陰関数
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陰関数(いんかんすう、implicit function)とは、特定の関係式に縛られる複数の変数の間に成り立つ関係を関数と見たもののことである。陰伏関数(いんふくかんすう)とも。
定義
n + k 個の変数を持ついくつかの関係式
- <math>F_m(x_1, x_2,\ldots,x_n, x_{n+1},x_{n+2},\ldots, x_{n+k})=0</math>
が与えられているとき、適当な領域 D 上で定義される k 個の n 変数関数
- <math>x_{n+i}=f_i(x_1,x_2, \ldots, x_n) \quad(i=1,2,\ldots,k)</math>
が存在して、
- <math>F_m(x_1, \ldots, x_n, f_1, f_2, \ldots, f_k)=0</math>
が満たされるならば、xn+i (i = 1, 2, ..., k) は関係式の組 (Fm) によって D に(局所的に)定められる x1, x2, ..., xn の陰関数であるという。また、陽に表された関数の組 (fi) は (Fm) によって陰に(あるいは陰伏的に)定義されるという。このような陽関数の組は(その定義域もふくめて)与えられた関係式の組に対して必ずしも一意には定まらない。複数の陽関数の組が陰に定義されるとき、個々の組を陰関数 xn+i (i = 1, 2, ..., k) の枝という。
陰関数定理
いつ陰関数から一意的な陽表示が定まるかという問いに答えるのが陰関数定理である。可微分構造を付加した実多様体上の点の近傍で、陰関数が一意に定まる条件は以下のようになる。
Rn+k のある領域で定義された k 個の連続的微分可能な関数
- <math>F_i(x_1, \ldots , x_{n+k})\quad (i=1,2,\ldots, k)</math>
に対し、領域内の点 p = (p1, p2, ..., pn+k) で関係式
- <math>F_i(p_1, \ldots , p_{n+k})=0\quad (i=1,2,\ldots, k)</math>
が満たされるとする。このときさらに、必要ならば適当に番号を付け替えて
- <math>\left.
\frac{\partial(F_1,F_2,\ldots,F_k)}{\partial(x_{n+1},x_{n+2},\ldots,x_{n+k})}
\right|_{\mathbf{p}}\neq 0</math> (左辺は関数行列式の p における値)とできるならば、p の適当な近傍で定義される k 個の n 変数関数
- <math>f_i(x_1,\ldots,x_n) \quad(i=1,2,\ldots,k)</math>
であって、条件
- <math>F_i(x_1, x_2,\ldots,x_n,f_1,f_2,\ldots,f_k)\quad(i=1,2,\ldots,k)</math>
- <math>p_{n+i}=f_i(p_1,p_2,\ldots,p_n)\quad(i=1,2,\ldots,k)</math>
を満たすものが一意的に存在する。