ナローバンド
ナローバンド (Narrow band)とは狭帯域通信の事である。
無線通信におけるナローバンド
無線通信におけるナローバンドは、周波数帯域が狭い無線電信・電話である(対義語:ワイドバンド)。ナローバンドとワイドバンドの線引きは無く、相対的な比較や時代によって変遷していく。かつて、無線通信のFMが50kHzステップだった時代、25kHzステップのFMはナローFMと呼ばれたが、その後、12.5kHzの超ナローFMが登場すると、次第に25kHzステップのFMはワイドFMと呼ばれるようになり、12.5kHzステップのFMは単にナローFMと呼ばれるようになった。ワイドからナローへの切替をナロー化と言う。ナロー化の移行期間において、ナロー化システムとワイドシステムの共存をはかるために、送信のみナローで受信はワイドと言う無線機で運用されることがあり、擬似ナローと呼ばれる。なお、かつて存在したアナログ携帯電話(大容量方式)のチャネルステップは6.25kHzであったが、これは12.5kHz仕様のままでチャネルステップのみ6.25kHzとしたものであり、この場合はナローとは呼ばずインタリーブと呼ぶ。2002年頃から、12.5kHzの次のナロー化である6.25kHzがデジタル方式(ARIB STD-T61)により進められている。航空無線(AM)においては、欧州を中心に25kHzから8.33kHz(25kHzを3等分)へのナロー化が進められている。
有線通信におけるナローバンド
有線通信におけるナローバンドは、通信速度の遅いデータ通信で、通信速度に対する下限・上限の明確な線引きがなされていないが、目安として64kbps以下~256kbps以下の低速な回線を指すことが多い(ADSLの場合はおおむね1.5Mbpsを下限とすることが多い)。インターネット接続のためのものを指すことも多い(対義語:ブロードバンドインターネット接続)。ISDNの場合は狭帯域ISDN (N-ISDN) の事を指し、一次群速度インターフェース (PRI: Primary Rate Interface) な1.544Mbps (T1) 及び2.048Mbps (E1) 以下の遅い通信速度の回線を指す(対義語:広帯域ISDN (B-ISDN) )。
特徴
周波数帯域が広いものや、通信速度の速いものと比較して次の特徴がある。
- ナローバンドだけなら国内のほぼ全域(=ほぼ全ての市・町・村)に提供されている。
- 同じ伝送路で多重化できる回線数が多い。
- 有線通信の場合、放射雑音が少なく、外部からのノイズにも強い。
- 同じ伝送距離を確保するためのエネルギーが少ない。
- 低位規格の伝送路の使用が可能である。
- 回路規模を小さくすることが可能である。
将来性
ブロードバンド接続サービスや高速な移動体通信の普及を背景として、特殊な用途に使用されているものを除き、廃止及びサービスの縮小が検討されている。
例えば、NTTはPSTN(加入電話回線網)の廃止時期を2025年としている[1]。ISDNについては全廃が決定している。加入電話回線についてはFTTHを提供することが、経済的合理性から適切ではない町・村や離島などの地域に例外的に維持されるのみとされている。メタル回線の廃止については、加入電話、公衆電話、緊急通報 の電話サービスをユニバーサルサービスとして、電気通信事業法の第7条により「公平かつ安定的な提供に努めなければならない」と規定されているサービスであることが問題となっていたが、平成23年4月より、加入電話に相当する光IP電話が新たにユニバーサルサービスの対象となり、メタル回線の廃止を阻む問題ではなくなった。
実際、携帯電話などの高速な移動体通信の契約数(MVNO含む)は1億3,276万を超える一方で、かつては6000万件以上あったNTTの加入電話とISDNの契約数合計(フレッツ光のひかり電話は含まれない)は2011年度末で3168万件[2][3]と激減していることがある。ブロードバンドサービスの契約数は3,952.8万件[4]であるので、もはや、ブロードバンド接続は、NTTの加入電話よりも一般的なものとなっているといえる。
脚注
- ↑ PSTNのマイグレーションに関する概括的展望について
- ↑ 平成23年度電気通信役務契約等状況報告について(NTT東日本)
- ↑ 平成23年度電気通信役務契約等状況報告について(NTT西日本)
- ↑ 電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(平成23年度第4四半期(3月末))|総務省