線引小切手
線引小切手(せんびきこぎって;A crossed check)とは、小切手用紙の表面に2本の平行線を引いたものをいう。別名「横線小切手」(おうせんこぎって)。小切手法(昭和8年法律第57号)第37条および第38条を参照。
線引小切手には、「一般線引小切手」(いっぱんせんびきこぎって)と「特定線引小切手」(とくていせんびきこぎって)の2種類がある。
一般線引小切手
一般線引小切手(A check crossed generally)とは、表面に2本の平行線が引かれ、線内に何らの指定もされず、または線内に「銀行」もしくはこれと同一の意義(「Bank」など)を有する文字が記載された小切手をいう。このような小切手の呈示を受けた銀行等は、他の銀行または自己の取引先(注:日常の取引を通じて、銀行等にその素性が知れている者をいう。以下同じ。)にのみ小切手金を支払うことができる。
- 本項において「銀行等」とは、銀行と、「小切手法ノ適用ニ付銀行ト同視スベキ人又ハ施設ヲ定ムルノ件」(昭和8年勅令第329号)により指定を受けた金融機関の総称である。詳しくは「小切手法」の項を参照。
- 「B a n k 」「銀行渡り」などの文字の入った線引を押印できる印判も市販されている。
特定線引小切手
特定線引小切手(A check crossed specially)とは、2本の平行線内に特定の銀行等(および店舗等)の名称を記載した小切手をいう。この小切手を呈示された銀行等は、その指定された銀行等にのみ、または被指定銀行等が支払人と同一の場合は自己の取引先にのみ小切手金を支払うことができる。
線引の趣旨と効果
- そもそも手形と違い、小切手は振出後直ちに支払呈示できる「一覧払」(いちらんばらい)の単なる支払証券であり、多くは、持参人を正当な債権者とみなす簡易な「持参人払」によることが予め想定されている。
- 普通、小切手用紙には「持参人に」の文言が予め印刷されている。
- このほか名宛(裏書)の連続により譲渡する方式でも振出せる(記名式小切手)。この場合は「持参人に」の文言を抹消するが、一旦持参人払で振出された小切手を振出人以外の者が記名式に変えることはできない。
- しかし、それにより詐取や盗取、なりすましなどによる不正な所持人にも小切手金が支払われる危険性が高まる。そこで、支払先を銀行等の取引先(の預貯金口座)に限定し、素性の不明朗な者による呈示を抑止し、併せて小切手金の支払い先を捕捉できるようにするのが線引の趣旨である。
- 特定線引においてはさらに、支払い先の取引銀行等のほかその支店等まで限定する事ができ、抑止効果がより高まる。
- 小切手帳の交付を受けた者は、予めすべての小切手葉に線引をしておくことが推奨されている。なお、線引小切手の小切手金が(取立を行う)銀行等または取引先以外の者に支払われた場合は、支払人である銀行等は、当該小切手の券面額までの損害賠償責任を負う。
- 特定線引小切手については、指定をした銀行等およびその取立を代行する銀行等以外の者(指定をした銀行等または支店等が支払人と同一である場合は、その取引先以外の者)に支払われた場合に同様となる。
- 一度した線引は誰にも抹消する事はできない(抹消しても線引小切手として扱われることになる)[1]。
裏印の慣行
なお、一般線引小切手を途中で特定線引小切手に変更することは可能であるが、特定線引小切手を一般線引小切手に変更したり、または被指定銀行もしくは線引そのものを抹消したりすることはできず、法律上それらの記載は行われなかったものとみなされる。これに対し全国銀行協会が作成した「当座勘定規定(ひな型)」第18条によると、線引小切手の裏面に届出印(裏印)または届出の署名がある場合には、銀行側は実務上、その小切手を線引小切手として取り扱わないものとしている。これは先述した全小切手葉への線引推奨の効果が、小口現金確保のための自己の当座預金の引出などの簡便な利用をも必要以上に妨げることを避けるために設けられ、判例上も、同じく先述した線引小切手の不適法な支払いへの求償権を放棄する当事者間の特約として認容されている。
脚注
テンプレート:Reflist- ↑ 『手形・小切手のすべてがわかる本。』(総合法令刊)p.142~p.145