射影演算子

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2013年1月6日 (日) 20:04時点におけるNOBU (トーク)による版 (デフォルトソート、カテゴリ、スタブ)
(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)
移動先: 案内検索

射影演算子(しゃえいえんざんし)とは,ベクトルを,そのベクトルのある部分空間への射影に対応させる演算子である.

定義

<math>\mathcal{H}_1</math>をヒルベルト空間<math>\mathcal{H}</math>の閉部分空間とすると,<math>\mathcal{H}</math>の中の任意のベクトル<math>\psi</math>は <math>\mathcal{H}_1</math>のあるベクトル<math>\psi_1</math>と<math>\psi_1</math>に直行する<math>\psi_2</math>との和<math>\psi_1+\psi_2</math>の形に一般的に分解できる.この<math>\psi_1</math>を,<math>\psi</math>の部分空間<math>\mathcal{H}_1</math>への射影という.<math>\mathcal{H}_1</math>をひとつ定めた時に,<math>\mathcal{H}</math>をそれの<math>\mathcal{H}_1</math>への射影である<math>\psi_1</math>に対応させる演算子<math>P</math>を<math>\mathcal{H}_1</math>への射影演算子という.

性質

射影演算子<math>P</math>は次のような性質を持っている.

  1. 線形
  2. 有界
  3. <math>P^2=P</math>
  4. 自己共役

逆にこの4つの性質を持つ演算子は,適当な閉部分空間への射影演算子になっている.その意見では閉部分空間の全体と,射影演算子の体とは同じものと考えることができる.

物理への応用

量子力学では,ある条件を満たす状態の全体は状態空間の部分空間と考えることができるので,量子力学的な命題と部分空間,すなわち射影演算子とを対応させることができる(量子論理).

物理への別の応用例としては,統計力学における運動の粗視化を射影演算子を使って定式化する方法(射影演算子の方法)がある.テンプレート:Math-stub