真理教の教団拠点があった「富士ケ嶺」(旧上九一色村)を中心として点在していた。旧上九一色村だけでなく鳴沢村や静岡県富士宮市などにも存在した。
富士ケ嶺周辺は最盛期ではサティアンやその他倉庫群、プレハブなどが30棟以上点在しており、事実上の拠点であった。[1] 麻原の逮捕以降、1996年までにサリンプラントがあった第7サティアンを除く全てのサティアンが閉鎖され、取り壊された。また第7サティアンは化学兵器禁止機関の査察対象となったため、1998年12月まで残っていた[2]。「サティアン」の名前はのちに、オウム真理教の経営する店(サティアンショップ)に用いられた。逮捕されるまで、麻原本人は第6サティアンの隠し部屋で生活していた。
『跡地には富士ガリバー王国がオープンした』と一般には言われるが、実際はサティアン(第6サティアン)から約3km程離れている。[1]しかし1997年にオープンしたこのテーマパークにより、教団撤退後の富士ケ嶺地区のイメージアップが期待されていたとされる。 現在では「第1上九」(第2・第3・第5サティアンがあった一帯を指す)には公園(「富士ヶ嶺公園」)が整備されており、小さな慰霊碑が建っている。[1]
サティアン建築の特徴
通常、宗教団体の施設は既存建物の流用でない限り、それなりの装飾がなされ、気品と風格を兼ね備えていることが多い。しかし、サティアンはそういった装飾を排し、外見上工場としか思えない無機質かつ質素な建築様式であることが大きな特徴である。
また、教団は「毒ガス攻撃を受けている」と主張しており、外界の空気を遮断するためできるだけ窓を小さくしたり、コスモクリーナーに接続しているパイプを縦横に張り巡らすなど、殺風景な雰囲気をかもし出していた。オウム真理教の子供達は、保護された際、屋外で飛行機の音を聞くと毒ガス攻撃を受けているものとして屋内に逃げ込む者たちが大勢いた。
サティアン内部のトイレは、掃除されていないのか、非常に不衛生で、異様に汚く、和式便器からはみ出した大便の映像がテレビで放送された。
サティアン内部には居住施設があるものの、教団は子供達にはほぼノータッチで、サティアンで遊ぶ子供が大勢いたが、「毒ガス攻撃を受けている」と主張されてからは、子供たちは屋内で遊ぶ事が多かった(その間、親は修行をする)。尚、この居住施設は、大人用と子供用に分けられることが多い。
サティアン一覧
- 第1サティアン - 静岡県富士宮市に所在。教団の「富士山総本部道場」に隣接。
- 第2サティアン - 第一上九に所在。当初は麻原一家の住居で、後に教団「法皇官房」が置かれ、麻原の愛人(ダーキニー)が住むようになった。
- 第3サティアン - 第一上九に所在。作業場や物置として使用していた。
- 第4サティアン - 富士宮市の「富士山総本部道場」に隣接。教団「郵政省」と「MAT(マンガ・アニメ・チーム)」が置かれ、教団のビデオやアニメを製作していた。
- 第5サティアン - 第一上九に所在。教団の印刷工場で、教団の印刷物を印刷していた。教団「法務省」も置かれていた。
- 第6サティアン - 第二上九に所在。一階部分が麻原一家の住居。逮捕当時、麻原彰晃が隠し部屋に隠れていた場所で有名。
- 第7サティアン - 第三上九に所在。いわゆるサリンプラントで、細菌兵器を製造していたが、サリン製造は強制捜査のため果たせなかった。なお両サリン事件に使われたサリンは第10サティアンのジーヴァカ棟(CMI棟)で作られた物[3]。鉄骨3階建 1,294㎡[4]。
- 第8サティアン - 第四上九に所在。マハーポーシャのパソコン組立工場。
- 第9サティアン - 第五上九に所在。自動小銃密造工場。
- 第10サティアン - 第六上九に所在。出家信者の子弟の生活の場。ここのジーヴァカ棟には予備のサリンプラントが存在し、上記の通りここで作られたサリンが実際に事件に使用された。
- 第11サティアン - 第五上九に所在。自動小銃密造工場。
- 第12サティアン - 第四上九に所在。自動小銃密造工場。
その他の建物
- ヴィクトリー棟 - 第6サティアンに近接。警備担当のサマナが24時間詰めて監視していた。
- クシティガルバ棟(土谷棟) - 第7サティアンに近接。軽量鉄骨1階建 171㎡[4]。
- ジーヴァカ棟(CMI棟) - 第10サティアンに隣接。軽量鉄骨1階建 297㎡[4]。
- 第七上九倉庫群
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1995年3月現在
参考文献
- 江川紹子『オウム真理教裁判傍聴記2』(文芸春秋 1997年)